第26話

2035/11/25(日)  午後三時半 邸宅・テラス 長良ながらアイ香織かおり折神おりがみ加藤かとう・ウィル・ラウ


 声は確かに虎鶫とらつぐみに似ている。


 頭は猿、手足はとら、体はたぬき、尾は蛇だった。


 しかもかなり大きい、体長四メートルはあるだろう。


 加藤さんが懐からモーゼルC96を抜き切った、弾は九ミリで銀だろう。


 ラウさんも懐からM11A2を抜いて、弾倉を挿しこんでロードした“カシャッ”と音がする。


 折紙も懐からM29を抜いて斜め前に進んだ。


 ウィルは銀色に輝くコンバットナイフを抜いて、前進している。


 俺は藍をかばいつつ、フダを持ったまま「霊視」と唱える。


 ずっと見鬼をしていられないから、それの対策だ。




2035/11/25(日)  午後三時半 邸宅・テラス 藍・長良・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 頭は猿で手足はとら、体はたぬきか犬か、尾は蛇に見える。


 しかもかなり大きい、昨日乗せてもらったパジェロロングよりも一回り大きいのではないだろうか?


 加藤さんが懐から古い型の銃を抜いている。


 ラウさんも懐から四角い銃を抜いて、細長いチョコバーみたいなのを挿しこんで銃の頭を触った時に“カシャッ”と音がした。


 折紙さんも懐から銀色のリボルバーを抜いて少し斜めに進んでいった。


 ウィルさんは銀色に輝く大きいナイフを背中から抜いて、前進していった。


 香織さんは長い剣をいつの間にか構えて、ウィルさんより早く飛び出していった。


 長良さんは私をかばってくれているようで私とその化け物の間に居る、そして「れいし」と唱えた。




2035/11/25(日)  午後三時三十一分 邸宅・テラス 長良・藍・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


「メイドは下がって支援に回ってくれ」と俺はいって先陣を切った、大技である「八雷招来ハチライショウライ!」といって俺は雷撃を放ち仕掛けた。


 雷獣に雷撃とは思うかもしれないが間違ってはいないのだ、抵抗できる量なら抵抗されるだろうが、抵抗できない量を流せばよいのだ。


 術者のつまり俺の力が試されるというわけだ。


 今回は俺の勝ちのようだ、ぬえが、ビクンと身じろぎした。


 その瞬間を狙って、加藤さんが撃ち始めた、鵺の額に容赦のない三連射を見舞った、音は軽めだが威力は出ている。


 折紙も撃ち始めた、一発づつだが着実に弱らせていく、重い音が響く。


 ラウが左側、折神の反対側に展開して行く。


 俺は「結界!」と唱えフダを一枚使った、藍を中心とした半径五メートルほどの範囲に結界が出来上がった。




2035/11/25(日)  午後三時三十一分 邸宅・テラス 藍・長良・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


「メイドは下がって支援に回ってくれ」と長良さんはいうと雷をまとった「ハチライショウライ!」と叫び両手を前に出しながら雷撃を放った。


 獣が、ビクンと跳ね地面に落ちた。


 加藤さんが撃ち始めた、獣に三連射したようだった、“タ・タ・ターン”と音がした。


 折紙さんが構えて撃ち始めた、“ズドン”と低音が響く。


 ラウさんが、折神さんの反対側に移動していく。


 香織さんはその素早さで、倒れた獣の額に剣を突き刺した。


 長良さんは「ケッカイ!」と唱えた、私を中心にドーム状の何か外の見える壁が出来上がる。



2035/11/25(日)  午後三時三十一分十秒 邸宅・テラス 長良・藍・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 鵺が起き上がりながら吠える体勢に入った、「避けろ!」と俺は叫んでいた。


 次の瞬間鵺が“ヒョーヒョーヒョー”と三回鳴いた。


 皆の上に雷が降り注ぐ、俺と加藤さんと藍のうえには結界があり、それで雷が弾かれたのが確認できた。


 折紙、ラウ、ウィルは進行方向に飛び込み前転し雷そのものを回避していた。


 香織は剣で雷を弾いた、多分対抗術式だろう、相変わらず詠唱が速い。




2035/11/25(日)  午後三時三十一分十秒 邸宅・テラス 藍・長良・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 獣は起き上がりながら首をもたげた、その瞬間長良さんが「避けろ!」と叫んだ。


 次の瞬間獣が“ヒョーヒョーヒョー”と三回鳴いた。


“ドーン”と音がして雷が降り注ぐ、私は目をつぶって座り込んでしまった。


 雷は落ちて来ない……。

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