第291話 家族の中で
目が覚めると知らない天井だった・・・・
て、嘘です。
見覚えある天井でした。
うん。今、お泊まりしているトゼにあるセスのおうち。えっと、公私でいうと私の方です。公はロッシーシさんが住んでるところ。こっちはセスの民の人がトゼでお泊まりする場所。セスの村からとか、各集落から来る人はほとんどこっちを使います。
お国に近い仕事をする人とか、ゲストなんかはロッシーシさんのところ。
なんていうか、セスとしてはロッシーシさんはちょっと浮いてるんです。彼は彼なりにセスのことを大切にはしてるんだろうけど、一般のセスって政治とか嫌いだから・・・
ま、いいや。
えっと・・・
僕は、ガーネオの潜伏していた小屋の跡地っていうのかな?形じたいはあったから小屋、って言っても良いのかな?
そこにドクたちやセスの人たちと、再び訪れてました。
で、そうだ!レイブン!!
僕とお友達になったロンベたちが、小屋を白から元の木造に戻したんだ。
で、
・・・
で?
彼らが小さくなって、僕の魔力欲しいって言って、僕は????
「気がついたみたいだね。良かった。ダーは魔力不足で気を失っちゃったんだよ。そのまま運ばれて、今まで寝てたんだ。もうすぐ晩ご飯だけど食べられる?ちなみに、今日は倒れた翌日、ね。」
僕が目覚めたのを察したらしいアーチャが入ってきたよ。
て、もうすぐ晩ご飯ってことは、1日以上寝てた?
「まぁ、あれは不可抗力だったらしいね。レイブンだっけ?ダーの魔力をありったけ吸っちゃったってグレンに怒られて、北に戻っていったみたい。」
クスッて笑うけど、そうなんだぁ。
もうちょっとお話ししたかったんだけど、しょうがないね。
僕は、みんなの気配がする食堂へとアーチャと二人向かったんだ。
食堂へ行くと、みんなが集まっていたよ。
みんな。
僕の家族たち。
それと、よく見知ったセスの人たち。アーチャの両親とかね。
「ダーにいちゃま!おはよっ。」
おおっ
な、なんて賢いんだ!
赤ちゃん用の椅子(=僕も使ってたやつだっ)から、身を乗り出すようにして手を振りながらそう言うのは、もちろん弟のレーゼ。
彼も、もう1歳は過ぎたもんね。確か1歳半ぐらい?
あんまり会ってないうちに、身体も大きく、そして言葉もしっかりしてるじゃない。うちの
「レーゼ!うん、おはよ!」
僕はそう言いながら、彼に走り寄ろうとして・・・
あれれ?
足がもつれて転んじゃった。
「ほらほら、走らない。まだ魔力は完全に戻ってないから、フラフラしてるでしょ。仕方ないなぁ。」
そう言いながら、アーチャが立たせてくれる。
けど
「にいちゃま、走らず、ちゃんとお座り。メッ!」
え?
「ごはんは暴れない、でしゅ。」
・・・・・・
「ハハハハ、弟の方がよっぽどしっかりしてるな。」
ゴーダンの言葉に、ドッと笑いが溢れたよ。
ん、もう!
僕はかっこいい兄ちゃんでいたいんだけど!
ほっぺを膨らませる僕。
和やかな笑い声が、なんか、つらいです。
「やっ、やっ・・・にいちゃま、おすわり!!」
「はいっ。」
赤ちゃん用の椅子の、手すりをパンパン叩いて、僕は思わず、背筋を正しちゃったよ。ハァ・・・
そうして、晩ご飯は、なごやかに始まったんだ。
えっとね、ここにいるのはナッタジ関係者、ていうか、宵の明星の関係者だけだったけどね。あぁ、えっと、カイザーとモーリス先生はお船だそうです。
管理も含めて、残ってるんだって。
VIP用の港には、アレクサンダー号をちゃんと泊めれるだけの港はあるし、多少のドッグもあるんだけどね。ほら。うちの天才たちが趣味全開に作っちゃったお船でしょ?どうやら、無断乗船者が後を絶たず、ってことで、2人他数名の人間が船で寝泊まりしてるんだって。しかも、ちょっぴり沖に出て、ね。
それでも、いろんな組織から乗り込もうとしてくるようで、各種セキュリティの餌食になってる人多数・・・って、何を作ってるのか怖くて聞けないです。
あ、被害はゼロ、だって。うちの被害は、ね。
乗船しようとした人はそれなりにいるけど、無断で乗船できた人は、未だゼロだそう・・・詳しくは聞かないことにしよう。
まぁ、てな感じで、互いに近況報告しつつ、楽しいご飯は僕らとセスの人たちと、まぁそれなりの人数で楽しんだよ。クジたちがたくさんの成果を持ってきてるらしく、森の恵み豊かでした。
あと、そうだなぁ。バフマがね、たくさんのナスカッテ料理を覚えたそうです。
ナスカッテ料理、どういうのかあんまりわかんないや。
バフマ曰く、植物の使い方が上手なんだって。
野菜に果物、こういうのは、あんまりタクテリア聖王国では調理に活躍しないんだ。我が家は、ひいじいさんのおかげで、出汁文化があるけど、残念ながら、それが限界。モーリス先生がお医者さんだったこともあって、ハーブ的な使い方を各種の草で使い始めたりとかはあるんだけどね。
この国では、タクテリアよりも多種多様な人種もあるってことで、食べ方も色々。肉を食べずに野菜や果物だけでもごちそうが作れる文化もあるそうです。
そんなことを楽しそうに言うバフマは、いつもより良く口が回ってるみたいだね。
ウフフ。バフマは凝り性だからね、まぁ、がんばって!
僕らもいろんなおいしいのが食べられるのは大歓迎です。
そんなお話しをしながらも、ここにはプジョー兄様と彼が連れてきた騎士たちはいないんだなぁ、って、食後になって気づきました。薄情でごめんね。
聞くと、兄様たちは、国賓用の屋敷に泊まっているらしいです。
はじめは、僕もそっち予定だったらしいけど、セスがこっちで面倒見ます、的なことを言ってくれて阻止したらしいです。
そういや、はじめて僕が来たとき、アーチャママのウィンミンさんがそんなことを言ってたっけ?
国賓用の屋敷は、セキュリティもしっかりしているし、かなり豪華だそうです。つまりは、監視の目がしっかり行き届いているってことだね。
プジョー兄様たちだと、そんなことはあたりまえに理解した上で、接待させてあげる事が出来る。生まれたときからそういう教育を受けているんだって。だけど、僕はそんなことは知らない上に、内緒にしたい秘密がたっぷりだろうから、強引にセスで引き取った、ということらしいです。しかも評議員さんじゃなく、長老さんの方で、ね。
このことで、僕は完全にセスの身内、って思われるけど、それでいいってのが長老さんたちを中心とした結論だったそうです。
決闘騒ぎで、セスは国を捨てて僕につく、的なことを言ってたけど、あれはあの場のノリではなく、もともといつでもそうなっていいって話し合っていたんだって。
セスの立場は特殊。
セスの矜持を保てるならば、正直国は関係ない。
もともと、そんな気質が高いのが、セスという種族なんだ、って笑ってるよ。
で、彼らにとって、僕は、とっくにセスの子、なんだって。アハハ・・・ハァ・・・
今更ながらに、そんな裏話を聞きつつ、驚くやらあきれるやら、感謝もしたし・・・
そして、そんなセスをあたりまえに受け止める、宵の明星のみんなと・・・
ご飯を食べて、団らんしつつ、みんなを見るともなしに見る。
たくさんの笑顔と、何気ない会話。
セスも宵の明星も、みんなみんな、いつの間にか、僕の大事な家族で・・・
そんなみんなに囲まれて、笑顔が溢れている中、うとうとしちゃう僕。
胸の奥から安堵と暖かさがこみ上げてきて、それをおねむのぼんやり頭で感じている。
僕の髪を触るのが大好きなレーゼに頭をいじられるのを感じながら・・・・
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