第十二話 やっぱりあなたは…。

 彼との、出会いそして一日泊ってから一週間がたった。


 途中、告白をされるところを見られたり連絡先を交換したり、ネコのスタンプが可愛かったりと色々あった。


 が、私は未だに彼を信じ切れていない。


 廊下で目が合っても、無視をしてしまうことや、喋りかけてくれたけれど無視をしてしまうこともあった。


 例えば、


「幸城さん、おはよう」

「…」

「…?」


 と無視してしまい、そのまま歩いて行ってしまったり


「幸城さん、ネコ好きなんだね」

「.................そうだけれど、何か文句あるの?」


 と冷たく返事をしてしまったことも多々あった。


 彼は私にちゃんと接してれようとしているのに、私は未だに拒み続けている。


 そんな自分を変えようと、今までの人とは違う、彼のことを観察してみた。


 まず彼は、人を見た目で判断して態度を変えたりしない。全員に平等に接していた。


 他の人だったら、私に対してやけに優しかったり媚びへつらってきたりといろいろするのだがかれは一切そんなことをしなかった。ありのままの私を受け入れていた。


 そして次に絶対にこちらが言うまで踏み込まない人でもある。


 他にもいろいろあるが代表的なのはこの二つ。


 あと単純に優しい。

 

 私以外の人にも、優しく接しているところを前廊下で見かけた。


 ......................何故だか少しだけもやっとして、何もない心にじわっとシミができたような感覚だった。

 

 …一旦、それはおいておこう。


 まぁ、何をいいかというとかれは普通の人とは違うということだ。


「幸城、この問題を解いてくれ」

「分かりました」

 

 このくそ爺。


 私の事ばかりさして、私が教壇に近づくと、毎回鼻を鳴らして匂いを嗅いでくるし、じっと胸ばかり見てくる。ほんとうに気持ち悪い。


 大体の男子はみんなそうだ。


 クズ、ゴミ、蚤、カス。人間になれなかった何か。汚物の集合体。


 そんなものばかり。


「これでいいですか」

「ああ、正解だ」


 ほんとうに気持ち悪い。


 それからも、授業を受け放課後。


 外は雨が降っていた。


 傘を開き、家に向かう。


 何もない、暗いあの家に。


 玄関の扉を開け、急いで自分の部屋に戻り、制服のままベッドに飛び込む。


 家には誰もいない。両親なんて存在知らない。あんなものは両親なんかではない。


 窓に打ち付ける雨の音。


 洗い流してしまいたい。


 私は何も考えないまま家を出た。


 傘も持たず、行く当てのないまま雨の中を彷徨った。行きいついたのは、この前の街灯の下。


「…冷たい」


 私は、光に手を伸ばす。


 無意識に思い出すのは彼だった。


 彼の料理、彼の笑顔、彼の優しさ、包容力。


「...暖かい」


 私は光に手を伸ばし続ける。


「あの…君、大丈夫ですか?」

「…」


 声を掛けられた。


 私は、振り向き彼を見た瞬間、求めるように手を差し出そうとして止める。私は彼に冷たくしていた。


「…あなたは誰」

「僕は通りすがりのおじさんだよ」

「ふふっ」


 面白い人。


「風邪ひくよ?」

「別にいい」

「そっか」

「……………どうしてここにいるのよ」

「幸城さんがここにいるから」

「風邪ひくわよ?」

「別にいい」

「……ほんとうにあなたって人は。分かったわ」


 呆れてはいるが、それよりもうれしかった。ここにきてくれて。あんなにひどい私を心配してくれて。


「今日、うち生姜焼きなんだけれど食べる?」

「…生姜焼き」

「うん、って言っても普通のやつだけれど。というか来てくれるとありがたいなぁーって」

「どうして?」

「何となくだけれど、ここに幸城さんがいて元気がなかったら嫌だなって思ってご飯用意しちゃったんだよね」

「…分かったわ。あなたに甘えることにする」

「ありがと、幸城さん」

「…………それはこっちのセリフ」

「何か言ったかな?」

「いいえ、何も」


 ありがとう、四季君。




 

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