第284話 再び小屋へ

 2日ほど、ナザたちとトゼ近くの森で狩りをしたりして、楽しく過ごした後、ゴーダンとバンミ、ドクと僕で例の小屋へと向かったよ。

 僕らだけなら、早いからね、1日で前回も通ったセスの集落まで行って、お泊まりし、翌日早朝から小屋に向かって、夕方には到着です。

 セスの集落では、僕らが帰った後のことを聞いたり、今後のことを話し合ったりしたんだ。

 

 それによると、小屋の周囲はドクの結界に阻まれて見えないけど、その結界の外に当たる部分は、すでに白い物体は風やら何やらのために姿が消えているんだって。


 今までの研究で、白い物体は魔力のない状態の物質だってのはわかってる。で、それが魔力を再吸収するってことはないんだけど、なんていうのかな、砂で出来た物体みたいになっちゃって、たとえば大きな木だって、白くなったら、風に乗って粉状に飛ばされちゃう。うん。ちょっとした刺激で粉々になっちゃうんだ。

 だから、タール状になった部分は、きれいに掃除されたみたいになってる。土やなんかも吹き飛ばされた後には、普通に魔力を帯びた通常の土が姿を現して、そうなると、魔力は再び空気中にも含まれていく。


 たった1旬もするかしないかで、木や草はなくなっちゃってはいても、大地や空気は元通りのようです。

 思ったより早いね。

 ていうのは、多分、ホーリーの力が強ければ強いほど、元に戻るには時間がかかるし、魔素って言うのかな?周囲の魔力が多ければ多いほど、元に戻るのは早いってのが、今までの実験とかでわかってるんだ。

 こんだけ早いのは、それだけ樹海は魔力が強いってことだよね。

 わかってても、現実として突きつけられると、やっぱりすごいんだなぁ、って思います。



 そんな話をして、これだけ魔力が濃いと、確かに危険だねって話になっちゃいました。

 白くなった小屋だけど、あの辺りは逆に魔力がなさ過ぎて危険だねってことも話します。

 魔力が多くても少なくても人体には厳しい。

 これは空気中の酸素が多くても少なくても、人体に厳しいのと同じだと思う。


 

 セスの集落で何人か人数を追加しつつ、小屋まで来て、結界の中に入った僕ら。

 当然、ドクとか僕と一緒なら結界の中に入れるんだ。ドクの隠れ家と同じだもん、ちゃんと入れる人がいるようにはセッティングされているんだよね。



 結界の中だったからか、それともそれだけ瘴気とホーリーが強く反応したからなのか、結界の中は周りと違って、白いままでした。全くと言って良いほど変わっていないその辺りは、当然魔力がほとんど無い地帯。


 今ここに来た人は、それなりに魔力が多い人ばっかりだけど、この白い世界だと、魔力がガリガリと削がれていくために、長時間の滞在は厳しいね。

 とはいえ、僕とドクはある程度大丈夫。

 でも、さすがのゴーダンも、あとは一緒に来たいって言ってたセスの人たちも、ちよっとばかり荷が重いって感じだなんだよね。


 そんなこんなで、小屋に向かうのは、ドクと僕だけにすることにしました。


 僕とドクは自分にを纏わせます。



 あのね、実はこの白い世界で動くには、この技術が必須、ってことがわかってるんだ。純粋な魔力で防護服みたいに身を守る。

 すると周りの白いのは、その純粋な魔力を吸おうとするみたいに持って行く。

 持って行かれるたびに、ていうか、吸われる魔力を常に補充することで、身体を保護する、っていうのが正しいのかな?そんなだから、常に吸われる分を補充できるだけの魔力量が必須って訳です。


 しかも、普通は魔力って属性を帯びているんだよね。

 その属性は髪に出るのは知られるところ。

 人は、魔力を持っていて、その魔力は全身に浸透している。生まれながらにね。ただし、それを積極的に使うには、魔力の通り道を通して外に魔力を出せるようにしなくちゃならない。

 生まれながらに持っているものだから、その影響は生まれながらに身体に浸透しているんだけど、それが顕著に表れるのが髪の毛で、だからこそ、赤ちゃんであっても毛が生えれば、その子の持つ魔力量だったり属性だったりが誰の目にも顕著になるんだ。

 つまりは、基本的に誰でも属性がある。てことは、純粋な魔力ってのはすでに持ってる属性に染め上げられてるってことでもあるんだよね。


 僕が、いろんな属性を持っていて、そのためにところどころラメで色=属性が強く出つつも、全体的に夜空のように黒っぽいのは、いろんな属性が合体して黒っぽくなっちゃったってことなんだって。絵の具でいろんな色を混ぜちゃえば黒っぽくなっちゃう、あれです。


 でね、僕は、っていうか複数の属性を持つ人は、その属性を別々に使えるんだよね。特に意識しないけど、それって、魔力に発現したい属性を乗っけてる、らしいです。で、その乗っける基礎の魔力そのものってのは、どうやら属性がない魔力で、それを学者さんたちは「純粋な魔力」って呼んでるんだって。


 多属性持ちの人は、だから純粋な魔力は無意識では使っているハズなんです。

 僕の場合、普通に無属性がプレみたい。無属性魔力にそのときの望みの属性を乗っけて、魔法とする、って感じ?

 普通は、持っている属性の中でも得意なのが自然に身体を巡ってるんだそうです。

 で、別属性を持つ人でも、その基本の属性以外はかなり威力が落ちる、らしい。

 一度、得意の属性を魔力から外し、別の属性を乗っけるっていう過程をを踏む必要があるからで、その各過程で魔力が霧散する事が原因だとか。


 ただね、僕みたいな例外は別として、こういう純粋な魔力の状態っていうのは、普通は意識しては使えない、ってことのようです。

 属性を変えたり複数の属性を魔力に乗せるとはいえ、自覚的に出来ないし、純粋な魔力ってのは外に出すのは簡単じゃない、ってこと。

 ちなみに僕は、さっき言ったみたいにプレが純粋な魔力なんで、身体能力を底上げするように纏う魔力だって、防御に自分の周りを囲む魔力だって。この純粋な魔力だから、今やってることは、別に難しくないんだけどね。

 ただ、ちゃんと基本属性がありながら、同じようにやってるドクは、正直化け物級だよね、って思います。



 何度か、ホーリーで白くなった場所を作ったことがあります。

 それで、魔力が持ってかれるのはすぐにわかったし、その対処法として、自分の周りを魔力で囲むことで、その魔力を犠牲に自分の身体は守れるってことは種々の研究でわかってきました。

 ただ、これが僕だけ異常にこそげないっていうの?減ってく魔力が少ないことに気づいたんだ。

 はじめは魔力量の問題で、へばるのが遅いのかな、って思われてたんだけどね、そもそも減らされる魔力の量が一人だけ少ないってわかったんだ。

 その理由が、属性を帯びていない魔力、だったわけ。

 この辺は、始めてホーリーを行ったときから、ずっとセスの研究者の人とかが研究してわかった事です。


 これがわかって、純粋な魔力で身体を覆う方法ってのもいっぱい研究されたんだよね。てか、今でもされてている。

 現状でわかってるのは、複数属性の人が属性をチェンジさせる過程でそんな魔力を体内で産み出しているってことと、それを外に出すのは至難の業だってこと。

 ドクをはじめとして、片手の人数しか今はまだ成功していないんだ。


 ね、ドクがどれだけすごいかって、わかったかな?


 ちなみに・・・・


 ここにいるメンツでバンミだけは裏技で纏えます。

 えっとね、僕の魔力を操作するその絶技の応用です。

 僕に触れて、僕の魔力をコントロールするのはちょくちょくやってる僕らの魔法の使い方なんだ。

 僕はいろんな魔法を使えるんだけど、なんていうか、コントロールが苦手なんだよね。そのコントロールを担ってくれるのがバンミ。他にもアーチャとかもできるけど、バンミが一番上手です。

 でね、僕の魔力をバンミがコントロールして、バンミまで覆うの。

 そうすれば一緒になって動けます。

 それどころか、彼の力を使って、ここの全員を覆うことが出来るかも。

 ただ、その使う魔力は僕のでしょ?

 当然、一人なら2倍二人なら3倍の魔力が必要になる。ううん。僕は身体が小さいからね、それを考えるとまだ身体が完成していないバンミでさえ僕の2~3倍の魔力が必要だろうね。

 てことで、費用対効果を考えて、却下になりました。


 そういうわけで・・・・


 白い世界の調査は僕とドクに任されたんだ。


 にしても・・・


 前を行くドクの表情が厳しいです。

 その目は、ジッと小屋の前の魔法陣に注がれていました。

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