第258話 ナスカッテのはじまり
トゼ。
それは、ここナスカッテ国の首都です。
ナスカッテ国っていうのは、始まりの国、なんて言われてたりします。まぁ、言ってるのはほぼナスカッテ国の人だけどね。
えっとね。
これは歴史だか伝説だか分からない遠い昔の話。
ここナスカッテのある北の大陸は、魔物と人が住む地を巡って争っていたんだって。
ここでいう人ってのは、僕らみたいな、いわゆる前世でもいた人、ってだけじゃなくて、エルフだったりドワーフだったり、獣人、だけじゃなくて精霊もカウントされてたみたい。まぁ、なんていうか言葉が通じる生き物全般?
ていうか、言葉が通じず、問答無用で襲ってくるのが魔物で、意思疎通が出来るのが人、っていうざっくりとした認識だったかもね。まぁ、僕としてはこれは異論を挟みたいけど。だって、グレンたち魔物っていわれる僕のお友達だって、ちゃんと意思疎通できるもん。
ううん。それだけじゃない。
簡単な意思の疎通なら、念話で家畜のシューバたちとだってできるし・・・
だからね、僕は一般に人型をしているのが、人として認識されてるんじゃないかなぁ、なんて思ってます。
分ける意味は、敵か味方か、ぐらいなんだろうけど、僕の場合、魔物のお友達もいっぱいいて、難しいなぁ・・・
まぁ、それはいいとして、実際僕だけじゃなくて、友達じゃなくても魔物をペットみたいにしてる人はいっぱいいるし、家畜とか、稀に使役獣っていうの?そういうのとか、ね。味方の魔物もいるって認識はあるんだよね。
だから本との実際にはいろいろ難しいけど、とにかく、人と魔物は昔から敵同士、ていうのがこの世界の認識なんだ。
お互い殺すし食べるし、住む場所を確保するためとか、まぁ、いろいろ争ってきたってわけ。
その中でも主に住む場所を確保するために、人と魔物は争っていたんだけど、ね。昔は今よりもずっと、大地に魔素が溢れていて、弱い魔物や人は、大変だったらしい。
それでも、特に魔素の濃いところと、それなりに弱いところ、薄いところ?ってのがあって、それぞれの住処になっていったんだけど、強い魔物の方が濃いところを好んでいて、できるだけ濃い場所を確保しようとする。
一般的に、人ってのは、魔素の弱いところの方が住みやすい。
で、少しでも弱いところに固まり、さらには、いろんな方法で魔素の弱い大地を広げていったんだ。
魔素の弱い大地を広げる方法としては、魔素の弱い者たちが固まればいいんだそう。多分、魔素は大地からも溢れるけど、生き物からも溢れてそれが循環することで、空中に魔素が増えるんだろう、ってドクが予測していたし、一応、現在の常識となっているんだ。
で、人は開墾、ていうのかな、木々を倒し、整地し、集まって住むことで、魔素の少ない大地を広げていった。集落とか村の集まりだね。トゼの歴史で言う「原始時代の始まり」だ。
やがて、集落どうしが出会い、協力し、時には合体したりしてより大きな集落を作ったり。それは村になり、町になっていく。
敵は強大な魔物だから、エルフだ獣人だなんて言ってられなくて、互いの強みを生かして、より広大な土地を人の物として築いていった。
これがナスカッテの始まりなんだって。
こうして、人々は集い協力して、人の版図を広げていった。
それでも、時には揺り戻しっていうか、強い魔物が人の版図である魔素の弱い地域に近づくこともあり、それによって魔物の集う版図が人の方にも押し寄せてくる。
時に、黒い魔素だまりっていうのかな、ああいうのも大量発生したのではないか、って歴史の先生は言ってるよ。
何百年、何千年って単位で、こういうことが繰り返され、時に全滅、って言ってもいいぐらいに人は負けちゃったこともあったようです。
そんな中、ここで死を待つよりもって、海の向こうのまだ見ぬ世界へと勇気をもって繰り出す人もいたりして、無事南の大陸に到達した人々もいたりして・・・
それが僕らのご先祖様になってったんだって。
で、今の文明。
うん。過去に何回も人は集まり国に近いものもあったりしたけど、魔物に敗れては崩壊し、また盛り返し、ってしてきたんだ。
人たちも対抗策を見いだすように強くなったり、そんなことがあって、エルフで3代だか4代だか5代だか、そのぐらい前からは、今の文明が繋がっているようで。
その最初には、いろんな人種が協力することで人が魔物をかなり追いやったってことで、協力したみんなで永遠に手を取り合っていこうね、ってなんとなく集まった。それがナスカッテ国の始まりだそうです。
いろんな種族もいて、いろんな考え方がある。
彼らは王ではなく、そういったいろいろな種族の代表が集まり、国、っていうのかな、彼らの方針を決めていったんだって。
どこを開拓するとか、放棄するとか。
どこそこの人たちが苦戦しているから、応援を寄越すとか。
農業が得意だったり、鍛冶が得意だったり。
狩りが得意な種族に、お勉強が得意な種族。
どんな仕事も、互いに足りないものを補い合う、そういう形で運営される国家になったんだ。
ていうのが、この国の歴史とかまぁまぁ成り立ちだったり説明だったりされるお話。ちなみに「国」としての認識は、南の大陸からの使者が現れてからの話で、彼らは「国」という形を取っていたから、相対するために国とした、らしいというのは、別の話。
でもまぁ、お察しの通り、この国は、どんな種族も平等と言いつつ、エルフが威張ってるし、獣人さんたちは下に見られている。
今僕の目の前に見える町並みで、歩いているのはほぼほぼ僕らと同じ人族で、たまに道の端を獣人族の人が小走り気味に歩いている程度。
僕らは、今は冒険者ギルドが用意をした馬車に揺られているんだけどね、こうやってほとんどのエルフは馬車で移動するんだ。ていうか、むしろ、ほぼほぼ移動はしない。
お買い物とかは、商人を呼びつける人が多いんだって。
お仕事だっておうちでやって、部下の人が持ってきたり持って帰ったりする、まで普通にあるんだそう。
大雑把に言うとね、エルフの人は、ほとんど、政を担っているんだそう。もしくは、団体のトップにいる。商会長とか、ギルド長とか、ね。
だから決済系の仕事が多いから、おうちで事足りるのが大半なんだって。
まぁ、官僚の上の方の人は多くがエルフだけど、実働部隊は人族で、さらにその下働きとして獣人族がいる。そんな感じ。
なんでこんな不平等がまかり通るかって話なんだけどね、別に不平等でも何でもないってのが彼らの話。
今はトップにいるエルフたちも、はじめは下働きから始めたんだって。
下働きに5年から15年。
現場の実働部隊で、15から30年。
その後に管理職になる。
ここで寿命差ってのが問題になっちゃうんだよね。
一般に、人が100年として、獣人は種族差が激しいけど、10年から50年ぐらい。本当かどうか、ドワーフで500年、エルフで1000年なんて言われてるらしい。これらは諸説あり、です。
最近になって、これは魔力量か、魔石の大きさか、その辺りで寿命が決まってるんじゃないか、なんて説もあるね。
種族差か、魔力差か、よくわかんない。そもそも、特にこの国では、他種族との婚姻だって進められた時代もあり、純粋なエルフ、とか、純粋なドワーフ、とかは、ほぼほぼいないって聞いたよ。
ちなみに、僕らの仲間、アーチャは見た目ほぼほぼエルフだけど、僕と同じ人族の血も入ってるらしいし、ドクに至っては、エルフもドワーフも、おそらくは人族だけじゃなくて獣人族だって入ってるハイブリッドだと思われる・・・んだって。
もう今では誰もわかんないぐらい、いろんな種族が仲良くしていた時代があったんだ。
あ、ちなみに心臓の近くには、人にも魔力をコントロールするんじゃないかって言われている魔石があります。とはいっても、巨大な魔力を持つっていわれるエルフでさえ、普通は小指程度のサイズなんで、見つかるのは少ないけどね。
ちなみに、いにしえの大魔導師様は、心臓と同サイズの魔石を持っていた、なんて伝承はあるけど、まぁ、あくまで伝説です。
にしても、これだけ寿命差がある種族が一緒に暮らしているのに、年数で役職が変わるのはどうだろう、なんて僕なんかは思うけど、こういう発言は王子としては絶対しちゃだめ、って養成校で教わってます。なんかね、内政干渉、とか言われちゃうらしいです。
だから、お口チャックしてるけど、セスでは普通に言われてるよ。セスは適材適所、若かろうが年数は少なかろうが、できることをできる人がする、ってのが常識で、だからこそ、僕みたいに若年者でも、重宝してくれるんだ。
あ、そうそう「お口チャック」ってのは、ナッタジの言葉だった。
えっとね、ひいじいさんが言い出したらしくて、口外無用、って意味だって。
なんかね、商会でもチャックって誰だよ、ってよく話題になるんだけどさ、前世で、昔、ファスナーとかジッパーっていうの?あれのことをチャックって言ってたんだって。口をファスナーで止める、って言い回しなんだそうだけど、アンナもゴーダンもそもそもファスナーを知らない、って。
よくよく考えると便利だね、ってことで、実物を知ってるモーリス先生と、今開発中のものの一つです。アハッ。
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