第8話

2035/11/24(土)  午前九時二十五分 長良さんの隠れ家・駐車場 アイ長良ながら香織かおり折神おりがみ


 シャッターを開けるとそこには銀色でボディーサイドにウッドステッカーの貼ってある大型SUVがとめてあった。


 コレがパジェロロングっていう車なのかな?


 長良さんが声をかけ始めた「折神は助手席に、香織は後ろの左側な、後ろの右は藍で」と的確に声をかけて行く。


 そして長良さんはキーを刺し込んで回した、エンジンがかかる。


 私たちは乗り込んだ、長良さんは刀を中央にある刀掛けに置いたようだ。




2035/11/24(土)  午前九時二十五分 長良のセーフハウス・駐車場 香織・藍・長良・折神


 藍ちゃんをよく見た、可愛いに該当する子で、髪は長めで特に括っていない、光の採光で分かったことだが青い目をしている。


 多分年のころは同じだろう、だが線が華奢で掴むと折れそうな感じだった。


 この歳で天涯孤独とは、可哀そうだなと思った。


 副課長からの情報によると、この子の両親は共働きで大手製薬会社の研究員だったらしい。


 だが不運にも作ってしまった薬が強力すぎて、製造方法目的で命を狙われ、逃走の最中に亡くなってしまったらしい。


 家には口の五月蠅いお爺さんがいるだけで、兄弟姉妹は無し、親戚筋もいない。


 だから彼女は家に寄り付かなくなっていたそうなのだ。


 しかもその家も昨日焼失している、住んでいたお爺さんの行方も、不明という燦燦さんさんたる有様なのだ。


 だがずっと見ている訳にもいかないので視線を前に戻しながら考えた。


 その薬の名前は片翼の堕天使と裏の世界では呼ばれているらしい。


 まだ製造方法を入手した組織は無いため、この子が次のターゲットになっているらしいというのだ、なんともやりきれない話である。




2035/11/24(土)  午前九時四十五分 巨大スーパー・地下駐車場 香織・藍・長良・折神


「長良さん! 人がいない、様子がオカシイ」と私がいった、こういう時の勘は当たるのだ。


「何かあるのか分からんから入り口近くに止めるぞ」と返答が来た。


 止めた直後、後ろから黒いセダン数台に抜かれた、一様に黒い外車だった。


 だが狙いは私たちではないらしい「車を止めても降りないほうがいい」と続けた。


「勘か、分かった」と長良さんが答えた。




2035/11/24(土)  午前九時四十六分 巨大スーパー・地下駐車場 藍・香織・長良・折神


 黒いセダンから翼が黒い翼がたくさん生えているのを見た。


 私は口を押えて腰を折り前に体を傾けた。



2035/11/24(土)  午前九時四十七分 巨大スーパー・地下駐車場 風祭慎悟


 馬鹿に早いもう嗅ぎつけられたのか、とある組織の構成員たちが俺を狙って殺到する。


 口五月蠅い爺さんに頼まれたことをするのも一苦労だ、『陰ながら孫を見守って欲しい』か、大層な金額だったから受けちまったがここまで厄介だったとは。


 しかも、預かったディスクを持ったまま逃走せざるを得ないそういう状況だ。


 爺様から渡されたVDヴァイオレット・ディスクの中に何があるのか知らないが、俺が目当てなのかそれともVD目当てなのか分からん。


 俺は私立探偵、所謂謎解き屋であるとともになんでも屋だ。


 車が始末されてしまったらしい、足を失った、手痛いな。


 銃は許可制だが持って来てはいない、相手も同様のようだ。


 セダンタイプか奪うか、と思った時視界の隅に、昔仲間の顔が見えた。


 大学時代の友人で長良がいるのが見えたのだ、渡りに船だと思い忍び寄っていく。


 無事長良の車の隣まで来れた、窓をノックする昔使っていたハンドサインで車に乗せてくれと頼んだ、が断られた、もう一度頼む命がかかっていると伝えた。


 後ろに乗れといわれるので後ろのバックドアをそっと開けて乗り込み、サードシートを展開しドアをそっと閉めて、シートに座るベルトをかけると長良が車を静かに出し始めたまだ奴らには気が付いてないらしい。


 こっちにいるのも気が付いてないようなので、頭を低くした体制のままやり過ごす。


 地下駐車場から車を出してもらい別の場所に行くようだった。


 ココから離れられれば俺には異論はない。

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