第7話 洗礼の儀2

-side ラインハルト-




「あれは……、島?」

「そう、あれがこの国最大の教会、エベレスト教会だ」



 目の前に荘厳で美しい街が現れた。もはや、教会という言葉で表すのは生ぬるい。

 なんとなく雰囲気が前世の動画で見た“モン・サン・ミシェル”に似てる。建造物の雰囲気に圧倒されていると、入り口に着く。



「あら?どうしたのかしら?」

「ん?どうしたの?」

「なんか、様子が変なのよねえ。やけに静かなような……?」

「なんかあったのではないですか?」

「お、その結論に至るとは、やっぱ、ラリーは天才だな」

「兄上は黙っていてください!」



 おっと怒られてしまった。

 それにしても、本当にやけに物々しいとというか、警備が厳重と言うか。

 母上の話だと、いつもこんな感じではないのだろう。そんなことを思っていると、一人のお爺さんが純白のローブを着た警備員に囲まれて来た。



「……っ、あれは!!」



 父上がいきなり緊張した様子で居住まいを正し始めた。よくみてみると、母上もちょっと顔がこわばっているような……?

 ……って、まさか。



「ようこそおいでくださいました。ラッキー公爵家の皆様方。特に、ラインハルト様。私は、この教会で教皇をしております、ベンジャミン・エベレストと申します」



 驚いた。教皇自らお出迎えか。



「こちらこそよろしくお願いします。しかし、なぜエベレスト殿がこちらへ?」



 まあ、普通は出迎えにくることなんてないよな。てかそもそも、普通に生きていたら会える機会もない。

 父上は仮にも元王族だから、前にも会う機会があったのだろう。



「一昨日の夜、信託が降りまして。“ 明後日、ラインハルトという少年が洗礼の儀にくる。丁重に迎えるように。”とのことでしたので、迎えさせていただいた次第です」



 ……!!一瞬、僕を転生させた女神様のことが頭をよぎる。



「ふぉっふぉ。その様子だと何か心当たりがあるようですな。ささ、我が主の客人ですので、遠慮せずにこちらへ」



 教皇が先導して案内してくれる。俺達にも警備員が付いているようだ。

 さっきから周りの視線が痛い。流石に、神聖な地域とあって静かだが、周囲の人たちは、こちらをチラチラと遠巻きに見ている。



  ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 気まずい思いをしながらも、大きな広間についた。中央に美しい男性の彫刻がある。

 他にも7体ほど美しい彫刻があった。中にはあの女神に似た彫刻もある。嫌な予感大当たりと言ってところだろうか。



「こちらは、本館の洗礼の間でございます。本日は特別な状況での洗礼ゆえ、ここで行わせていただきます」

「教会にこのようなところがあるのですね。私の時は北館の洗礼の間でしたよ」

「あたしは南館だったわ」

「そうですね。ここの教会は王族が使う北館、その他の貴族が使う南館、平民が使う東館、孤児や教会関係者が使う西館、そして、教皇や大司祭、信託があった方が使う本館というふうに分かれています。一応洗礼の間はありますが、過去にこの場所で洗礼の儀を行ったことはありません。私もかなり緊張しております」



 よくみると、儀式用の魔法が書いてある本を握る手が少し震えている。さらに進むと、歩いた先に1つの質素な部屋があった。



「申し訳ないですが、ここから先は私と、ラインハルト様しか入れません」

「わかりました。ラインハルトを頼みます」

「かしこまりました」



 中に入ると、中央のテーブルにスマホサイズの板が置いてあった。



「それでは、これより洗礼の儀を行いたいと思います。この板は、私が用意させていただいたステータスボードです。後ほど差し上げます。ここに手をかざしてください」

「はい」



 教皇が魔法の呪文を唱える。

 すると、次の瞬間眩い光が俺を包んだ。





  ♢ ♢ ♢ ♢ ♢





 次に見たものは……。

 正座して謝り続けているこの前の女神と、ブチギレているさっきの中央の彫刻の男性。

 そして、それを見守る6人の周りの人達?だった。



 ………………はあ?



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