第283話 今後の話

 兄様たちが到着してすぐのお昼ご飯は、どうやら、ここのお仕事を僕から兄様へ引き継ぐ、っていうそんな式典とプラスしたものだったようです。

 僕が滞りなく勤めを果たしたっていうのを、こっちの国の人と、我が国の人とで確認し、僕は無事お役御免になるっていう、そんな式典。

 とっても簡易にしてくれたのは、僕がまだ成人前だからってこともあるらしい。

 で、両国仲良くしようね、っていう、お昼ご飯を食べるパーティーが開かれ、僕は、というか僕の一味(?)は、ご飯ありがとう、事後よろしく、って出て行く。まぁ、ここまでが、式典のようでした。

 ちなみに、両国の外務官僚が互いの国のやり方とか、考え方をああでもないこうでもない、とすりあわせて、この形になったんだって。決めるまでには、実はものすごく時間がかかっていて、僕がトゼに着く前から話し合っていた、なんていうんだから、裏方さんには脱帽です。

 あ、僕が未成年っていうことで、いろいろ端折れて助かった、なんていうお話しをゴニョゴニョって耳打ちしてくれた官僚さん、お役に立てて何よりです?

 フフフ。



 ご飯が終わって、僕の下の貴族ってことになっている、宵の明星のみんなとは、晴れて本当の意味での合流です。

 僕も、他のみんなもかたくるしい服は脱ぎ捨てて、いつも快適冒険者ルックに大変身。

 ママや残ったみんなとも合流・・・って、ずるいなぁ。

 先に来てたパッデたち商人組と合流して、トゼでも評判のご飯屋さんにみんな、連れてってもらったんだって。


 「いやあ、船でずっと揺れてたから、地上の飯がこんなにうまいなんて大感激だったよ。」

 僕が窮屈なお昼ご飯の間、こんなに楽しかったって自慢げに話すナザに肘鉄を食らわせたの、僕は悪くないと思うんだ。



 今後の話。


 僕の任務って、もともとメインが、兄様が到着するまでに、レッデゼッサの一味を我が国に連れてくる許可を得るための根回しをするっていうものだったんだよね。

 はじめはレッデゼッサたちを捕まえられるように情報収集とかもできたらいいね、ってことだったんだけど、なんだかんだで捕獲までできました。

 さらには、南部騎士の合流って偶然もあって、トゼまで連行できたしね。

 この国から連れ出すには、トゼに連れてくることは必須。

 幸いここまで、兄様が到着するまでに出来たんで、いろんな意味で、時短になってます。本来ならレッデゼッサたちを見つけて捕獲からの連行、は、兄様の連れてきた騎士や宵の明星の仲間たちと一緒にする予定だったんだから。



 とはいえ・・・


 「せっかくきたのにやることなぁい!」ってナザが文句言うのも気持ちはわかる。わかるけど、それは贅沢だというもの。ニーに説教食らうのはあたりまえ。

 なのにね、

 「身体がなまる。森へ行こうぜ!」

 なんて、僕を誘うんだもん。

 だからさ、そういうのは大人たちに許可をもらってきて!


 大人=成人してるってことで、ナザは言いやすい相手でもあるクジに言ったようです。そうしたら、やっぱりクジは大人だね。ナザの首根っこをつかんで、大人たちが集まってるところへ連れて行ったよ。

 なぜかそれにニーと僕も巻き込まれました。

 このメンツ、何もしなくても警戒されるんだから、許可なんて無理だって。


 「ナザが暴れたいから、我々で森へ行く許可が欲しい。」

 いやいや、ドスレートすぎですよ、クジ兄ちゃん。

 「お、おれじゃねえよ。ダーが、な?」

 「はぁ?僕のわけないじゃん。だって、ちょっと前まで樹海だったんだよ。」

 「そうよ。ダーちゃまは良い子なんです。そんな暴れたいとか言うのはナザだけよ。」

 「さすがに、樹海は無理でも、ちょっとぐらい森に入って良いかなと思って。ダーがいれば迷子にはならないだろと、連れて行こうかと。」

 「呼べばグレンちゃんもいるんでしょ?久しぶりにスリスリしたいなぁ。」


 なんか、ニーの目的って、グレンなの?

 で、絶対クジは自分も動きたいんでしょ?

 かく言う僕だって、知らない大人たちの目を気にして、王子として気を張った仕事なんかじゃなくて、みんなと気兼ねなく狩りをするのはとっても楽しみなんだけどね。


 ま、僕ら4人のそんな思惑は、大人たちにはわかっているようで。


 「おまえら、なんでこんなナスカッテなんて遠方まで来たのかわかってんのか?遊びじゃねぇぞ。」

 大親分=ゴーダンは、腕を組んでちょっぴり怖い顔をします。

 そりゃ、ねぇ。

 最終的には連行して、タクテリア聖王国へと引き渡すっていうお仕事は依然として残っている。


 とはいえ・・・


 「日帰りだけだ。夕飯までには帰って来いよ。クジ、ニー。二人を放置するなよ。二人がやり過ぎたらおまえらも連帯責任な。」

 って、どういうことだよ。ナザはともかく僕を問題児扱いしないでよ。


 「わかってる。明日から出発まで、行く前と帰ってきたらちゃんと報告するよ。ダーにも無茶はさせない。」

 なんて言ってるよ。クジ、ちょっとひどくない?

 ていうか、毎日森に入るつもりなの?


 「プジョー王子の折衝はしばらく続くじゃろ。他の件もあるしのぉ。アレクよ。ガーネオの小屋の件じゃが、セスを連れて儂も入る予定じゃ。案内を頼もうと思っとるから、グレンとアーチャともども、そっちを優先して欲しいのぉ。」

 僕らのやりとりを目を細めて見ていたドクが、そんな風に声をかけたよ。

 って、また樹海に入るの?うへぇ。


 「おれたちも・・・」

 というナザの言葉はゴーダンの「おまえらはダメだ」って言葉にぶった切られたよ。

 そうだね。

 樹海は、魔力濃厚。自身の魔力が多くないと、倒れちゃうよ。

 ナザたち3人は、残念ながら耐性、ないよね。

 その辺のことは、3人ともわかってる。

 ナザだって、僕が行くなら一緒に!って気持ちで言ったみたいだけど、すぐに樹海へは自分たちは行けないって事実を思い出したみたい。素直に・・・とはいえ「チェッ」って小さく舌打ちはしたけれど、素直に引いたよ。



 ドクが言ってたみたいに、プジョー兄様は僕がお願いしたレッデゼッサたちの身柄の件だけじゃなくて、ついでにってわけじゃないけど、多種多様の外交交渉をすることになっているんだそうです。

 まぁ、プジョー兄様ほどのVIPが海を渡って別大陸の国を訪問するなんてのは、超貴重な出来事で、両国の外交官はもちろん、経済を司る各種官僚も、人材やら軍事を司る人たちだって、話すことは山のようにあるんだって。

 普段はそういうことを、官僚たちがやってるけど、為政者どうしがそれについて話すことは、それが決まった線路を踏襲するだけだとしても、とっても意味があるそうなんです。



 ま、僕には関係ない話かな?

 国も人もみんな仲良く出来ればいいなぁ、とは思うけど、具体的に何をどうすればいいかなんて、僕はわかんないし、わかろうという気も無いからね。


 どっちにしても、プジョー兄様が僕らの船に乗ってきた以上、僕らの船で連れて帰らなきゃ、ね。てことで、兄様のお仕事が終わらなきゃ、僕たちも帰れないんです。


 しばらくは、ここトゼを拠点に、狩りをしたり、商売をしたり、みんなでワイワイ過ごすことになりそうです。

 あと、セスとも、ね。

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