冷たい彼女の落とし方

第十八話 灰色へ

「ふぁー、おはよう、裕也」

「.......なぁ」

「今日の授業ってなんだっけ？」

「なぁ、佐紀」

「それより、早く昼にならないかなぁ」

「佐紀、どういうことだ？」

「.......はぁ、何が？」

「なんで、お前が幸城さんと一緒に登校してたんだ？」

　やっぱりこうなったか。

　裕也だけではない、周りの全員が集中してこっちを見ている。正直、少し鬱陶しい。

「たまたま、学校近くであって、たまたま話しかけたら、たまたま一緒に登校することになっただけ」

「......本当か？」

「ああ、本当だ」

「.......そうか」

　裕也のこういう、踏み込まない接し方、基本うざいけれど本当にありがたい。

　だが.......

「おい、四季。お前なんかがなんで幸城さんといっしょに登校してんだよ」

「はぁ.......それはたまたま会ってたまたま会話しただけ」

「そんなわけないだろ」

「.......幸城さんが、落としたハンカチ拾って渡して流れで一緒に来れただけ」

「なんだ、そうか。幸城さん優しいもんな」

　はじめから、しつこく聞いてくるように言い訳を用意してよかった。

　それにしても、こいつうざいし失礼な奴だな。

　まぁ、自分でこうなるってわかっていて了承したからな、頑張らないと。

　.......そう思ったが。

「おい、お前」

「ねぇ、四季君」

「おい、四季」

　休み時間が終わるたびに増えていく人。

　どうやら、朝に何か銀花さんのほうで一悶着あったようだ。

　聞いたところによると、あの銀花さんが声を荒げて男子たちを侮蔑したらしい。

　四時間目が終わり、いつもの空き教室に行こうと席を立とうとしたとき、

「大丈夫？四季君」

「あぁ、美紀さんか。大丈夫だよ。少し疲れちゃったけれど」

「大変そうだね。どこか行くの？」

「みんな、うるさいから教室にはいられないから校舎裏にでも行こうかなって」

「私、購買まで行くから途中まで一緒に行こうよ」

「ありがと」

「いえいえ」

　美紀さんは、このクラスの委員長で皆のことを見てくれているお母さん的な存在である。

　僕が、ちょっとお疲れ気味なのが分かって気遣ってきれたんだろう。

「今日の、お昼ご飯はどうしようかなぁ」

「購買のパン美味しそうですもんね」

「四季君はいつもお弁当だよね」

「そうですね。毎日、何にするか考えるのめんどくさいですけれど」

「えぇ！四季君が作ってるの？」

「まぁ、一応」

「偉いねー」

　最近は、銀花さんの分まで作ってるから少し大変だけれど、銀花さん美味しそうに食べてくれるから作ってよかったなて思うんだよなぁ。

「それじゃあ、僕はここで」

「うん、また後でね」

　委員長と別れいつもの空き教室にたどり着き、ドアを開けるがまだ誰もいな.......。

「.......佐紀くん」

　いつの間にか、突き飛ばされドアの鍵を閉められ、後ろから強く抱きしめられていた。