第九話 雨

 「今日も雨」

 

 私は雨が好きだ。


 私のどうしようもないやるせない気持ちをすべて洗い流してくれそうだから。


 ぼぉーっと街灯を見つめ、手を伸ばしてみるけれど当然、光なんてつかめるわけがない。


 どのくらい時間が経ったんだろう。


 ぼぉーっと街灯を見つめ、何分、いやなん十分経ったのだろう。


 分からない、けどいい。


 別に、私なんてどうなったって。


「あのさ、君、大丈夫?」

「…あなたは誰?」


 こういうことは、今までにも何度かあった。


 大体、四十代くらいのおじさんか、如何にもな男の人が体を嘗め回すように見てきてこういうのだ。


 気持ち悪いなと思いながらも顔を向けると、私と同じような年齢の少し感じの不思議な男子がいた。


「通りすがりのおじさんだよ?」

「どう見ても同年代の子、よく見積もっても二つ上くらいにしか見えないわ」

「いや、照れるな。そんなに若く見える?」

「あら、ほんとに年上?」

「それはあなたの年齢教えてもらわないと分からない」

「…じゃあいいわ。考えてみればどうでもいいもの」


 この人は一体何なんだろう


「で、最初の最初の話に戻るけれど大丈夫?」

「大丈夫です。お気になさらず」

「はぁ、そうですか。じゃあ…さよなら」


 そういって彼は買い物袋をぶら下げながら、帰っていく。


 何だったんだろう。

 

 …どうでもいいか、関係ないし。


 それからまた、意味もなくぼぉーっと光を見つめる。


 何分経ったかまたも分からなくなったとき、また声を掛けられる


「あのさ、君大丈夫?」


 またか、と思い振り向くと驚きの人物がいた。


「あなたは…」


 さっきの人だった。


「通りすがりのおじさんだよ。それよりこれ」

「……これを渡したらあなたが濡れるじゃない」

「そうだけれど」


 彼は困った顔をしてこっちをみてくる。


「じゃあ、僕の家までくる?ご飯も食べてないでしょ」


 ……やっぱりこの人も同じか。


 だけれど、まぁ、いっかもう。


 これは単なる気まぐれ。


 どうでも良くなった諦めからくるものかもしれない。


「分かったわ」




 

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