さらば、フィレンツェ
「イタリアを旅するのもあと3日か〜」
「せやな。でも、これから行くのは大本命のヴェネツィアやで!!」
らぷんとKは大きなスーツケースと小さなスーツケースを持って、フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅で自分たちが乗る予定の特急電車を待っていた。
イタリアでは乗る予定の電車がホームに来ていないと改札の中に入ることができない。そのため、らぷんたちは電光掲示板の前で自分達の乗る予定の電車を待っていた。
「なぁらぷん…俺たちが乗る電車、電光掲示板に載っていないんじゃないか?」
「そんなことないやろ?」
らぷんはKの言うことを半信半疑で電光掲示板と切符を見比べる。
電光掲示板ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
10:00発 トリノ行き 5番線 30分遅れ
10:15発 ミラノ行き 7番線 50分遅れ
10:20発 ホグワーツ行き 9と3/4番線
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
電光掲示板には、らぷんたちの乗る予定の『10:10発 ヴェネツィア行き』は載っていなかった。
「ほんまやね。何でやろ?」
「駅が違うとか?」
「いやぁ…サンタ・マリア・ノヴェッラ駅ってここしかないと思うんやけどなぁ〜
雪のせいでまだ電車が来てないんちゃう?
他の電車も遅れてるし…」
「それもそっか…」
この日はイタリアに6年ぶりの大寒波が襲来していて、イタリア全土で大雪に見舞わられていた。
らぷんたちのいるフィレンツェもその例外ではなく、駅の外には雪が降り積もっていた。
「こんなに雪が降っとったら、電車は止まるやろ?ちゃんと時間通りに電車が来るのは日本くらいだって言うしなぁ〜」
「あぁ…そうだな。」
「まぁ、もうちょっと待ってみようや。」
「OK」
それからも電光掲示板の前でらぷんたちはひたすら電車が来るのを待った。でも、発車時刻が近づいても一向に電光掲示板の表示にらぷんたちが乗る予定のの電車は出てこないし、長距離特急っぽい電車も駅のホームには見当たらなかった。
やがて10:05になり、発車時刻5分前になっても自分達が乗る電車の情報が全くないことにKが痺れを切らした。
「やっぱりこれは絶対におかしいって!
発車時刻5分前なのに俺たちの電車っぽいの全然ないじゃん!!」
「せやな。確かにおかしいわ…。駅員さんに聞いてみるわ。」
そうして、改札口にいる駅員さんに切符を見せながら、「この電車に乗りたいんやけど、電車どこおる?」と聞くと、駅員さんは顔を真っ青にして答えた。
「お兄さんたち…その電車、ここの改札じゃないわ!北口よっ!!!」
「北口?北口ってどう行くん?」
「ホームから出て、ぐるっと回って行くの。でも歩いて5分くらいかかるわ!」
「!?同じ駅なのに、歩いて5分もかかるん!?」
「今は10:07だな…。」
「えっ!?絶対間に合わんやん……」
らぷんたちの切符は割引切符だったから、予約した電車にしか乗ることができない。もし乗り遅れたら、パァになってしまうものだった。
らぷんたちが電車を乗り遅れるという現実に打ちひしがれていると、駅員さんはビシッと言い放った。
「貴方たち!ついて来なさい!!近道を案内するわ!!」
それから走る駅員さんの後を、ガラガラとスーツケース。引きずりながら追いかける。普段乗客は立ち入ることが出来ない駅のバックヤードのような道を駆け抜け、重い鞄を引っ張りながら走ること3分弱、らぷんたちの乗る予定の赤い特急電車が見えてきた。
特急電車は今にも発車する様子で、車掌さんが安全確認をしていた。
らぷんたちは必死で走りながら叫ぶ!!!
「まっ!!!待ってくれぇぇぇっっっ!!!!
俺らもこの電車に乗りまぁぁぁぁすっっ!!!!」
スーツケースを引っ張りながら駅員と一緒に必死で走ってくるらぷんたちを車掌さんは見つけて手招きをしてくれた。
駅員さんのおかげで間一髪らぷんたちは間に合ったのだった。
「貴方たち、次はちゃんと電光掲示板見ていなさいよ!Have a nice trip!!」
「Grazie!!!おおきに!!」
そう言って、駅員さんはらぷんたちを見送ってくれた。らぷんたちが乗り込むと同時に電車の扉が閉まった。
動き出す電車の窓から、一緒に走ってくれた駅員さんに手を振って、らぷんたちは次なる目的地ヴェネツィアへと向かう。
「はぁ…はぁ…おかしいと思ったら、ちゃんと駅員さんに聞くべきだったな…はぁ…」
「はぁ…はぁ…ほんまに。」
外は雪が積もるくらい寒いのに、らぷんとKの2人だけは汗だくになって、フィレンツェを後にした。
※体感ではサンタ・マリア・ノヴェッラ駅の北口まではJR名古屋駅から近鉄名古屋駅くらいの距離はありました。
って言っても、名古屋知らんと全然わからんやん、この例え…
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