5歳

第6話 洗礼の儀1

-side ラインハルト-




 この世界では5歳になってから、洗礼の儀を受ける。今日はその日だ。



「兄上、早くいきましょ!」

「はーい、しかしお前は、相変わらず可愛いなあ。うりうり!」



 俺はというと、ブラコンを発揮していた。

 これは完全に親バカが遺伝したな。うちの弟は世界一可愛いから仕方のないことだが。

 


「もー、兄上、それ昨日も言ってた」



 どっ、どうやら、ちょっとウザがられているみたいだ。ほどほどにしておこう。



「そんなところで戯れてないで、二人とも早く馬車に乗りなさい」



 父上が馬車の中から言う。毎回思うけど、この馬車豪華すぎないか。高級ソファー並みに気持ちのいいクッションに振動も少ない。

 真っ白な布に、金色の薔薇みたいな花の家紋が刺繍されている。

 今でも、乗るのに気後れしてしまう。

 こういうのを見ると値段が気になるのは人間の本能的なものなのだろうか。

 


「「はーい」」



 俺たちが急いで乗ると、馬車はゆったりと出発する。



「ところで母上、今日これから行く教会はどのようなところなんですか?」



 そう。とりあえず教会に行くとは聞いていたが、どこかは教えてもらってない。

 それを聞くとは偉いぞ我が弟。間違いなく、将来有望の天才だろう。



「……なんか、今寒気がしたんですけど」



 あからさまにこちらを見て警戒している。気のせいだろう。保証はしかねるが。この世界では無料で入れる保険はないからな。



「もう貴方達は。今日行くところはこの国で一番歴史の古い教会。神話によると、神が人間に作らせた教会と言われているわ。古い教会だけあって、さまざまな貴重な文化遺産や歴史書物があると言われているの。この王国がある前から存在しているとされいるわね」



 ほー。神と聞いて、あの女神が思い浮かぶ。いやいや、世の中にはもっとまともな神もいるだろう。信じるしかない。



「ちなみに、今から行くところは、厳密にいうと王国内ではないんだ。教皇に、大公の爵位と自治権が与えられているから、実質的に教会がある地域は大公国なんだよ。名前はないんだけどね。強いて言えば、教会名をとってエベレスト大公国かな」

「へー。すごいんだね」

「うん。すごいよ。なんせ、この大陸で一番、権威のある人物が住んでいるところだからね」


 なるほど。地球で言うところのバチカン市国みたいなものか。権威ある人物がいるということは、それなりの趣向を凝らした、大きくて美しい建物があるということかな。

 どんなところだろう。楽しみだな。

 そんなことを考えているうちに、教会が見えて来た。



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