第25話

2035/11/25(日)  午後二時四十分 邸宅・車庫 長良ながら折神おりがみ加藤かとう・ウィル・ラウ


 俺を中心に男性陣が集まる、皆が荷物を持っているのを確認すると客室まで案内を開始した。


「折神とウィルとラウは初めてだったよな、加藤さんは三度目ですね」と案内しながら俺はいった。


「確かに三度目だな、ココは相変わらず強面こわもてが沢山いて頼もしいな」と加藤さんがいった。


 折神が聞いた「強面ですか? 綺麗な方が多くてうらやましいですね」といった、流石にまだ見抜けてないかと俺は思った。


 ウィルが「ただものではないのは分かりますが、強面ですか……」とつぶやく。


 ラウが「強面っていうより歴戦の、って感じがするぜ」といった、正鵠せいこくを射るというに相応ふさわしかった。




2035/11/25(日)  午後二時四十一分 邸宅・客室前 アイ香織かおり


 私は部屋を出てロビーでくつろぐことにした、お茶の時間が近いのだ、午後三時からとなっていたためだ。


 同じことを香織さんも考えたらしく、ジャケットとスパッツを脱いだ香織さんが出て来ていた。


「お茶の時間ね、もう直ぐしたら」と香織さんがいった、そして続ける「ここは安全な場所だけど、最小限の注意は払わないとダメよ」というのだ。


「最小限ですか?」と聞くことにした。


「ここの人員はみんな歴戦の経歴を持っているし、強いけどあくまでも人に対しての強さだから、それ以外の強さは私たちのほうが上なの」と答えたのだ。


「ヤクザやヘイロンの構成員からの襲撃には強いけど、それ以外の何かに対してはそれなりなの、それなりでも検非違使の一般局員くらい強いけどね」と続けたのだ。




2035/11/25(日)  午後二時四十三分 邸宅・客室前 藍・長良・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 そうやって香織さんとロビーで話していると、男性陣が客室に到着してそれぞれの部屋に案内していった、加藤さんがD号室で折神さんがE号室でウィルさんがF号室、ラウさんがG号室だった。


 そして直ぐに長良さんと加藤さんが出て来た。


「今日はなんのお菓子?」と香織さんが聞いた、すると長良さんが「聞いて無いが、美味いものしか出て来ないぞ」と答えた。


「必ず三人で協議して決めるから、美味いものしか出て来ないんだよな」と加藤さんがいった。


「三人というのは?」と私が聞いた、すると「コック長とメイド長と家令の三人さ」と長良さんが答えた。


 話していると、折神さんも、ウィルさんもラウさんも出てきて会話に交じった。


「一応、擬体食も手配してもらっているが、それでいいかウィル」と長良さんが聞いた。


 ウィルさんが目を輝かせながら答えた「いいんですか? 本当に?」と聞いていた。


 擬体食のしっかりとした味のあるものは高いらしい、高級品になるんだそうな。


 ここの邸宅で揃わないのは宗教関係者だけらしい、元軍医のお医者様も看護士さんも、常駐しているらしい。




2035/11/25(日)  午後三時 邸宅・テラス 長良・藍・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 菓子が準備され、お茶の用意ができたとメイドが呼びに来たので、テラスまで皆を案内してもらった。


 今日のお菓子は高級な和三盆を贅沢ぜいたくに使った抹茶のロールケーキであった。


 お茶は最高級のマリアージュ・フレールのブラックティーが出された。


 皆よく食べて、お菓子もほぼ終わりに近づいた時だった。


 前庭の中央で高さ十メートルくらいに黒雲が現れた! 明らかに異なるものである。


 今は日が照っているのだ、だが黒雲が庭全体を覆って雷がゴロゴロと鳴り始めた。


 俺は懐からフダを取り出して、そして半眼はんがんにして「見鬼!」と唱えた。


 異物が見えた、化け物である、よく見定めるとぬえの様だった。


 藍にも、何か見えているらしかった。


 そいつは“ヒョーヒョー”と鳴いている。




2035/11/25(日)  午後三時 邸宅・テラス 藍・長良・香織・折神・加藤・ウィル・ラウ


 お茶の用意ができたとメイドさんが呼びに来て、テラスまで案内してもらった。


 お菓子は高級な和三盆を贅沢ぜいたくに使ったという抹茶のロールケーキであった。


 お茶は最高級マリアージュ・フレールのブラックティーが出されていた。


 ロールケーキを三センチほどの厚みに切ってもらい、二切ずつお皿に盛ってもらう。


 とても美味しそうだ、まずは一口、クリームのしっとりと上品な甘みと抹茶の渋みが合わさって綺麗に舌の上で溶けた。


 みんなも美味しそうだ、まだお代わりはあるということなので、大胆に切って食べて行く。


 あっという間に、三切れ食べてしまった。


 甘いものは別腹というが、正にそんな感じで四切れ目を追加してもらって、半分程食べた時だった。


 テラスの前の庭中央で高さ十メートルくらいのところに黒雲が現れた。


 とても異質な感じがした。


 今は日がまだ照っている、だが黒雲が空全体を覆い尽くし雷がゴロゴロと鳴り始めた。


 長良さんがおフダを取り出して「ケンキ!」と唱えた。


 私はその黒雲からして、すでに怪しくて怖かった。


 黒雲の中に獣が居た、それは“ヒョーヒョー”と鳴いた。

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