第261話 トゼの都 ~町の散策~
何度かナスカッテ国を訪れた僕だけど、ほとんどはパッデ村にセスの村、セスの集落。うーん、全部森の中ばっかりだ。
はじめてトゼを訪れたときに逃げるように、門を通らず脱出したこともあって、ほとんどトゼは知らないんだよねぇ。
昔来たときは、森の門から入って、冒険者ギルドに直行。
あとは、宿屋とレストラン、そしてドクのおじさんのお屋敷付近から、森へダッシュ。
ハハハ、全然、知らないって言っても良いと思う。
そんな僕は、アーチャと二人、初めてのトゼの町中へと繰り出します。
馬車とか、ちょっとした道中でも見たけれど、木を中心とした建物は、なんだかファンタジー。
道の敷石だって、石だけじゃなくって、木を敷き詰めて模様を作っていたり、とにかく木が多い。
それに建物は木でできてる、ってだけなら、普通だけど、生きてるんだよ。だって、緑の葉が茂ってたりするんだもん。丸太から枝やら葉が生き生きと茂ってるのは。不思議としか言いようがないね。
ファンタジーだなぁ、なんて言っても、残念なことに、支配層たるエルフっぽい人はあまり歩いていないし、前世の地球人なら喜びそうなケモ耳も町中で堂々と歩いているわけじゃない。
まぁ、獣人の人たちはよく見ると早足で道の隅っこを通り抜けたり、と、それなりには目にするのだけれど・・・
僕が泊めてもらうお屋敷は、かなりの高級住宅地っぽいところにあるんだ。
ちなみに海から入る、その港には厳重な関所っぽい、入管所?みたいな建物があるし、その建物付近には、船でやってきた人のための宿屋が連なっている。当然、そのための食べ物を扱う店だったり、雑貨屋さんもあったり。
その内側でまず目に入るのは、元老院の建物だろう。
元老院の会館ともいえるそこは、国の重鎮が集まる場所。
各議員が連れてきた騎士たちも駐屯できるよう、そんな建物も隣接しているし、彼らが寝食できる建物もずらりと並ぶ。
そういう、いわゆる高官用の建物が並んだ内側に、議員たちの私邸が並ぶ一角があるんだ。
元老院の会館に近い上、海側の方が高級地ってことなんだろうね。
多くの議員の私邸やら別荘やらが集まる一角の外側は、一般人の住居、とでもいうんだろうか。
海側ほど高級な家が並び、徐々にグレードが落ちつつ放射線状に家々がたたずむ、そんな感じで住宅街は形成され、またその住宅街の中に、日常使いのするパン屋だったり、雑貨屋、なんてものがチラホラ混ざるようになる。
やがて、その町並みは住宅街から商店街へ。
さらに森側に行くと、冒険者ギルドやらなんやら。
ちなみに、商業ギルドは海の方の官舎が並ぶ辺りにあるそうです。
多くの商人が船を使うので、そのためかな?
冒険者ギルドから森側は、冒険者やら、森で生活する人のための店が多いかな?武器やら防具の店、食べ物やさんもどっちかっていうと屋台だったり。
宿屋は割とピンキリです。
冒険者はお金のある人もいるしない人もいる。
船で出ない限り、ここらに来る冒険者の多くは、森の魔物が目的だったりするから、高級宿もあるんです。
てな感じで、実は森側にも商店街は連なってたりします。
さらには、こちらの商店街では、森からやってきて、いろんな物品を持ってくる人たちから商品を買ったりもしていて・・・
魔物なんかは冒険者ギルドで素材を買ってくれたりするけど、そうでないものなんかは、店を吟味すればここらで店出ししている人たちに売った方が良いんだって。
本来ならば、物の売り買いとかは商業ギルドを介するんだけど、森の中には隠れ住んでいる人たちもいっぱいいる。パッデ村の人たちのようにね。
ギルドを通して、国に目をつけられるより、直接何も聞かずに買ってくれる、こういう商人たちはありがたいんです。
商人だって、ここでゲットした商品って、実はありがたかったりするんだって。
割と安価で手に入れられる上、他所では手に入らない物もあったりするしね。
国や商業ギルドからは、多分お目こぼししてもらってるんだろうなぁ・・・その辺はあまり分かりません。
ちなみにパッデ村の人たちは、ときどき、蜂蜜もどきやら竹細工を卸してるみたいだね。扱う商人さん、特に甘味にはウハウハみたいだし、石より軽い竹の器は冒険者に高く売れるらしいです。
あのね、甘味ってやっぱりお金持ちの人たちにも人気です。
でね、こっち側の露天主体の商店街では、なぜか極上の甘味=パッデ村の蜂蜜もどきが売られてるってのは、なんやかやで耳ざとい人には知られるところ。ただね、お金持ちの人たちはこんなところに来たがらないんだって。僕としてはこっちの商店街の方が、種類も活気もあって面白いけどね。
ま、どっちにしても極上の甘味が、彼ら言うところの下賤の民(?!)が扱うのはけしからん、ってことで、取り上げられそうになったんだって。
ここで、活躍したのがセスの民。なんたって、パッデ村が僕らと仲良しですってセスには周知の事実だからね。
ここは、この国のシステム=互いにお話し合いで統治しましょう、が役に立ったようで・・・
ほら。この国には国の軍っていうのがないでしょう?トゼの治安も、それぞれ議員さん持ち寄りの兵隊さんたちが、
で、無体を働きそうだった、別の議員の兵とセスの兵がぶつかって、当然武の民セスが勝ったんだって。
自慢そうに、その露天のおっちゃんがそう語ったよ。
「でな、坊ちゃん。そのセスのお方が教えてくれたのがこの帽子よ。なんでも、他所の国の英雄が作ったというダンシュタ帽。この帽子を被ってきた客はみんなセスの友として扱うようにってお達しでな。坊ちゃんも1ついかがかな?セスの友にはこの辺りの商店じゃ、上客扱い。特にパッデの商品は極安の9割引だ。ハハ、バカ貴族に対してだけどな。さ、どうだい?」
ハハハハ・・・
ダンシュタ帽。
僕が赤ちゃんの時に、目立つこの髪を隠すために作った帽子。はっきり言ってナイトキャップです。なぜか今ではダンシュタの名物になっちゃって、王都でも大流行り。海外に向けてもタクテリア聖王国で大流行!みたいな感じで伝わっちゃった、ある意味僕の黒歴史、なんだけど・・・
まさかの、海を越えての再会に、思わず頬を引きつらせちゃったよ。
でも、ま、買ったんだけどね。
だって、まさかの木の皮をなめして作られた、ナスカッテ仕様になってるんだもん、アハッ。
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