第5話 アプローチ

 検索した結果、広島県だけでなんと10,000人以上のプロフィールが出てきた。

 東京や大阪のような大都会でないにも関わらず、こんなにマッチングアプリに登録している異性がいるのかって驚愕した。


 ここは広島県だぞ?

 正直、マッチングアプリなんて使わなくても普通に異性と出会えるくらいの感覚で俺は思っていた。

 しかし実際には出会いもなく、いざ登録してみたらマッチングアプリで出会いを求めている異性がこんなにいるものかと…

 これだけいたらサクラも大量だろうがな。


 ちなみに検索結果の一覧は、プロフィールの登録写真、その下に年齢が表示されているだけのもので、それが大量の件数表示されているといった感じだ。

 より詳細な検索をかけるとこの表示件数は変動する。


 ざっくり検索をかけた俺には10,000人以上のプロフィールが表示されているわけだ。

 当然こんなに見れるはずがない。


 上から画面をスクロールしながら見ていく過程で、写真や年齢をパッと見て気になればその写真をタップすることでプロフィールを閲覧できる。


 まず適当に目に留まった10人程を片っ端からタップしてみた。


 タップするとプロフィール写真以外の写真が見れたり、登録している名前が見れる。

 それから詳細なプロフィールを見ることができる。


 これだけの登録者がいるだけあって、もうアプリにしばらくログインしてないプロフィールも多々出てくる。

 そうかと思えば今ログイン中のプロフィールや今日や数日以内にログインした形跡のあるプロフィールも出てくる。


 単純にプロフィール写真が可愛い女性、後ろ姿のみ、景色、カフェのコーヒー、料理、ペット等、写真の設定は人それぞれ。

 ふと思ったが、後ろ姿って反則だ。言い方悪いが雰囲気に騙されそうになる。

 

 正直なところ、俺は可愛いとか美人が好きでスタイルも普通か痩せてる人が好きだ。こんな理想を持ってる俺は、世の女性からしたら嫌いな部類に入るだろう…

 もちろん女性の前ではそんな好みを口に出さないが。


 そして片っ端からプロフィールを見ていた中にアプリへログイン中の可愛い人がいた。

 

 21歳の大学生…


 グッドボタン押すか?

 

 いや、年下に抵抗が無くなったと言ったが、こういう時に尻込みしてしまう自分もいる。

 未成年ではないし犯罪にはならないが、大学生というあたりが引っかかる。

 年齢も結構離れているし。

 

 可愛さには敵わん…


 もう押してしまえ。


 俺はグッドボタンをそっと押した。

 悩んだ挙句、8歳年下の女性にアプローチしたという事実がここに誕生した。


 アプリとはいえ、現実で例えるならば、知らない子に声をかけたって感じだろう…


 経験上、同い年や年上にアプローチするのは抵抗がないのだが、年下だとなんだか恥ずかしい。

 この妙に初々しい気持ちは一体何だ?


 今までに俺がアプローチした相手は、既に知り合いや友達という関係か友人に紹介してもらって何度か食事等を重ねた相手である。

 初対面の人を相手にあたかも好意があるかのようなアプローチなんてした事がない。

 だから新鮮で初々しい気持ちになるのかもしれない。


 この勢いのままさらにもう2人グッドボタンを押した。


 1人は31歳の看護師で、顔は美人で気の強そうな感じ。

 もう1人は26歳の会社員で、こちらは写真が美容院で撮られたであろう後ろ姿であった。


 やはり俺は美人とか雰囲気が良い写真に惹かれやすいようだ。

 自分はそんなに高望みできる立場じゃないのに…


 一旦アプリを閉じて、グッドボタンを押し返してもらえるかどうか待ってみることにした。


 気付けば深夜1時。

 あっという間に俺は寝てしまった。

 




 


 

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