第16話

2035/11/24(土)  午前十八時五十七分 長良さんの隠れ家・ダイニング アイ長良ながら折神おりがみ香織かおり加藤かとう・ラウ・ウィル


 長良さんは注文通りステーキを作ってくれていた付け合わせも完璧だ、オマール海老の半割をボイルしたものにソースが乗っている。


 それにブロッコリーとバターコーンである、他にはライスとミネストローネスープも付いている。


 これだけ作れるのか長良さんは、レパートリーが多いのかなと思わせるくらいの出来である。


 加藤さんがいった「長良は検非違使やめても料理屋のコックができるな」といって笑顔で「冗談だが……相変わらず美味いよな」といった。


「確かに中華一辺倒の俺とは違うな」とラウさんがいった、ラウさんは中華料理が得意らしい。


 折神さんは難しい顔をして食べていた。


 ウィルさんがいう「相変わらずおいしそうですね、うらやましい」と、「擬体食は栄養はいいんですが味気ないんですよね」とつぶやいた。


 ひょっとして一緒しなかったのの原因はそれかな? と思った。


 確かに味も美味しい、高級レストランで出されても分からないだろう。




2035/11/24(土)  午前十九時三十五分 長良さんの隠れ家・リビング 藍・長良・折神・香織・加藤・ラウ・ウィル


 そしてみんなが食べ終わった、コーヒーを豆から淹れたようだった。


 そして食後、コーヒーで休憩中に折神さんが話し出した。


「警邏から聞き出したんですが、黒龍ヘイロンらしいですね、今回の相手組織は……」といった。


「やはりそうか、絞れてはいたんだが、確証はなかったんで攻めあぐねていたんだ」と加藤さんがいった。


「もっとも本拠が相変わらず分かりませんけどね」とウィルさんがいった。


 という暗号のような会話がなされた。


「ヘイロンというのは何ですか?」と私が切り出した。


「ヘイロンは犯罪集団の名乗っている名前だ、悪事なら一通り手を出している、危険な奴らだ」とラウさんがいった。


「なんで狙われるんでしょう?」と聞いた。


「難しい話なんだが」と加藤さんが前置きして話し始めた「藍さんの父君と母君がある薬を開発してしまったのがきっかけなんだ、不死の薬とでもいうのが正しいのかな、でもそれは普通の薬では無かった。常用すればするほど、妖魔あやかしになっていくクスリだったんだ。それを利用しようとした色々な組織が入り乱れて、製造方法の争奪戦が始まった。その最中さなかに父君と母君はそれぞれ別の場所で亡くなってしまったんだ、その製造方法を記録したVDヴァイオレット・ディスクが一枚紛失していて、それのせいで製造方法が完全じゃないんだ。どこかにあるハズなんだが誰もまだ見つけられていない」と一回長い話を切られたのだった。


 そしてコーヒーを一杯飲み切って話を再開した。


「ヘイロンは製薬会社自体を押さえて、不完全な薬を製造しているんだ。そこまでは分かったんだが、止める方法が無くてね。そいつらの企業母体も分からないから迂闊に政府も動けないので、私たちに案件が回って来たんだ、妖魔になる薬の処理という話でね。工場は押さえたんだが、肝心の製造方法が押さえられてなくてね。でお爺さんが狙われて亡くなって、次に藍さんが狙われている訳なんだ。持ってないといっても、いうことを聞く犯罪組織じゃないからね」といったのであった。


「そんなの酷い!」と声を荒らげてしまったがこの人たちに罪は無いのだそれは分かっている。


「確かにひでえ話だ、だから俺たちは何がなんでも君を守り切らなきゃいけないのさ」と長良さんは握拳を作って力説してくれる。


「その間に捜査班が頑張っている、我々も手をこまねいているわけではない」と加藤さんがいった。


「その間精鋭で守ろうということなんだ、少しの間不便にさせてしまうが勘弁してくれ」と折神さんがいった。


「VDが見つかったとしたら、どうなるんですか?」と聞いた。


「そのVDを壊す。必ず」と加藤さんがいう「できれば今存在する他のVDも壊してしまいたい」と続けられた。


 その眼差しは真剣だったので信じることにした。


 それ以外で私に方法が無いからともいえた。

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