第17話

2035/11/24(土)  午前二十時 セーフハウス・リビング 長良ながら折神おりがみ加藤かとう・ラウ・ウィル


 香織が藍を連れて洗濯物を取りこんで仕舞いに行っている間だった。


 ウィルが話し出した「封鎖区画を絞り込んだところEF1659Bが怪しいですね、そこを捜査してみてはいかがでしょう」と加藤さんにいった。


「俺もそこらがくさいと踏んだ」とラウが同調した。


「捜査専従班だけでは荷が重いな、二班に招集をかけるか」と加藤さんがいった。


「警察で囲みましょうか?」と折神がいった。


 俺は小声で「戻って来たぞ」と告げた。




2035/11/24(土)  午前二十時 長良さんの隠れ家・客室前 アイ香織かおり


「香織さんは怖くは無いんですか?」と洗濯物を回収して鞄に仕舞い込んで、客室から出て来た私が、香織さんに聞いた。


「私はね、慣れちゃったから。慣れって怖いものよ?」と香織さんはいったのだ。


 この手の修羅場には、慣れていると……。


「だから言わなきゃならないんだけど、慣れちゃだめよ。この感覚に」と香織さんはいうのだ。


「私は怖いです。ヘイロンなんてわけの分からないものに狙われて……どうしていいか分かりません。今は皆さんを信じるしか」と私はいった。


「それが正常だから、大丈夫よみんな強いから。きっと守り切ってくれる、私も可能な限り手伝うから頑張ろう」と香織さんはいった。


「さ、戻ろう」と香織さんにいわれて一緒に戻るのだった。




2035/11/24(土)  午前二十時三分 長良さんの隠れ家・リビング 藍・長良・折神・香織・加藤・ラウ・ウィル


 戻ってきたらみんな思い思いにくつろいでいた。


 加藤さんたちは十二チャンネルのニュースを見ている。


 長良さんはおフダを出して集中している。


「周辺にエネミー無し」と長良さんはいった。




2035/11/24(土)  午前二十一時 長良さんの隠れ家・リビング 藍・長良・香織・加藤・ラウ・ウィル


 男性陣がお風呂に入り始めた、とはいってもシャワーだけで済ますようだった。


 簡易に手早く、ということらしい。


 ガードに抜けが出てもいけないから、ということらしい。




2035/11/24(土)  午前二十一時 セーフハウス・リビング 香織・藍・長良・加藤・ラウ・ウィル


 長良さんの胆力は相変わらずだ、十八時二分頃に呼び出した式神を、全周監視の態勢に持っていき、それを維持している。


 これでいて普段術を使わないのだから、勿体なさすぎると思った。


 だが今の私は普通と少し違う程度の、女子中高生を演じている。


 心苦しいいいわけをするくらいなら、しらを切りとおしたほうがいい。


 今回もフル装備だが、今は装備を外している。


 多分仕掛けてくるとしたら、深夜寝静まってからだろうと思われた。


 それくらいの時間に、私が仕掛ける方ならする。


 丑三つ時かそれより手前に、仕掛けて来るだろうと思われた。


 この家は三方を崖に囲まれている、南側だけ道路に面しているのだ。


 攻めるなら南側から仕掛けるしか手はない、普通の人間には。




2035/11/24(土)  午前二十二時 長良さんの隠れ家・リビング 藍・香織・長良・折神


 男性陣がお風呂を入り終え、再び警戒に入った。


 加藤さんとラウさんとウィルさんは深夜から明方に備え一旦先に寝に入ったのだった。


 いつ来るかもわからない相手だからこそ、休息を取っておくのは大事だということなのである。


 それは私でも分かる、不眠不休にはできないのだ、人間だから。


 そして私と香織さんは二十三時には寝るということが決まったのである。


 無理してもいけないし、何が起こるか分からない、ということである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る