2時間彷徨う男


らぷんたちがイタリアに来た理由は、Kは美術館や博物館で学校の教科書で見た美術品とか彫刻とか本物を見たい!という一方で、らぷんは美味しい本場のイタリアンを食べ尽くしたいという全然違う理由だった。

だから、イタリアに着いてから食事をどこのレストランで食べるか?は全部らぷんが決めていた。


イタリア滞在5日目、ローマからフィレンツェに行った時の19時頃に突然Kが言った。


「今日の晩ごはんの店は、俺に決めさせてほしい。」


そこかららぷんはKの後をついて行った。Kはフィレンツェ市内に何店舗もあるレストランひとつひとつの前で、「うーん…ここはちょっと高いな。」「ここはセットメニューがないのか…。」「ここは…俺の食べたいものがない…。」と頭を抱える。

そして悩んだ末に最後はいつも、


「ここよりももっと良い店があるかもしれないから、違うお店を見に行こう。」


そう言ってKはまた歩き始めた。




そう、このKという男は恐ろしいほどに優柔不断な男である。

Kの優柔不断なところは、今回の旅のために初めてスーツケースを買いに行った時にも姿を見せていた。


・YouTubeでチャック式のスーツケースをボールペン1本で無理矢理開ける外国人の動画を見て、防犯のためにスーツケースを買うなら絶対アルミロック式だ。

・10日間の海外旅行だから大きなスーツケースの方がいいのか?大きなスーツケースはどれも¥20,000-近くKが予想していたよりも高い。

・預け入れ荷物はロストバゲージの可能性がある。それなら荷物は機内持ち込みの方が失われる心配がない。

・自分は3日分くらいの着替えしか持って行かないつもりだ。着替えはホテルで洗濯すればいい。

・機内持ち込みができるサイズのスーツケースは小さい。


などなどKにとって考えることがたくさんあったから、スーツケースひとつ買うのに10時間もお店に滞在していた。

ビッグカメラのトラベルコーナーの店員もビックリである。

そこまで悩んでKが機内持ち込みできる1泊2日用のとても小さなスーツケース(しかも¥15,800-とそこそこ高いええ奴)を持って来た時には、らぷんの目は点になっていた。

一方、らぷんはKのスーツケースが丸々入ってもまだスペースが余るくらい大きな7泊8日以上用の大きなスーツケース(ネット通販で¥7,000-)を持って来ていた。

「そんな小さいスーツケースでお土産どこ入れるんwww!?」と空港でKと会った時にゲラゲラ笑ったのを今でも覚えている。




そしてKは晩ごはんのお店を探してフィレンツェ市内を歩き回る。らぷんもそれについて行く。


そうして、歩くこと2時間!

Kは突然歩みを止めて叫んだ。



「あぁっ!!もう無理っ!!!

さっきから腹減りすぎて、もうこれ以上歩けんっ!

これ以上迷ってたら、絶対晩ごはんなんか食べれんじゃん!!

もうらぷんが店決めてっ!!!」



結局、2時間もフィレンツェ市内を歩いても、Kは晩ごはんを食べるレストランを決めることが出来なかった。


その後、らぷんは「ここ行きたい。」とKが叫んだ場所の目の前にあった『ピザの世界大会で2連覇したオーナーのピザ屋』を指差した。

Kが叫んでから、わずか数秒で晩ごはんの店は決まったのだった…。


ちなみに、その時歩いた歩数はiPhoneの万歩計でなんと33,000歩!!!

この日ほど歩いた日は らぷんには未だに一度もない。




そして…『ピザの世界大会で2連覇したオーナーのお店』へ続く…。

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