第265話 騒動の影響
「のうライライ。なぜこの者を儂が捕らえさせたか、そしてなぜ儂が殿下に謝罪を行ったのか、おまえに分かるかの?」
ライライさんにそう言ったパリミウムさん。
ライライさんは、ちょっと考え込んでしまったけど、ゆっくりと周りを見渡すと言ったよ。
「サラムさんは、たかが一族に連なる、評議員ですらない平民ですわ。一方殿下は一国の王家のご子息。貴族よりも上の権力者です。評議員って他国の貴族みたいなもの。身分に差はないとはいえ、私たちの心情はそういったところ。評議員が貴族、その家族は他国だったら平民。外交上はそういうものだと思います。それが貴族より上の王族の方に暴言を吐くんですもの、国によっては即刻処刑でも不思議じゃありませんわ。ってことは、あら、私ったら、殿下にとっても失礼なことをしていたのね。あの・・・・謝罪させていただいても?」
ライライさんは考え考え、ゆっくりとそう言ったんだ。最後は僕に、ちょっとどもりながら、上目遣いで。美人さんだから、周りからかわいいって感じの感情が湧いているのが分かったよ。
うん。かわいい・・・かも。でもさ、僕の方がちょっぴり・・・ということにしておこう、うん、ちょっぴり小さいからさ、なんていうか、上から上目遣いされると・・なんていうか、ちょっぴりホラーな・・・なんて思っちゃうのは失礼なんだろうけど・・・・ほら、ねぇ?
てことで、思わず、僕、半歩ほど下がっちゃった。
それを見て、サラムが文句言いかけたのをセスの戦士に頭から押さえつけられていたのはご愛敬。
「えっと・・・謝罪?」
「はい。平民が王族の方に声を掛けるなんて、それも結婚を申し込むようなこと・・・・」
「あ・・・アハハ。そうかも、だねぇ。ちょっとびっくりだけど、まぁ、お国柄はあるんでしょ?それに僕は、ほらみんな知ってるんでしょ?養子だしね?だから気にしてないよ・・・です。」
アハハ、ちょっと砕けた口調過ぎた?アーチャからちょっぴり非難の視線が来ちゃったから、慌てて、「です」を付け加えたけど、なんだか余計にあきれた顔をしているよ。
コホン、って軽く咳払いをしたアーチャ。
僕を背に庇うように前に出て口を開いたよ。
「失礼ながら口を挟ませていただきます。ご来場の皆様にもできればご静聴願いたい。私はこの国のセスとして生を受け育って参りました、ここが父ランドル・ラドリアムおよび母ウィンミン・コサッシュゲンの子アーチャと申します。未だ100歳に至らぬ身にて、いずれの姓も受け継がぬ若輩ながら、縁あってここにおられるアレクサンダー・ナッタジ・ミ・マジタリオ・タクテリア様の近衛としてその生涯を共にする所存。殿下の成人と共に、筆頭家臣たるゴーダン・エッセリオ子爵家の養子となりて、正式にかの国に属する予定の者です。ゆえに私は両国の架け橋とならんと欲し、また私だけではなく殿下におかれましても、正式にセスの民とは、契りを結んでおりますゆえ、一層の両国の結びつきは必至。国の体制の違い故、人心の乖離はありましょうが、ここにいる皆様には、外交の重要性を熟知していると思っておりました。」
ザワザワ・・・
場がざわめく。
ってか、僕の心もびっくりしてザワザワしているよ。
何それ?アーチャってば本当に近衛になるの?てか、ゴーダンたちの養子?何それ?聞いてないんだけど?
ウィンミンさんやランドルさんの方を伺ったら、なんていうか、知ってたのかな?平然と、ううん、大きくなった我が子を慈しむ、みたいな目でアーチャを見てるよ。
一息ついて、周りを見たアーチャは、とっても堂々としていて、まるでプジョー兄様も真っ青だ。
「さらにここは、セスがホストとして用意した社交の場。表向き身分はないとは言え、実質この国の
ぶっちゃけすぎな言いようだけど間違っちゃいないよね。
僕、っていうか、対タクテリアの方針を決定したり、なんだったら僕と懇意になって優遇してもらおうと立ち回るなんてことを企んじゃったりしてるんでしょ?まぁ、単なるパーティー好きもいるかもだけど。
だからこそ僕はタクテリアを背負って、一応は王子らしく振る舞おうなんて、柄にもなく頑張ろう、とは考えていたんだけどねぇ・・・・
「にもかかわらず、ホストに対してだけではなく、他国の代表に対しての、
視線はパリミウムさんに向かう。
ほう、っと、パリミウムさんは言うと、一瞬視線を鋭くした。けど、すぐにまた跪いたんだ。アーチャ・・・を通して、後ろの僕にね。
「確かにアーチャ殿の言うとおりじゃ。私的にこの場を流用したこと、平に謝罪する。さらに、我が娘かわいさに、殿下に取り入らせようとしたこと、今までのすべてに謝罪を。」
?
なんだ?なんていうか・・・大事になった感じ?パリミウムさんの様子もなんていうか、さっきと違って、おごそか、っていうか、みんなに見せてるみたい?
いやいや。これはちょっとどうしたらいいかわかんないんだけど・・・
社交のお勉強は苦手なんだよね・・・・
「殿下。かの者の謝罪を受け入れますか。」
「え?」
「それとも、謝罪を拒否し、お兄上に進上して、外交問題にされますか?さすれば、最悪は国交の断絶もあり得ますが。」
は?
国交の断絶?
たかが、僕をけなしたことが原因で?
僕は、こんなことを言ってるアーチャに、びっくり顔を返すだけだ。
「そうなりますなぁ。してそうなったら、我々セスも身の処し方を決断しなければなりませんな。」
僕の驚きを見て、もともと優しい雰囲気のルックァばぁちゃん(=セスの長老の一人でここに参加してる人)が、いつもよりさらに優しく目を細めて、でも、またまたびっくりな発言をする。
セスのほとんどの人はそうですね、みたいな感情を出してるけど、いったいどういうこと?てか、ロッシーシさんだけは、アチャー、って顔をしつつ、焦ってるよ。
「セスの処し方?」
「ホッホッ。坊はもうセスじゃて。この国よりもセスの子の方が大事ゆえなぁ。そもそもそこの痴れ者が言ったように、この国には国の概念が薄いのじゃよ。ゆえに、ナスカッテと一線を画し独立してセスとして国を興すもよし、坊の国に組み入れてもらうのもよし、じゃのう。以前より、かような話は出ておったが、まぁ良い機会ではあるかの?」
ルックァばぁちゃんの発言に場はさらに驚きの声が上がった。
そりゃそうでしょ。だって、セスがナスカッテ国から出ちゃったら、国力・・・軍事的な国力はダダ下がりじゃん。それにこの北の大陸。2つの国が建った事なんて、歴史上ない・・・はす。
「殿下。この騒動は、それだけのことなんですよ。自覚できましたか?」
やれやれ、といった感じで、凍る場にふんわりと述べたのはアーチャパパのランドルさんだった。
何気にこの人、心臓強いよね、なんて思ったのは、逃避だったのかもしれない・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます