第259話 トゼの都 ~騎士の場合~
キンキラ王子スタイルで冒険者ギルドへ。
僕は、ナスカッテ国が用意したギンギラ馬車で向かってます。
一緒にいるのは、僕の近衛扱いとして、アーチャとディルそれに本当はディルのお付きのリーク。
ナスカッテ国の代表として、アーチャのパパとママに、ギルド長のタウロスさん。
あとは多分ギルドの偉い人かな?見た目はやっぱりエルフの女の人だ。紹介はされてないから、名前とかはわかんない。
うん。
これだけ乗っても余裕がある。僕が小さいからってだけじゃなくて、ね。
たぶん10人か、12人乗りぐらいじゃないかな?
でっかいだけじゃなくて、なんていうか、無駄に豪華。
だって、背中だけじゃなくて座るところにも、豪華な刺繍がしてるんだもん。もちろんクッション仕様です。
とはいえ、乗り心地は、ナッタジ製の方が上だね。
刺繍しているからシートはでこぼこだし、バネはナッタジでしか知られてないのもあって、クッションに入っていない。
ちなみに僕とモーリス先生の記憶からコイルスプリングをうちの高級品には使ってます。これはひいじいさんの知らなかったものみたい。僕らが持ち込んだ自慢の逸品です。
それにサスペンション。
実は、これは昔っから、つまりはひいじいさんの時代からナッタジの馬車には採用されてます。
なんかね、外国には出してはいけない秘密の技術、ってことになってるらしく、魔導具っぽく偽装されてるんだけどね。
ひいじいさんもカイザーもサスペンション技術は知っていて、こっちの素材で代用するのとかが大変だったらしいけど、自分たちの馬車とか、王家の馬車、あとはほんとに数台だけ、仲良しさんがこれを使ってるんだって。仲良し特典っていうよりは、どっちかっていうと、うちの馬車が快適だからどうしても、ってお願いされ、押しに負けて特別に売ってたらしいです。でもこれを魔導具っぽく偽装するために、本当に不壊および崩壊の魔導具で覆ってるんだって。
つまり、外を囲っている魔導具を無理矢理分解するのは難しく、もしこの魔導具の分解が成功しても、その時点で、中のサスペンションは粉々になっちゃう、しかもそのときに関係ない素材と混ぜて、必要な素材をわかりにくくする、なんてのを纏っているんです。
なんでこんなことするかって?
ひいじいさんは、自分がもたらした技術で、この世界が悪い方向に進化しちゃうのをとても嫌ってたそうです。とくに軍事利用。まぁ、SF好きの人だったから、ロマン武器の制作には心血を注いだみたいだけどね。でも、いくら頼まれても、仲良しの王子様=現在の陛下にさえ、武器は渡さなかったし、軍事利用に役立つ快適技術は、数を抑えて、しかも、量産化を防ぐ努力をむちゃくちゃしてた、らしいです。
ドクとか、ゴーダンからそんな話をよく聞くんだ。特に僕が新規開発熱に囚われたときには、うるさいぐらい言われることです。
あ、ちなみに馬車のサスペンション。馬車が快適だと戦場に向かう兵士に余裕が出来て、結果的に戦況に影響を与える恐れがある、というのが理由だそうです。
まぁ、そんなこんなで、見た目はともかく、この馬車はうちの荷馬車よりも乗り心地は微妙だったりして・・・ハハハ。
とまぁ、それは置いておいて、この豪華な馬車の後には、クッデ村で調達した、普通の馬車が護送用にくっついています。
うん。この馬車に囚われている人を、冒険者ギルドの牢屋で預かってもらうんだ。
それと、なぜかやってきている、南部の騎士たち。
彼らの一部はシューバに乗って、一部はこれもナスカッテ国が用意した馬車に乗って、ついてきます。そして、その前後を警護するように行くのは、この国の騎士たち。
この国の騎士って、ちょっとばかり変わってる、のかなぁ?
いや、騎士とか衛兵、その他軍事力の在り方ってのは国の在り方にもよるし、それこそネーミングからしても国によって違うんだけどね。ほら、日本の自衛隊みたいに。
僕の生まれた国では、そもそもすべては王様の物で、土地も人も本来は王様の物だけど、統治は大変だから、領地やら領民を信頼する家来に任せて代理で統治させる、っていうのが、建前。領地を任されたのがご領主様で、そのご領主様がさらに自分の収めるべき場所を誰かに納めさせるのが代官、って形かな。あくまで大雑把に言うと、だけどね。
で、騎士はそういった統治する人が雇う形になる。多くは王様が雇うんだ。
でも一部、ご領主様が雇ったり、なんだったら領地を任されていない貴族が雇う場合もある。
少なくとも、タクテリア聖王国では、こんな風に人が人を雇う、その雇われた人が騎士って言われてる。
で、人ではなく、組織に雇われる戦力ってのもあって、たとえば領主として領地を守るために雇われるのが衛兵だ。憲兵さんとかは、主に領地に雇われた人をいうし、たとえば王宮を守る人、研究所を守る人、なんてのはふつうに衛兵さんなんて言われるんだ。
何が違うかって?
人に雇われていれば、その人がいなくなればお役御免だ。次の主人を見つける必要がある。王家なんかでは王様付きの騎士が別の王族に再任命される形をとってるかな?でもまぁ、違う主人に仕えるのはやだ、って人もそれなりにいて、一緒に引退し、または生きている間はずっと、その人の側で仕えたりもする。
でも組織に雇われる場合、頭が変わってもそのままって感じ。
例えば僕が生まれたダンシュタって場所。トレネーの一都市ではあるけど、そこにいる衛兵さんは、代官ではなくトレネーっていう領に雇われているか、ダンシュタっていう都市を中心とした代官が納めていた地域に雇われてる。だから代官が失脚して、別の代官がやってきても、衛兵のままです。まぁ、代官と一緒に悪さしてた人は当然クビだけどね。
これは前世風に言うと県に雇われたり、市に雇われたりするのが衛兵さんって感じかな?
て感じで、僕の国だったら、国賓とか外国の御来お客様は主に騎士とか、王宮所属の衛兵さんや、首都トレネー所属の憲兵さんが警護したりします。
でもこの国にはね、こういった騎士とかはいないんだ。
少なくとも国に所属する騎士はいない。
あ、ちなみにうちの国でも国所属の騎士はいないけど、王様は国そのものってことで、王が雇っている騎士=国の騎士って思われてるよ。
この国、つまりナスカッテ国には、本当の意味で国に所属ってのはないんだ。
多くの部族が集まる多民族国家。
その、それぞれの首長が寄り集まって、相談し、国の方針を決めていく形。
ちなみにその集まる部族の代表が元老院所属の議員として、国の代表みたいなもんなんだけどね。
話し合いですべてが決められるために話し合いのとりまとめ役、すなわち議長が一番偉い王様みたいなもんなのかな?ちなみにこの議長は議員たちの互選で決まるんだって。数年に一度議員たちの多数決で決めるって聞いたよ。
なんていうか、民主主義っぽい形?
じゃあ平等かっていうと、この国では「経験に寄れば~~~」と、話をする場合が多いそうで、まぁ、長寿の種族が権力を握っちゃう、って感じみたいだね。
で、武力に関して。
これも、元老院で話し合って、どの部族がどんな戦力をどんな形で国に出すか、ってのを決めるんだって。
国を守る力。魔物から守る力。魔物を倒す力。それにそんな力に力を与える=武器やなんかを提供する力。それらを組織立って運営する力。・・・・
代表は自分たちが出せる力を決め、それを提供する。
で、今僕らを警護する人たちは、その中でも国賓を警護するために提供された戦力、ってことなんだろうね。
国賓を守る力だけでなく、その相手側が敵対したときに自分の国の要人を守る力であり、さらには、国賓が気持ちよく過ごせるように教養までもが要求される最高の騎士たち、なんだそうです。
そうギルド長が自慢していたよ。
なぜか騎士たちはエルフっぽい人がほとんどなのは・・・・
ま、そういうことでしょう。
ちなみにギルド長が僕にそんなことを説明しているときに、アーチャママのウィンミンさんが、耳元でささやいてたけどね。
「いったい何人が、暴れ出したダー君を抑えられるのかしらね、ウフフ」
はぁ。
どうやら、おかざりな騎士さんたちのようです・・・
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