転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺わかば

1章⭐︎転生-5歳⭐︎

1-3歳

第1話 テキトーにやっちゃった

-side 第三者-




「ようこそ〜!」



 いつからだろうか。気づくと男はこの場所に立っていた。

 目を開けるとそこには、美しい深緑色の髪に透き通るようなエメラルドグリーンの眼をした、女神がいた。実際に神としか思えない見た目、慈しみを含む声、佇まい、オーラ。

 存在全てがこの物体は神だということを男にわからさせた。



「(わからされました。ん…??待てよ。ようこそとしか挨拶してないんだが。もしかして、残念なタイプの女神か?)」



 男はそう気づくと次の言葉を待った。



「突然ですが、あなたは死にました。しかし、あなたは生前、無難に生きたため、異世界に転生して無双できるチートスキルを私から差し上げることができます。という訳で、思う存分無双ハッピーライフしてきてください!」

「(んん…??もしかしなくても説明が適当なタイプの女神なのか)」



 男はやはりそう気づくと、次のようなことを考えた。



「(出落ちパンチを喰らってしまった気がするが、本当に突然だな。俺死んだのか。まあ、70歳の記憶まであるということはそうなのだろうな。寿命っちゃ寿命か。まだ生き足りないような感じもするが。

 ……それはそうとここはどこだ?この物体が女神だということはなぜだかわからないが、なんとなくわかる。もっとも、名乗られてはいないが。ただ、さっきからこの女神が言っている意味が本当にわからない。

 転生無双という意味がわからないというわけではなく、例えば、どんなスキルや能力を与えられるとか、どのようなことをすれば転生無双ということになるのだとか。

 なぜ俺が異世界に行って無双しなければならないとか。正直言って、そういう説明がないこの女神は胡散臭いこと極まりない。ここは断るのが得策か)」



 男は今のやりとりで、完全に女神を信用しなくなったようだ。



「嫌だ。お断る」

「え……?(神の力で、私に対する信頼性を極限まで高めているから、嫌がられるとは思ってなかったんだけど……)」



 女神は動揺した。



「(逆になにを動揺しているんだこの人)」



 神の力を上回る説明の適当さはある意味恐れ多いのかもしれない。



「まず、俺には無双なんて無理だ。それに、過ぎた力を持っていると悪人や面倒ごとが群がる。だけど、確かに胡散臭いが、もらえるスキルは貰っといて損はない気もする。あなたが無償でくれるのならばだが」



 男はめちゃくちゃ女神の事を疑った。



「えっ……、ええ、わかりました。別に胡散臭くもなにもないので、沢山チート能力あげます。それでは、これよりあなたを転生させます。次の人生を思いっきり楽しんできてください!あなたに祝福あれ!(めんどくさいからスキルいっぱいあげちゃっていっか)」

「(自分で自分のこと胡散臭くないっていうのってどうなのかと思う)」



 この女神、胡散臭さも開き直り方も世界一であった。



「(んん……??待てよ。なんで勝手に転生させられようとしてるんだ?俺、まだ承諾なんてしてないんだが。むしろ、信頼がなさすぎるから別の神呼んできてもらって断るつもりだったんだけど。あと、異世界のどこの国に転生するとか聞いてないんだけど。何歳に記憶が戻るとか。……って、気づいたら目の前が光って……!!)



 いや、ちょっと、まっ……!

 適当すぎーーー!」



 こうして男の来世は始まりを告げた。



----------------------------------

[コメント]

近況ノートにAIイラストで作った、ヒロインと主人公のキャライメージがあります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る