第292話 レイブンの能力?

 僕が目覚めて、さらに2日。

 僕は、グレンに呼び出されて、はたまたガーネオの元隠れ家にいます。

 今回は、バンミと二人。

 グレンに騎乗してだと、こうなります。

 本当はラッセイが来たがったんだけどね、樹海では、彼だと心許ないってことで、魔力の多いバンミになったの。



 グレンだと、小屋までなんてあっという間です。


 前回は、小屋が木に戻ったのはチラッと見えたけど、こうやって見るとやっぱり劣化してるのかな?かなりささくれだった感じです。

 で、小屋の扉は開けっぱなしになってる。

 ていうか、上の蝶番が外れかけてるみたいです。


 元々のがどんなだったかわかんないけど、どうも金属の方が朽ち方がひどいかもね。



 小屋を覗くと、中もほぼ色を取り戻した感じかな?

 とはいえ、白っぽいところもあるから、完全じゃない感じ。ペンダントを外して、軽く触ると、色を取り戻すから、どうやら、全部が全部魔力を戻し切れてない、って解釈で良いかもね。


 小屋の中は、がらんとしてます。家具だけが放置されて何年も経ったような感じ。

 グレンが、人間が色々持ちだした、なんて言ってるから、セスの人たちが研究に持って行ったのかも、です。



 小屋じたいは、こんな感じで色をずいぶんと取り戻したけどね、始めに戻した魔導具1つ以外は、白いままです。

 出入りがあるから、若干飛ばされちゃってるかな?

 でも、レイブンがいたところ以外の地面とか、周りの木々とかも、真っ白いままです。


 ペンダントを外して、白い木を触るとね。うーん。

 残念ながら元に戻らないや。


 『自身の魔力を帯びていたものは、戻らんようだな。』


 どうやら中まで白くなっているけど、木なんかは、もともと自身の魔力をもっていて、それが瘴気と同化しちゃったんだって。

 グレンいわく、ていうか、精霊様発の情報みたいだけど、自身の魔力が変質した場合は、魔力も自分自身と一緒だから、元に戻らないみたいだって。

 小屋に使われた木なんかは、ほとんど自分の魔力はなくなっちゃってる。だから、元に戻る可能性がある。タールになるための瘴気は借り物だってことだそうです。

 けど、自分が変わったら元に戻らない。っていうか、元に戻るにはものすごい魔力がいるんじゃないか、って精霊様は考えているみたいです。

 『人間が持っていった魔物のかけらは白いままだろう、と言っておったわ。』

 だそうです。



 自分の魔力か、降りかかった魔力か。

 魔力が降りかかると徐々に自分の魔力に浸透しちゃう。

 そうしてタールみたいになっていく。

 僕だけの目に黒く見えるのが他の魔力が覆った状態で、みんなの目に見えるようになったら同化した後っぽい。

 あくまでも、精霊様たちから受け継いだグレンの感覚を僕が感じた、っていう、伝言ゲームみたいな理解だけどね。



 ま、それはいいや。


 グレンが僕を呼び出したのは、このさらに奥地を見せたいそうです。

 ていうか、なりかけの魔物をいっぱいみつけたってことで・・・



 全部を退治する必要はないにしても、近いところはやっつけちゃえ、って思ったみたいです。えっと、グレンじゃなくてワイズが?・・・ってどういうこと?


 んとね。

 グレンの話によると・・・


 ここらと同じくらい濃い魔力の森に住むワイズたち。

 レッデゼッサたちに捕まえられていた、強い魔物としての彼らは、クッデ村のさらに北にある森に住みます。


 樹海が、魔物の森としてセスの管理下にあるのは知られていることだけど、人の住む地域以外は、規模の大小はいろいろあっても、魔力が濃いんだ。人の地を離れれば離れるほど濃くなるんだって。

 だから人は住めないし、強い魔物のテリトリーになってます。


 つまりは、ワイズたちの住む森は、樹海みたいなもんなんだよね。

 だからレイブンがスズメもどきからロンベになったような、高濃度の水場があるんだし。

 てことで、樹海みたいに黒い魔物、僕の言うタールの魔物も、生まれたりするんだって。

 魔力が濃い場所って人が立ち入るようなところじゃないし、人間には知られてないけど、実際に僕らも昔、クッデ村の奥地でタールの魔物と遭遇したことがある。そのときは頼まれて倒したんだけどね。


 そういう状況の中、ワイズたち、北の森の魔物たちにはね、どうやらロンベたちって、タールの魔物に対しての戦力として考えられているんだそうです。

 なんかね、普通の魔物はタールの魔物には近づきません。

 でも、濃い魔力を撒き散らすからね、知能の低い魔物は引き寄せられるように、タールに飛び込むそうです。ちょうど火に飛び込む虫のように。

 その中でも、強い魔物は自分もタールの魔物になっちゃったりするんだって。

 森が荒れるから、災害っぽくワイズたちには捉えられているみたい。


 そんな中、本能のままに、タールに飛び込む魔物の中で、タールをやっつけちゃう、そんな魔物がいるそうです。それが、ロンベたちなんだって。

 黒く、魔力だけになったロンベたちは、次々にタールの魔物に突進し、同化し、ロンベもタールの魔物も、黒い水たまりになって、消えちゃうんだそう。


 そういうこともあって、ワイズから、レイブンに出動命令が出たらしいです。

 なんかね、もともとスズメもどきのときからワイズの手下みたいなもんだったらしい彼らは、僕と友達になったワイズと、レイブンになった彼らで、意思の疎通が以前よりもずっとできるようになったらしい。うーんよくわかんない。


 あのね、グレンに僕を気絶させるまで魔力を吸ったってことで怒らせて、北の森へと戻ったレイブンは、ワイズに、黒い魔物をやっつけて僕に謝れ、って、Uターンさせられたみたい。

 戻ってきたレイブンに気づいたグレンとも、ワイズの命令を共有し、一緒にタールの魔物とか、なりかけとかを探したんだって。



 「え?そんなことしてレイブンが消えちゃったらどうすんのさ!」


 僕は、びっくりしたよ。

 彼らの言うとおりだったら、タールの魔物とレイブンが一緒になって消えちゃうってことでしょ?


 『一部なら問題無かろう?』


 ?


 グレンの感情を言葉にすると、全部で1つのレイブンは、誰かが特攻して消えても、全体として1が残る・・・・

 ?

 僕の疑問に、グインはあたりまえだろう?みたいな感情を送ってくるよ。

 レイブンは全部で1羽。1羽は10羽にも100羽にもなれる、だそうです。

 ちよっと人間の感覚ではわかんないな。

 けど、魔力の補給をすればどんな大きさにでもなれるし、どんなにも分割できるんだって。

 うーん。



 僕の疑問はそのままに、グレンに乗せられて、小屋の奥地へとやってきました。


 『あるじだ~~~』


 レイブンがいっぱいいます。

 いっぱいが集まって、10羽前後になったよ!


 『見て見て~~~レイブンは強い~~~』

 キャハハハハって笑うみたいに頭に響きます。

 実際にもカ~キャ~うるさいよ。


 で、彼らが示すところを見ると地面に黒い水たまりが!


 『はじめはレイブンどもが浸かるぐらいの水たまりだったが、今はそこまで小さくなってる。昨日の朝だな。』

 グレン曰く、昨日の朝、レイブンとタールになりかけの魔物がぶつかって、ていうか、レイブンの数羽が突進して、やっつけた魔物の一回りでかいサイズの黒い水たまりになったんだって。

 でね、突進しなかったレイブンが順番に、黒い水たまりで水浴びをした?

 どんどん小さくなった?

 今は、目の前のサイズ=グレンの頭ぐらい?まで黒いのは小さくなったんだって。



 『もっと水浴びしたかった~』

 『けど怖い犬が、主に見せるからダメ~言う。』

 『怖い犬。うるさい犬。バカ犬~~~~』

 カ~キャ~ カ~キャ~・・・・


 『うるさいわっ!』

 ワオーン!!


 グレンもうるさいです。


 『あるじ見た~水浴びする~~』


 キャハハハハと言いながら、順番に水に入ってはパシャパシャってするレイブン。


 これが、まさに烏の行水?


 ハハハハ・・・

 1羽あたり数秒で入れ替わり立ち替わり・・・


 水たまりはみるみる小さくなっていき、どうやら水浴びしたレイブンはつやつやが増していってる?


 「魔力を吸ってるみたいだね。」

 僕は、バンミの言葉に小さく頷いたんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る