第6話

2035/11/24(土)  午前八時五十分 セーフハウス・リビング 長良ながらアイ


「さてパジェロ・ロングでも出すかな、買い込まないといけないから荷室は大きいほうがいいよな」といっているうちに、スマートフォンの着信音が重めの音を鳴らした。


「はい長良ですが、ああ副課長なんです? あー、それは俺の担当ではありませんね。済みませんが対応できません、ではそれで」といってスマートフォンを切った。


 今度は軽い着信音がフィーチャーフォンのほうから鳴った。


「早いな、もう着いたのか、バイクは入れてくれて構わない。パジェロ・ロングを出す一緒に乗って行け」と伝えて、フィーチャーフォンを切った。


「早速だが香織が来てしまった。顔合わせと行こう」と藍に伝える。



2035/11/24(土)  午前八時五十分 長良さんの隠れ家・リビング 藍・長良


 パジェロロング? 聞きなれない車の名前、元々車に興味が無いからあまり良く分らないわ。


 さっきと別の着信音だ、重い響くような低音の着信音だ、スマートフォンも持っているんだ。


 副課長? やっぱり仕事をしている人なんだ少し安心した、普通の仕事っぽい警察関係ではなさそう、少しほっとしている私がいる。


 さっきのフィーチャーフォンのほうに軽やかな着信音が鳴った。


 もう着いた? さっきの時間から? 近くに住んでいるのかしら?


「早速だが香織が来てしまった。顔合わせと行こう」と長良さんは笑みを絶やさずにいってくれる。


「少し待っててくれるか、呼んで来よう」といってリビングを出て行く。


 このリビングもいいリビングよねと改めてくるりと見回す、白基調で統一された中に飾り棚があった、そこに摸擬刀か何かがかけてある、でもつばが無いんだ。


 この摸擬刀から不思議な力を感じる、普通の摸擬刀じゃないみたい、でも悪意は感じない。


 摸擬刀の傍にお札が置いてある、神棚なのかな? と顔を元の位置に戻した。


 長良さんの会話をする声が聞こえる。


 ドアを開ける音がした、私はそちらを振りかえった。



2035/11/24(土)  午前八時五十五分 セーフハウス・リビング 長良・藍・香織


 俺は香織を案内してリビングにいく、「リビングにいるの?」と香織から質問が飛ぶ、それに「そうだ」と答えた。


 ドアを押し開け、「こっちだ」と呼んだ。



2035/11/24(土)  午前八時五十五分 長良さんの隠れ家・リビング 藍・長良・香織


 私は目を見開いた、少なく見積もっても美人、安易に言うなら超美人。


 第一印象がそれだった、しかも私の自惚れを砕いてくれるほどの、綺麗な白いほどのプラチナブロンド、そして白い肌、極めつけの赤い瞳、髪の毛も長い普通のロングヘアよりも長いだろう。


 逃げたいけど逃げられない、こんな美人の前で私はか細い花でしかない。


温羅うら香織かおりです。よろしくね」といってその人は笑顔で手を出して握手を求めて来た、声も可憐だ。


 握手を返さなければ、と思い私もその手を握りかえす、そして声を絞り出した「藍です、藍色のアイです」と、すると香織さんが「私のことは香織って呼んでね」とフランクに声をかけてくれた。


 こんなきれいな彼女さんがいたら、私なんて……と思ったが長良さんはすごく複雑そうな顔をしていた。


 彼女さんじゃないのかな? と思ったがそういうのは聞けなかった。


「香織、ホットサンドでいいか? 中身は卵で」と長良さんが聞いた。


「それとお肉のバージョンもお願い」と香織さんが答えた。


 長良さんは「キッチンで作ってくるからその間に話をしたらどうかな?」と提案してくれた。


 その間に香織さんと話をしようとするが、いろいろ頭に上がって来てしまい私はパンク寸前になっていた。


「長良さんいない間に重要なところだけ話しちゃおうか、下着類が足りないのでしょう」と香織さんが私の本音を突き刺した。


「後は服を入れる鞄と、替えの上着類とコートかな?」と本音の横に並んでいるオマケ類にもサクサクと言葉を突き刺していく。


「アイちゃん薄着だから、コートが無いのかなと思って。秋深いからそろそろ冷えて来るし、冷えは女の子の大敵よ」と香織さんは暖かそうな革の裏ボアジャケットを持っていた、そういいながら上着を撫でた。

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