第二十八話 お互いの話

「いただきます」

「召し上がれ」


 本当に何となく、気まぐれであの場所に行ったら銀花がいた。


 彼女は泣きそうな顔で、抱き着いてきた。


「美味しい。佐紀君の手料理」

「ありがと。どんどん食べてね」

「うん」


 いまでは嬉しそうに僕の作った料理を食べてくれているので良かった。


「佐紀君の料理は、どうしてこんなに美味しいのかな」

「銀花の事を思ってつくっているからじゃないかな」

「.............佐紀君ってそういうことさらっと言っちゃうよね」

「そういうことって?」

「私を思って作ってくるってところ。そういうところ、大好き」

「銀花のほうが、ストレートだと思うけれど」

「そういうことじゃないんだよねー」


 そういって、また美味しそうに食べ始めた。.............が、



「ねぇ、佐紀君」

「何?」

「佐紀君ってどうして聞かないの?」

「どうしてって言われてもなぁ」


 聞かないとは多分、泣いていた理由だろう。


「誰だって、人には聞かれたくないことってあるし、触れられたくないところもあると思う。だから無理やり聞きたくない。僕はその人の意見を尊重したいから」

「そうなんだ。.............佐紀君にもそういうところはあるの?」

「.............うん、まぁなくは無いね」


 僕にだって、隠し事の一つや二つある。


 もちろん、大好きな銀花にも打ち明けられていないことはある。それは、僕の過去の事だけれど。



「そっか。私も、ね。触れられたくないところはあるの」

「うん」

「でもね.............佐紀君には見て欲しいし、聞いてほしいの」


 銀花は一度箸をおき僕の目をまっすぐ見つめる。


「.........聞いてもらえるかな?」

「うん。でもまって.............銀花だけ秘密を言うのは不公平でしょ?」

「そんなことないよ。佐紀喋りたいときに喋って」

「僕も、銀花に知ってもらいたいんだ」

「佐紀君..............」


 お互いが、お互いを見つめる。


「まず、最初に僕から言うね」

「うん」


 これは過去の僕の話。

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