第298話 卒業のお茶会
ポリア;義理の姉にして我がタクテリア聖王国の唯一の姫君。
クレイ;シーアネマ領領主の孫。
シルバーフォックスの甥っ子って言う方が身近かな?
ソーヤ;砂漠に覆われたビレディオ領。その領主ご推薦の名士の子。
ボナジ;トレネー領にあるとある町の代官の息子。
ライライ;ナスカッテ国からの留学生。僕目当ての留学だったらしい・・・
ホンレム;セメンターレ国からの留学生。有力者の推薦?双子の女の方。
タッター;ホンレムの双子の弟?兄?当然セメンターレからの留学生。
チヌオイ;シーアネマ領にある某所の代官の息子。
以8名。
僕が治世者養成クラスに入ったときのメンバーです。
で、1年経って、色々変わったよねぇ。
もともと、このクラスは、統治者として、同世代の人脈を築いたり、騎士とかの集団を指揮したり、統治についてのノウハウを学んだり、そんな養成校です。
そのために歴史や経済、統計とかちょっとした心理学みたいなの、果てはマナーとかダンスとか、そういうのを学びます。
とはいっても、そのほとんどは、生まれ育ったおうちで、そこに即した勉強をすることで学べるもの。
てことで、結局は人脈形成が主目的の人も多いわけで・・・
ライライさんっていう留学生には、色々と思うところが無いわけではないけれど、結局のところ、大なり小なり、国を背負って行くであろう人と、お近づきになりたい、という、そういう意識で通う人が多いわけです。
だいたい、留学生なんていうのを受け入れているところで、まさにそれが目的でしょう、って感じなんだけどね。
我が国としても、平和に外交を、って思惑もあって、受け入れているんだろうし・・・
てことで、お友達になりたい筆頭株としては、王族と懇意に、って事なんだよね。なんだかんだで、大人になって、政治に発言権を持つのは王族だったりするし、そんな王族の誰かと懇意にしているなら、自分の意見を聞いてもらいやすい、ってのがある。逆に領主とか代官とかの人となりを知っていれば、王族としても、安心してその人の意見に耳を傾けられる。
そんな感じで、治世者クラスはできたらしいです。
ま、その設立にひいじいさんの入れ知恵があったとかなかったとか・・・・
とりま、それは置いておいて。
えっとね。
現王太子の子供ってのは、元々3人。僕を入れると4人います。
僕と年の差で言うと、長男プジョー兄様は8つ上。次男パクサ兄様は6つ上。長女ポリア姉様は4つ上。そんな感じ。
でね。
治世者クラスの上記目的を考えると、できるだけ長く王家直系が在席していることが好ましいってわけ。
成人が15歳のこの国において、養成校にはあんまり年齢に制限はない。
制限はないとはいえ、ほとんどは成人までに入学しようとし、在籍年数の制限もないとは言え、長くても3,4年で卒業する。
入学は春夏秋冬の年4回。
対して、卒業は随時自分が良し、と思ったところまで。
実際、入学即卒業なんて人も少なくない。他のクラスではね。
平民にとっちゃ、養成校に入学許可された、ってだけで、将来安泰、なんだって。
まぁ、それはいいとして・・・
プジョー兄様が12歳で入学してから今まで、おまけの僕は置いておいても、ポリア姉さんが卒業するまでずっと、王家直系の子供が治世者養成クラスにいたわけです。そういう意味でも、治世者養成クラスに入るのは貴族でも他国の方でもとっても価値があったわけで・・・
入学後1年になる僕。
僕が入学してからも、3度の入学があって、夏には入学者着なかったけど、秋と冬には新入生がいたみたい。
ほとんど学校に行かなかった僕は、ほとんど接点はないんだけどね。
ただ、今や人数は倍近くに膨れ上がっているらしい。
これは、新たな王族である僕という存在も少なからず影響しているってので、ちょっと眉をひそめちゃうんだけど・・・
そんなんで増えないでよね、って内心思いつつも・・・
とはいえ卒業者もいるわけで・・・・
「それにしてもポリア様がご結婚とはねぇ。しかも他国だなんて、アレクサンダー殿下もお寂しいでしょうに。」
そう言うのは、僕の知らない治世者養成クラスの人。
どうやら辺境バルボイ領のどこかの代官の娘らしい。代官とは言っても、あの領は王家の遠縁も多くて、子爵かなんかの爵位を持っている人の子供なんだって。
ちなみにディルの幼なじみで同い年だって言ってました。
名前は、えっとナディさん?ニックネームらしくもうちょい長いみたいだけど・・・
はっきりしないのは、ここが姉様の開いたお茶会の場で、僕が遅刻して来ちゃったから。ていうか、お茶会をやっているときに、別件で王家のプライベート空間の方に顔を出して、姉様に呼ばれた、って感じです。で、改めてあなたはだぁれ?なんて聞く雰囲気でもないし、みんなが呼んでる通称を耳にして知ったのがナディって名前なわけなんです。
そこにいたのは、クレイさんとチヌオイさんという、シーアネマ領の2人と、ホンレムさんタッターさんといったセメンターレ国の双子、そして新入生のナディさん。つまりは治世者養成クラスの在校生って感じ?その関連で僕も呼ばれた、のかなぁ?
とはいえ、姉様は結婚するから卒業かな?なんて言ってて、他の人も卒業を考えてるんだって。
え?ナディさんも?
「私は殿下にお目にかかりたかったのよ。あの堅物のディル様がご執心の殿下ってどんな方なのかしら?ってね。」
なんて言ってウィンクする。
あんまり貴族令嬢っぽくない方だなぁ、なんて思ったら、辺境の令嬢なんて平民と変わんない、なんて、笑ってる。
まぁ、辺境を生き抜くには、こういう姉御な人が良いのかもしれないです。
ていうか、ポリア姉様ととっても仲良しそうで何より。
なんでも、このお茶会は卒業する人たちでのお別れ会的なものらしいです。
「アレク様はどうするのですか?」
なんて聞いてくるのは双子のお姉さん?妹?わかんないけど女性の方のホンレムさん。
「僕、じゃなくて私は、もともと短い予定でしたから。姉上と一緒に卒業しようかと。」
「あら、アレクは、もうちょっとお勉強なさいな。きっとこれからも出会いはあるはずでしょうから。貴方が目的の方も多いのよ?」
なんて、ポリア姉様が言うと、みんな同意します。
ライライさんがそうなのはこの前知ったけど、そもそも僕と知り合って何の得があるんだろう?
「入学には直接関係ないけど、殿下が入学することになったって聞いたら、ほら、うちの、ね。」
クレイさんが苦笑するのはシルバーフォックスことシーアネマ様のことだろうね。ちなみにシーアネマって領と同じ名前を付けられたこの女傑は、この国にとっても、相当な重鎮らしいです。僕には甘々な、でもちょっと、デレすぎて怖いおばさんだけどね。
僕、というよりそもそもひいじいさんにぞっこんなこの方は、僕の助けになるようにって二人に散々言い聞かせたそうで。
まぁ、僕の卒業と同時に卒業したい、ということらしいです。おばさま命令でね。もともとは夏の遠征を最後に卒業する予定だったとか。なんかごめん。
「ハハハ。姉様も卒業するし、プジョー兄様も先生をやる時間がもうないって言ってたでしょ?僕もほとんど学校へ行く時間とれなかったし。やっぱり、卒業しないと、なんか落ち着かないっていうか、さ。」
「でも、陛下が、成人まで出席しなくとも籍は置いておくように、理事に申しつけてたわよ。」
「マジ・・・じゃなくて、本当ですか?まぁ、別に出席しなくていいんなら、いいのかな?」
「殿下の反応では、もうほぼご出席はないんですのね?」
とはホンレムさん。
なんか、ホンレムさんとタッターさんの目が真剣です。
「成人までなら、あと4年。絶対はないけど、当分は行かないかなぁ?」
王族との出会い目当てで人が増えてるなら、僕は出席する方がまずいよね?そもそも成人すると、王家を抜けて公爵家を作るって内定してるし。
僕の反応に双子はなんか、目を合わせて頷いているよ。
で、ホンレムさんが、それならって、お手紙を出してきた。
「私たちの後ろ盾であるカッシェ様からです。殿下は冒険者から商人になられたエッセル様のお身内と伺っております。私たちは、カッシェ様の命にて、我々が殿下をお慕い申し上げるようならば、これを、殿下にお渡しするように、と。意味がわからねばそれでいい、そうお伝えしなさいと承って参りました。」
僕は、渡された手紙に記された差出人を見て、息を呑む。
そこには、きれいなローマ字の筆記体で、『カッシェーティエ・ル・ランシェル・セメンターレ』と書かれていたのだった。
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