第二十一話 開花

 銀花と付き合ってから一週間ほど経った。


 その間銀花が犬のようにじゃれついて僕といる時は、僕にくっついて離れなかった。


「佐紀?どうかしたのか?」

「なんでもないよ」

「なんか最近の佐紀はおかしいような気がするんだけれどな」

「そんなことない、気のせい、気のせい」

「んー」


 と言いながら首を傾げて訝しげな視線をこちらに送ってくる。


 不味いな、顔に出ちゃっていたかもしれないす


 もし、銀花と付き合っているとバレたら不味いどころの騒ぎでは済まない。


 そこでちょうどよく鐘がなり、裕也は先に戻っていく。


 いつか、銀花との関係はバレてしまうような気もするけれどまだ、周りには知られたくはない。


 そんなことを考えつつも授業が終わっていく。今日は銀花が昼休みにどうやら用事があり一緒に食べられないと朝に涙目で言われたので久しぶりに、裕也と一緒に昼ごはんを食べ、午後の授業を消化し放課後。


 銀花が待つ校門近くまで早く行こう、そう思い席を立った時


「四季さん、ちょっと先生の事を手伝っていただけませんか?」


 先生に呼び止められて出鼻をくじかれる。


「あ、先生、わたしも手伝います」


 とみんなのお母さんである美紀さんも手を挙げる。


「委員長、大丈夫だよ。僕一人で出来るから」

「二人でやったほうが早いでしょ?それに私、委員長だから」


 そう微笑まれてしまっては、僕もあまり強くは断ることはできない。


 銀花に遅れると連絡を入れて、先生からの指示のもと資料閉じを終わらせていく。


「佐紀君ってさ」

「何ですか?」

「なんで、文句を言わないの?」

「急にどうしたんですか?」

「だって、いつも先生の手伝いをさせられているじゃないですか」


 どうして、と言われてもなぁ。


「理由なんてないですよ。助けたいから助けているだけです」

「そうなんだ。やっぱり......変わってるよね。四季君って」

「変かなぁ、僕って」

 

 たまに言われるけれど、そんなに変なのかな、僕って。


「変だよ、良い意味でね」

「いい意味の変ってなんですか」

「内緒」

「そうですか」


 気になるけれど、まあいっか。


 二人で、雑談をしながら作業すること三十分程度経ち、やっと終わる。


「ありがとうございました、美紀さん」

「大丈夫だよ、また頼ってね」

「ありがとうございます」

「じゃあ、またね」


 そう言って、教室を出ていく。


 僕も先生に書類を届け、帰る準備をしている時


「......ねぇ、佐紀君」


 耳元で、そう呟かれ一気に力が抜ける。

 

 胸元を手で弄られながらも、耳たぶを優しくかんでくる。


「ぎ、ぎんか?」

「だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ!!!!!」


 耳を舐めるどころか、耳の穴の中に舌が侵入し嬲るように犯していく。


「どうして、私を放って他の女と居たの?」


 それは、黒い感情が開花した瞬間だった。




 




 

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