第275話 捜査団って・・・
どういう話がその後あったかは、ちょっとだけロッシーシさんに聞いたけど、結局のところ、僕が魔法を使えるのか、もし使えるのならどの程度か、で、評議員さんたちの意見がいろいろだったんだって。
人の意見で僕の魔法のレベルが変わるはずないのにね。なんでそんなことに時間がかかるんだろう?不思議です。
とにかく、僕が、この国の(当然魔法の力が優れた人がいっぱいいる)騎士や兵士たちがさじを投げた小屋の捜査に役に立つかどうか、ってのが、第一の問題だったそうです。
まぁ、自分のところの兵力で諦めたものが、異国のしかも子供の僕が解決できるかも、というのは、あんまり認めたくない、という、プライド的な話から否定してるだけの人がたくさんいたようです。
もう一つの議題?なんだけど・・・
僕を使えと言った、タクテリア聖王国の王の思惑をどう読み解くか、っていうのも、かなり議論を長引かせた要因だったんだって。
僕が、養子だっていうのは、みんなの知るところ。
この後すぐには、本物の本物、陛下の孫で、次期皇太子間違いなしのプジョー兄様が来るのも知っている。
この関係とはいかがなものか。
そんな話が飛び交ったらしいです。
実際のところ、僕とプジョー兄様は仲良しだし、なんだったら、今回の陛下の提案=僕の貸し出し って事に対して、アーチャなんかは、兄様に知らせてキレられたらイヤだから、内緒にしてたんじゃないか、って推測するぐらい、僕に甘々です。
でもね、それは当事者だから言えること。
僕が王家の人になったのって、僕の髪の毛から僕が魔法の資質に優れているって理由で青田刈りっていうのかな?いろんな貴族とか、外国勢とかが、拉致して、良いように使おうとするのを防ぐため、だったんだよね。さすがに王家の子供だってなったら、自国の貴族だけじゃなくて、他国のトップだって簡単には手が出せない。
まぁ、うちの王様とか、その家族とかが、おんなじように僕を使おうって考えるような人だったら別だけど、うちの保護者たちはそれは大丈夫だろうって判断して、自分たちも僕の周りで貴族になる形でさらに強固に守ってくれて。まぁ、そうやって、王子の僕が誕生したわけ。
もちろんそんな裏話は、公にはなっていないから、それはもうたくさんの推測がされています。
やれ、陛下の隠し子だとか、父様=皇太子の隠し子だとか、びっくりなのはプジョー兄様の隠し子説まで。プジョー兄様と僕の年の差は8歳なのにね。この8歳っていうのが、僕が幼く見えるためにブラフじゃないか説まであります。失礼なっ!
そんなことだから、当然、遠く離れたこの国での推測はまぁ、色々みたいで・・・
セスと仲良しだから、実は誰かこの国の有力者の落とし胤では?説まであるそうです。ドクの子説には苦笑するしかなかったよ。
でね。今回の話し合いで、僕を捜査に駆りださせようとする王の意思は、本当に僕が役に立つと思ったのか、もしくは体の良い僕の命の抹消か、なんて、真面目に話し合ったらしいです。
理由はわからなくても、やむを得ず王家に受け入れた僕を、不幸な事故で亡くすため、そして、王子まで貴方の国のために働けって言うぐらい手を貸してますよ、っていう言い訳もついでにつけて。そんな妄想な説を声高らかに言う一派が一定数いたのだそうです。
びっくりだね。
そんな王に利用されるのは、まぁオブラートに包まず表現すると、むかつくから乗ってやらない、なんて意見も(もちろん発言の時はオブラートに包んでだったみたいだけど)、それなりに支持を受けてたっていうんだから、あきれるよね。
何はともあれ、いろんな意見が出尽くして、結局は僕を捜査に連れて行く。陛下が望んでいる可能性のある僕の死っていうのは、絶対に発生させない。役に立たないようなら、さっさと引き上げて、ダメだったってことをプジョー兄様に突きつける。ダメだったけど、あなたの国の望みは叶えてあげる、みたいなスタンスで応対できるだろう。犯罪者引き渡しは、サルムの事件で決まってるし、自分たちに負い目はあるが、そこへのちょっとした巻き戻しに使えるだろう。
・・・・だそうです。ちなみに期限は兄様たちが到着するまで。
ったく。ダメ元での捜査っておもってるだなんて、かなりむかつく~~~
絶対、陛下は親切で僕の協力を提案してるんだと思うし(まぁ多少、自分が優位に立ちたいみたいなのはあるのにしてもね。)、僕だって、小屋を調査できるようにお手伝い出来ると思うんだ。捜査できるように、瘴気から守ったり、危ない瘴気を消したり、ね。
いいよ、協力する。
ダメ元でいる人たちを、あっと言わせたいもんね。
疑ってごめんなさい、って言わせてみせるもんね。
プジョー兄様に、よくやったって褒めてもらえるぐらい、安心安全にお手伝いするんだいっ。
てことで、こっちがOKして、捜査班が結成されるまで4日。
さらに、セスの村を通って、件の小屋に一番近い集落まで、さらに3日。
そこでセスの戦士数名と合流。話し合いとかで、2日の足止め。
て感じで、捜査の人員は確定です。
あ、ちなみに、どんなメンバーかっていうと、このチームの隊長さんは、あの議長さんのところの偉い戦士長ジークンさん。当然獣人さんです。魔法は使えないけど、耐性は強いらしい。うん。獣人さんは魔法が使えないってことになってる。けど魔力が無いわけじゃなくて、体内外を強化するのに魔力が使われている場合が多い。このジークンさんはその代表だね。
この世界では、身体能力を強化したりっていう魔法はないんだよね。ただ、普通は魔力があれば、自然に強化される。人間は基本的には魔力の通り道っていうのを通すんだけど、それによって体内に魔力が巡るようになるんだ。魔力って、なんらかのエネルギーっぽくて、それが循環すると、もともとの体組織は崩壊しかける。それを防ぐように体組織は組み替えられるんだって。
子供の身体から大人の身体へ。魔力に壊れる身体から、魔力で強化される身体へ。
てことで、やっぱり魔力が多いと、身体は丈夫になるし、身体能力も上がるんだ。とはいえ、この魔力は有限で、人によって差が出来る。魔力を外に出すのが得意なら魔導師へ、身体を強化するのが得意なら戦士へ。どちらかに能力は傾くみたい。
てことで、それなりの魔力を持っているジークンさんが、その魔力を身体能力に全振りしているって考えれば、戦士長ってのにも頷けるわけです、うん。
今回の捜査団は、ジークンさんを筆頭として、どちらかという魔力に長けたっぽい人が全員で約20名ほど。といっても、戦闘要員はその中の半分弱だそう。他は文官・・・と、研究者?
それにここの集落で案内のセスの戦士が2名。
他には、僕とアーチャ、そしてグレン。あ、グレンはまだ合流してません。ていうか、気づかれないようについてきてます。
それとディルが来るって言ったけど、場所が樹海だからね。ディルの魔力では無理だって断りました。レッデゼッサたちの見張りをお願いしたよ。リークなら来ても良かったんだけど、彼を連れて行くとディルがすねちゃうから、彼もお留守番。
てことで、南部騎士からはサリーとベイズっていう魔導師が2人ついてきてます。
南部の騎士は、言っても開拓騎士団だからね。それなりにすごい魔導師も揃っていて、OKな魔力を持つ人が何人かいたけど、前世で言うじゃんけんみたいなので同行を勝ち取ったのが、この二人なんだって。
そんな感じで、すでに決まってから10日ほどもかけて、のんびりと樹海を進みます。
こんなゆっくりな移動は、養成校の修学旅行、じゃなかった、遠征訓練と変わんないよなぁ、なんて、ちょっぴの飽きながら、僕たちはガーネオの元隠れ家へと向かったんだ。
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