「じゃあ、また昼休みに」

「うん、じゃあまた」

　彼と別れ、自分の教室へと向かう。

　毎回、佐紀君と別れるときは少し寂しい気持ちになる。

　でも、今回はいつもより長く一緒に入れたから、心に余裕というか満たされる感覚があった。

　.......彼には悪いことしたなぁ。私の我儘ばっかり聞いてもらっている気がする。私も何か佐紀君に返したい。

「あ、あの、幸城さん」

「.......」

　あぁ、本当に佐紀君は優しくて家庭的で何でもしてくれて、本当にいいお友達。こういうのを親友というのかしら。

「ね、ねぇ、幸城さん？」

「.........」

　それにしても佐紀君って、何が好きなのかしら。あぁ、私のバカ。大切な親友の好きなものすら知らないなんて。次から内面を知るだけでなく、表面的なものまで知りたい。

「ねぇ、幸城さんってば」

「.........触れないでください。セクハラで訴えますよ？」

　羽音がうるさいと思ったら、虫でもなくただの喋るゴミだった。それに許可なく私の肩に触れるなんて。

「え、あの、えっと」

「.........はぁ、それでなんの用事ですか？」

　私は寛大だから一度だけチャンスを与える。

「その…」

「まさか、用事もないのに私に喋りかけてきたんですか？」

「ち、違くて、その、今日の朝、幸城さんの隣で歩いていた人って誰ですか？」

　なんなんだ、このゴミは。

「別に誰だっていいじゃないですか。あなたに関係ありますか？」

「か、関係はないかもしれないけれど、みんな気にしてますし」

　そう言われ、周りを見るとゴミ共がそわそわした目でこちらを見ていた。

「はぁ.........。さっきも言いましたけれど、私が誰と居ようとあなた方には関係はありません。違いますか？」

「そ、それは…みんな、幸城さんのことがす、すきで.........」

　.........急激に吐き気が押し寄せてくる。このゴミの顔をよく見れば、私に前告白してきたゴミだった。

「そ、それに、あんな男、幸城さんには似合わないですよ」

「っ！！」

　私の中で、明確に何かが切れる音がした。

「.........口を開くな、このクズが。口も臭ければ態度も終わっている。そんなお前が！お前たちが！自分のことを彼より上だと勘違いしている低能で人以下の価値しかないゴミ共が、彼の上なはずがない。考えればわかることだけれど、そんなことを言うごみクズ共より、彼のほうが一層上だわ。あぁ、考える脳がないからそんな言葉が出てくるのね可哀そうに。脳外科のほうに通院したほうがいいんじゃないかしら？まぁ、とにかく私から言えることは、もう二度と話しかけてこないで。別に興味もない人......いえ、そもそも、ゴミから「好き」だとか「愛している」とか言われても嬉しくないわ。ゴミと人間は付き合えないもの。それじゃあ、永遠にさようなら」

　私の口からは、湯水のように暴言がはかれた。　　　　

　未だに、イライラは収まらないが、四時間目が終わるまで我慢だ。そうすれば、彼と一緒にご飯を食べられる。

　そう思い、若干のむかむかした感情、佐紀君とお話しできる楽しさなどのいろいろなごちゃごちゃしている感情を一旦落ち着かせ、授業を淡々と聞き、四時間目が終わる。

　いそいそと準備をして、空き教室に向かう途中.........。

　彼は、あの.......美紀という女と一緒にいた。