第八話 人はどうやら支えあって生きてるらしい

「「いただきすます」」


 二人で家に帰り、用意していた生姜焼きを温め一緒に食べる


「…温かい」

「そりゃ、さっき温めたからね」

「違うわ、そういうことじゃないの」


 とかぶりを振る。


 そう言って、また味わうようにゆっくり食べる幸城さん。そんなに凝ったもの作ったわけではないんだけれどなぁ。


「...........四季君は何も聞かないのね」

「聞いてほしいの?」

「…ずるいわ、そのいい方」

「ずるくないよ」

「急に子供にならないの」


 と窘める様に諭してくる。


 幸城さんっていろんな顔するなぁ。


「まぁ、どうでも良いけれど、もうこんなことしないでくださいね」

「…あなたには関係ないじゃない」

 

 と、ふみこまれたくないのか拒絶される。


「関係ないかもしれないけれど、それでもやめてください」

「…どうしてそこまで」


 理由は、僕自身、あまり分かっていない。だけれどなぜか心配なのだ。

 

「少なからず関わった相手があんなことをしていたら誰でも心配になるよ」

「誰でも…ね。そんなことはないわ。みんながみんなあなたのようではないもの」


 なんだか、段々とイライラしてきた。少しだけ振られたあのイケメン君の気持ちが分かったかもしれない。


「そうかもしれませんけれど」

「そうかもしれないんじゃなくて、そうだわ」

「なんで、そう分かったような顔しているんですか」

「だって、今まであってきた人みんなそうだもの」


 この子は本当に……昔の僕に似ていてイライラする。そして、心配になる。


「あーもう、ごちゃごちゃうるさいです!」


 この子は本当に、可愛くて、きれいで、一見なんでもできるような子だけれど、怖いんだ。人とかかわるのが。というか、分からないのかもしれない。


「いいから、もうこんなことやめてください。なんでもです。どうしても雨に濡れたくなったりつらいことがあれば、料理でも、家に泊めることでもなんでもしてあげます。だからもうこんなことはしないでください」


 僕の必死な訴えが通じたのか、数分間、彼女は頭を悩ませ口を開いた。


「…………それって、本当に?」

「ええ、本当です」

「…本当?」

「ええ、本当です。だからもうこんなことしないでください」

「分かったわ。もうこんなことはしない」


 正直、聞いてくれると思っていなかったが良かった。考え直してくれて。


「…毎日来てもいい?」

「そ、それは…」

「え、嘘ってこと?」

「い、いや違くて」

「…………ぷっ。ふふっ。冗談よ。さすがに毎日はこないわ。あなたにもプライベートは大切にしてほしいし」

「冗談きついよ。でも、よかった」

「何が?」

「いつものように戻ってくれて」

「っ…知らないわ、そんなこと」


 ほら、やっぱり可愛い。

 

 


 

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