第2話 元カノ
晴れてめでたく?マッチングアプリをインストールした俺だが、実は半年前までは交際していた人がいた。
真梨という4歳年上の女性だ。
友人の紹介で知り合い、交際期間は3年弱だった。
彼女が年上という事とお互いにそこそこの年齢という事もあり、結婚の話も2人の間でちらほらと出ていた。
同棲を1年ほどしていたある時、彼女は転勤で離れた地方へ行ってしまった。
当然そのタイミングで同棲は解消。
そこからは遠距離恋愛を続け、月に1、2回会っていた。
お互い毎日連絡を取り、そこそこの頻度でテレビ電話もした。
遠距離だから寂しいという言い訳をお互いにしたくなかったのだと思う。
遠距離でもこのまましっかりちゃんと続けば、後々結婚というものが現実味を帯びてくるはずだと俺は信じていた…
しかし、現実はそう甘くはなかった。
半年前、毎月の恒例行事のごとく真梨と会った。
なんだかよそよそしいというか、やけに他人行儀だ。
「どうした?なんかいつもと違う感じがするけど?」
我慢し切れずつい聞いてしまった。
「別に何もないよ。気にしないで。」
別に何もないわりには、なにやら神妙な面持ちで答えてきた。
変なところで勘が鋭い俺はすぐに察した。
こうなれば言わせるしかない。
そう、頭の中に浮かんだのは【浮気】という二文字だ…
「何かほんとは言いたい事があるなら正直に話した方がいいんじゃない?」
「・・・」
「明らかになんか様子おかしいし、気になるからこの際言ってくれた方が助かるんだけど。」
真梨は深くため息をつきながら言った。
「ごめん。あっちでもう男いる…」
やはり見立て通りだった。
真梨は転勤先で新しい男を作っていたのだ。
俺は浮気されていた。
「だったら、もう俺ら終わりだね。てかこれもう終わってるよね。」
俺の心の中は激情だったが、冷静な口調で言った。
「本当にごめんなさい。」
真梨はひたすらに謝るばかりだ。
「別に謝罪なんていらないから。」
「ごめん…」
「お幸せに。さよなら。」
溢れ出そうな怒りと悲しみを必死に胸の奥に抑え込んだ。
そして真梨に別れを告げて俺は足早に去った。
俺の3年弱は半年前にあっさりと幕を閉じたのであった。
普通に別れていたらおそらく未練はあっただろう。
しかし、浮気されたおかげで秒で冷めてしまっていた俺がいる。
ある意味浮気してくれて感謝。おかげで簡単に冷めました、なんていう変な気持ちにすらなりつつもあるが。
真梨は顔も美人で、身長168センチで細くスラっとしていてスタイルが良かった。
おまけに料理も上手く、家事全般完璧で職業も薬剤師という抜け目の無い感じでもあった。
こんな事言うのもおかしいかもしれないが、セックスも上手かった。
そんな真梨に他に男が寄って来ないはずがない…
不思議と腑に落ちた。
真梨と別れてから、母の友人経由で紹介してもらった女性と食事に行ったりという事もあった。
歳は俺より3歳上で、顔は可愛らしい感じで小柄で華奢な女性だった。
何度かお会いした事もあったが、俺のタイプな顔だと密かに思っていた。
ドライブの段階から盛り上がって、ランチからのカフェといったコースで楽しい時間を過ごした。
だが、その時の俺はどうも恋愛モードに切り替えできなかった。
正直これは今となって、勿体無いことをしたと後悔している。
おこがましい言い方をすると、ワンチャン付き合えていたかもしれなかったからだ。
母の友人から後日聞いた話だと、俺があまりに恋愛感情が無いのを向こうが察して引いてしまったというのだ。
あの時の腑抜けた自分を殴りたいと思ったくらい後悔。
別に真梨に未練があったわけではない。
ただ、3年弱築いてきた時間があっけなく突如終わってしまったという傷は、あまりにも深くて大きかった…
恋愛モードになれないまま半年が経ち、傷も癒えてようやく再び彼女が欲しいと思えるようになった。
今このタイミングで、出会いの選択肢がマッチングアプリしかないというのは戸惑ったが、俺はここから彼女を作ってみせる。
強く誓ってアプリを起動した…
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