第2話 赤ん坊になってた

-side ラインハルト-




「おぎゃー、おぎゃー。うええええん!!」



 再び目を覚ますと、何も見えなかった。

 そして、気づいたら甲高い声で泣いていた。腹が強烈に減っているみたいだ。



 確か女神が、“異世界に転生させてあげるから、思う存分無双してきてください!”

 みたいな胡散臭いこと極まりないこと言ってたけど気のせいだったかもしれない。



 それはそうと、ここはどこだ?

 視覚はまだぼんやりしているが、触覚の感覚はすごくある。

 若い。めっちゃもっちりしてる。

 聴覚もはっきりしているようだ。

 だんだんと、視界がクリアになっていく。



 すると、どっかの少女漫画に王子様役として出てきそうな、20代前半の金髪青眼のイケメンと、こちらも20代前半の赤髪ロングの綺麗な女の人が覗き込んでいた。



「ああ、ああ、ああああああ!!(なにこの美男美女…!!)」



 思わず、指をさしてそう言った。

 どうやらまだうまく発音できないらしい。



「おお、こっち指差した。パパだよー」



 パパらしい。媚び諂って損はない。

 ここは満面の笑みで。



「ああ、(へっへ、よろしくお願いします)」



 これも処世術というやつだ。

 それにしても……、どうやら俺は赤ん坊に転生したらしい。

 さっき、残念そうな女神が言ったことは嘘ではなかったのかもしれない。

 もっとも、俺に無双なんて度胸のいることできる訳ないのだが。



「ふふ、もう、かわいいわね」

「あう?」

「そうそう、あたしがママよ?…って、この子まさか言葉を理解してるのかしら?」

「なに?天才じゃないか。流石、俺たちの子供だ」



 あ、やっべ。



「ああー(すみません。よくわかりません)」



 適当に誤魔化しとく。AIみたいな返答になってしまったが仕方がない。

 目立った行動はなるべく避けたほうがいいからな。



「おお、やっぱり、理解しているっぽいな。もしかしたら、神童かもしれない」

「ふふ。これは期待できるわね」



 どうやら、誤魔化しきれなかったみたいだ。というかむしろこれは、うちの両親がハイスペック親バカなだけなのかもしれない。



 あと気になるのは、さっきから目に入ってくる家具といい、俺が着させられている絹布といいめちゃくちゃ豪華ということだ。

 


 ……………。いや、てか、ん?

 豪華すぎないか。

 明らかにえげつない働き方した人たちの家に置いてあるような、調度品類。

 やっぱりあの女神、どこに転生するとか教えてくれなかったから、今すごい困ってるんだが。この先どうなってしまうんだろうか。



 そうこう悩んでいるうちに眠くなってきた。一旦休憩しよう。



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