第294話 天使のレーゼと二人で・・・
「にーたまといっちょ。たのし~い~~な~。」
キャハハハハ、と、笑いながら僕の前を歩くのは、天使か?天使だよね?
あ~~僕の弟は、なんて天使なんだろう!!
レイブンたちと、タールたちをやっつける実験をした翌日・・・
まぁ、当日はご機嫌斜めなレーゼとお風呂に入ったんだよね。
といっても、レーゼはバンミが抱っこしてたんだけど・・・
ご機嫌斜めの理由は、どうやら僕と遊びたかった、って言うんだから、もう、なんて健気なんだ、って思うでしょう?
レーゼはバンミが僕を独り占めして遊んでたって思ってるみたい。僕ではなくバンミに対して、とってもおかんむりです。
けどさぁ、バンミも大人げなく、
「レーゼは弟で、僕は仲間。いや、従者だからね。つまりはお付き。ダーとずっと一緒にいるのがお仕事で特権ってやつなんだよ。仕方なく、そう仕方なく、ダーとはずっと一緒。一生一緒。レーゼは、弟なんだから、ダーがおうちにいるときだけ。ダーがおうちを出たら、別々なんだよ。今から慣れようね。」
なんて、言うんだよ。
小さなレーゼになんてこと言うんだ!
ほら、レーゼ、泣いちゃったじゃないか?
「にーたまと、レーゼは別々・・・?」
ツー、と、涙が流れるレーゼ。
泣くのを必死に我慢してるのか、泣き声は立てずに、でも、小さくヒックヒック言ってるよ。
「もう、バンミはなんてこと言うの!レーゼはずっと一緒だからね。」
「にーたま!」
もう泣き声を我慢せずに僕の胸に飛び込んで・・・来ようとしたけど、バンミにがっちり抱かれてて、阻止されちゃったよ。
「ちょっとバンミ!」
「げっ、いてて。噛みつくなって。」
レーゼが自分を抱くバンミの腕にがぶり。
あらら、しっかり歯形が。
そういや、いつの間にか、レーゼは大きくなって、ご飯だって、みんなとおんなじものを食べるようになっていたんだよね。それにしても、こんなに小さいのにさすがに天才レーゼ。しっかりバンミの腕をかみ切って、ポツポツと赤い血が。って、ダメじゃん。
僕は慌ててバンミにヒールをかけます。
「レーゼ。暴力はダメだよ。バンミ、痛い痛いでしょ?」
「うぅ・・・だってぇーーー」
「ほらよっと。ダーは小さいから、レーゼが勢いよく飛び込んだら、
バンミがそんなことを言いながら、泣きべそレーゼをそっと僕の腕に抱かせてくれました。
「バンミにぃちゃ、ごめんなしゃい。」
うーん。天使のレーゼは、ちゃんと謝れる偉い子です。
僕が、そんな風に感動して一人でもだえていると、頭を小さな手で撫でる感触が。
「いい子いい子。ダーにいちゃま。にいちゃまは小さくてもレーゼがすぐに大きくなって守ってあげましゅからね。」
・・・・・
えっと・・・・
そんな僕らを見て、プッてバンミが吹き出したよ。
ちょっと、いくら何でも無いよ!
なんで、僕が小さいままの設定なのさ!
でも言ってるのはレーゼ。怒るに怒れない、この複雑さ・・・
「バンミ!」
「ハハハ・・・悪い悪い。ダーだってそのうち成長するって。だけどな、レーゼにそんなこと思わせたのは、俺じゃないぞ。おまえらのパパだからな。」
「は?」
「パパの教育さ。ダーは王子で冒険者で商人だからな。いろんな形でみんなで支えていこう、って教えられてんのさ。それにな、ほら、おまえは成長、遅いだろ?博士が、魔力のせいかもしらん、って言ってたからな。レーゼが成人するまでのどっかで追い抜かれるかも、ってな。そうすれば、レーゼはダーの兄ちゃんだ。本人、その気満々みたいだぜ。」
は?
なんで、レーゼが兄ちゃんになるんだよ!
バンミが言うには、ってか、発信元はドクみたいだけど、肉体年齢に精神が引っ張られる、っていうのかな?まぁ、見た目と精神の年齢は合ってる、ってのがこの世界の常識で、一番わかりやすいのはエルフ族とかなんだけど、見た目が子供なのは、中身も子供ってことみたいです。
まぁ、実際、アーチャなんかは、会ったときから外見が変わっていないように見えるけど、はじめはラッセイと同じ年ぐらいの付き合いをしていたのに、今では、ラッセイの方がお兄さんみたいになってる、のかな?
とはいえ、元々ラッセイの方が冒険者として先輩で、その指導もしてたみたいだから、ってのもある気がする。
ようは、実際の年齢っていうより、立場っていうか、立ち位置の問題なんだけどね。
たださ。若く見えて、実際おつむも若造でも、経験っていうのは消えないと思うんだ。僕は一生、兄としてレーゼを守って生きていくんだからね!そこだけは譲れない。
僕のそんな主張に、バンミは鼻で笑ってます。
そんな態度だと、もう遊んでやらないからな!!
てことで・・・
「レーゼ。こんな意地悪バンミなんて放ってさ、明日は僕と二人で遊ばない?」
「っえ、いいの?あしょぶぅ~~~~」
ああ、天使の笑顔はなんて素敵なんだ。
「ま、レーゼが一緒だったらダーも無茶はしないか。ゴーダンたちには言っておくから、二人で楽しんでおいで。」
上から目線のそんな言葉にちょっぴりムカッて来たけど、まぁ、みんなに言ってくれるのはありがとう、です。
そんなこんなで、お風呂でも、ご飯中も、僕とレーゼのデートの話し合いは、楽しく進んだんだ。
てことで、翌日。
僕たちはトゼを森側に出て、ピクニックです。
初めての二人での大冒険。
いつの間にか、よちよちは通り越してるのかな?
思いのほかしっかりとした足取りで森を歩くレーゼ。
うん。天才。
色々とお話しもしたよ。
レーゼが僕を呼ぶ呼び方は結構まちまちです。
一緒にいる時間が短いからためらってるのかな、てちょっとさみしくなって聞いたらね、なんと、天才だからこその成果なのか?!
おうちでは、みんなが色々と教えているようです。
でね、僕は兄だけど、王子でもある、っていうのが、レーゼの中では複雑なハテナになっていて、自分なりに消化しようとしてるみたい。ダーかアレクか。みんなの呼び方もまちまちだし、兄ちゃん、兄様、どれがいいか色々本人の中でも決まってないんだって。
レーゼは、みんなからいろんなご本も読んでもらっててね、王子様が出てくるおとぎ話なんかも、いっぱい聞いてるみたいです。で、僕の事もそんなおとぎ話の王子様とかとごっちゃになってる、のかもしれないです。ちょっぴり、複雑な気持ちだなぁ・・・
ちなみに、僕はそういうのにはとっても疎いんだよね。レーゼぐらいの時は、もう冒険してたっけ?その前は、色々と、売られたり、とかね。タハハハハ・・・
まぁ、物語を読む余裕とかはなかったかなぁ。
考えてみたら、僕ってひいじいさんのノート以外の読書ってほぼほぼやってない?
養成校だって、本なんてほとんど使わないし・・・・
冒険者活動の一環で、魔物の性質を書いた本とか、悪者のおうちに押し入って書類を接収するため確認作業で読むとか、何か読むってその程度だったかも・・・
でもね・・・
「ほら、レーゼ。このお花の下、茎を食べてごらん。」
「あまぁい。」
「こっちの木の実、食べる?」
「ぺっぺっ、ちゅっぱぁい!!」
等々・・・
森の恵みを色々と教えることはできるんだ。レーゼの尊敬のまなざしに、大満足です。
「あ、とりしゃんです!」
木々の上を優雅に飛ぶのは、なんだろう、派手派手な鳥だね。前世ならオウムとか、そんな感じの色合いで、でもあんなにずんぐりしてなくて、細長い、そうだなぁ、鶴とかフラミンゴとか、そんな体型の鳥が、頭上を飛んでいきました。
「いいなぁ。レーゼもとびたいでしゅ。」
憧れのまなざしが、鳥に向けられてる。
なんだかちょっと嫉妬しそう・・・
なんて、バカなことを考えて・・・
あ、そうだ!!
えっとね。
僕は重力を魔法で操れます。
でも、ちょっとコントロールが、レーゼを楽しませるとしては不安かな?
不安はダメだよね。
でもね、一つ思いついたんだ。
前世のビジョン。
あれ、いいなぁ、って思ったことがあったような、そんな飛行術が!!
僕は、ポーチから、あれとあれを出してっと。
数分後
「しゅごい、しゅごーい!!おそらでしゅ。レーゼはとりしゃんになりました!」
大喜びのレーゼ。
一緒に乗る僕も大満足。
フワフワだぁ。
飛ぶ方向も僕の思惑通り。
フフフ。
レイブンと友達になって最高です。
数羽のレイブンが僕らのお空の散歩を手伝ってくれています。
あのね。
ポーチから取り出したは数本のロープと、ハンモックだよ。
ハンモックの真ん中をちょっと加工して、二人のお尻がそれぞれスポッと入るようにして、っと。バランスを取りつつ、ロープをつけていく。二人乗りのハンモック型ブランコの完成だよ。
ロープの端っこをレイブンたちの足にくくりつけさせてもらってっと。
ふわりと浮き上がるハンモック製ブランコに僕らは奥深く腰掛けて、ゆらゆらと浮き上がります。
想定通りの、レイブン式空中ブランコだ!
レイブンが優秀なのか、ほとんど揺れず、優雅に空の散歩を楽しんで、僕もレーゼも大満足!
「また、にーたまとおそらのさんぽしたいでしゅ。」
ほくほく顔のレーゼと帰宅した僕。
でもね。
久しぶりにヨシュアやゴーダンから、正座でのお説教をくらったのは、悲しいお知らせでした。
ちゃんと、安全には気を配ってたんだけどなぁ・・・
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