第251話 護送は速攻で
早い早い速い速い・・・
人の支配する土地の端っこ、ていうよりも、もう魔物の土地との境目、魔物側寄り。そんなクッデ村北側の森の中。
僕らは、森の悪路、それも雪道を、モノともせずに進んでいきます。
テハハハ・・・
いやぁ、壮観というか、ファンタジーというか・・・
遡ること半日前。
僕は、ミモザの港を、新しいお船アレクサンダー号で出航し、エッセル島の近くで宙さんの領域へとダイブして、ここ、クッデ村奥地のとある小屋(という名のそこそこのサイズのおうち)に戻ってきました。
で、なぜか、ここで友達になったでっかい猿(ていうかほぼほぼモスグリーンのキング○ング)のワイズにお願いされたたくさんの魔物たちが、僕たちの目的=人里まで悪者を護送する、のお手伝いにやってきた。
さすがに魔物に手伝わせるのは、っていう僕の躊躇をものともせず、さすがは僕?(自分で言うのは恥ずかしいね)とばかりに、では早速、と戻る準備を始めた、なぜかここを仕切る南部騎士たち。ちなみにこの国からしたら外国の軍隊。
それはどうだろう、なんて僕が思う間もなく、ただ一人(人間の、という意味でだけど)の宵の明星の仲間であるアーチャに言われて、この状況を、お船でこっちへ向かっているであろうドクたちに向けて伝えたんだ。
ドクは、トンツーの魔導具で、クッデ村のギルマスに連絡をとって、そういうことなら応援の冒険者は出さずに待ってる、と、返事をもらったらしい。
ちなみに、こちらの状況報告と応援のお願いのために、僕らと同行していた森の咆哮が、ギルドに戻っていったんだけど、彼らが到着したのが、夕べだったらしい。
で、慌てて人を編成する途中だったんだって。
そもそも、みんなが懸念してたみたいに、こんな奥地まで来れる冒険者は少ないし、その少ない冒険者たちも、今はあふれ出た魔物の対応で忙しい。
まぁ、魔物に関しては、その元凶を解決したこともあって、ほぼ問題は解消しつつあるらしいけどね。
そんなこともあって、応援を送るのはちょっと大変だし時間がかかりそうだ、って頭を痛めていたため、勝手に帰ってくれるなら大歓迎、だそうです。
いやいいのか?魔物だよ?そんな些細なこと(?)を悩むのは僕だけなんだろうか?なんて、考えるんだけど、僕の方が常識あるよね?誰だよ、僕の事非常識なんて言ったのは。
てなことをぼんやり考えてはいたけど、ただまぁ、正直言って、この光景、テンションは上がります。
だってね、見たこともない様々な魔物が騎士とか僕ら冒険者の格好した人といっしょに、なんだったら背や肩に乗せて、森の中を疾走してるんだよ。
しかも、中には、箱詰めされた人々を持ってる子もいるし。
そうそう。
小屋にあった牢を一部加工して、小さい牢屋を作ったんだ。
騎士さんたち器用に作ってたよ。
僕は言われるままに材料になっていた金属製の柵を切ったりしたんだけどね。
どうも魔法が通りづらく、物理でも硬すぎて切れなかったみたいです。
よくあるタイプの牢に使われる金属なんだって。
ある程度魔力を込めた風の刃で、僕は切ったんだけどね。
風が得意なアーチャにコントロールは、ちょっと手伝ってもらったのは内緒だよ。
まあ輸送用の簡易牢はいろんなサイズのが、そこそこの数あったんだよね。
もともと、あの施設が魔物の捕獲を目的としていたから、魔物用、だけど。
それらを流用&プチ加工したんだ。
牢の中には人間、運ぶのは魔物、って感じで、立場逆転です。
魔物たち、それがとってもうれしい、って僕にいっぱいお礼を言ってくれたよ。
僕はこの光景を見て、大満足の大興奮だけど、魔物たちはこの光景を作りだしてるんだってことにテンションマックスみたいです。
まぁ、何にせよ、騎士たちも魔物たちも楽しそうで何より。
運ばれている人たちは、寒いからかなぁ、ずっと青い顔で震えているみたいだけどね、エヘ。抵抗もせずお利口で助かります。
普通なら10日はかかる道中です。
ベテランの森の咆哮でも5日はきついらしい。
超急いで、実際6日かけてたどり着いたみたいです。
戦闘はほぼなかったみたいで、早く着いた、らしい。
だけど、僕たちは、たった3日でもうほとんど戻ってきました。
野営をして、明日朝には到着です。
ってか、ここまで来てくれたら、もうアーチャでも道が分かるんだって。
で、今晩はお疲れパーティーすることになったんだ。
魔物たちの護送はここまでです。明日の朝僕らが出発するまでに、三々五々帰る、らしいです。
みんな良い子なので、ちょっぴり寂しいけど、またここに戻ってくるね。
ワイズとはまた会うことになるだろうし、未知の北側は、冒険者として、ワクワクの大地です。ひいじいさんじゃないけど、世界を旅したい僕としては、一度は目指したいもん。
そんなお話をしながら、途中で出てきた『おいしいお肉だよ』って教えてもらった獲物をいっぱい食べます。
ちなみに、動物も植物もいろいろおいしいの教えてもらいました。
人間よりこの地に暮らす魔物たちの方がいろいろおいしいの知ってるんだね。今までその可能性に気づかなかったよ、僕。
僕らは、帰路を急ぎつつも、教えてもらったいろいろなものを狩ったり刈ったりして、材料をお船にいるバフマに送ってたんだ。バフマはママとかと協力して、おいしいご飯にして、バッグに入れてくれる。
だから今夜のごちそうは、ママたちの特製ディナーだよ。
いろんな魔物がいるから、肉食用、草食用、生食用、・・・いろいろ考えてくれたんだ。ちなみにこの3日で、いろんな好みも聞けたから、全員においしいと思うものが届いたと思う。さすがに『人の肉』の好みには合わせられなかったけどね。
ちなみに牢の人たちには、自分たちが持っていた保存食でお腹を満たしてもらってます。マジックバッグのことなんて、教えられないし、ね。彼らは彼らで、自分で溜めてた食料を使ってもらいました。
飲めや歌えやの宴会の後・・・
あ、僕はもちろんジュースだよ。
気がつくとグレンのお腹にもたれて寝ていた僕。
グレンはお腹も毛がふさふさで、寒くなると尻尾をふわっとかけてくれるから、外でもとっても暖かなんだよね。
そんな感じで眠ってたみたいな僕だけど、気がつくと朝になっていて、数名の騎士さんが番をしていた以外は、みんな夢の中でした。ていうか、もう魔物はグレンだけじゃん。
「アレク様、お目覚めですか。おはようございます。」
「あ、おはようございます。ゼノンさんはお仕事ですか。ご苦労様です。」
「ゼノン、とお呼びください。我々は順番に夜の番をしているだけですので、楽なおつとめですよ。ガハハハ。」
なぁんて、会話もやっとスムーズになってきたなぁ、って、ちょっと感慨深いです。だって、南部の騎士さんたち、ちょっと前まで、僕の事、上げすぎてて、会話にならなかったんだもん。ぜぇんぶディル君が悪いです。
「我がオー・・・」
ぶすぅ(と、僕。王子って呼ばないで)
「おーおー・・・お日柄も良く、朝でござ・・・朝だなぁ。アレク様。」
「ったく、ディル様も懲りないねぇ。あ、おはよう、ッす。アレク様。」
「もう。様もいらないのに。」
「冒険者相手に、貴族が、だもんな。でもさぁ、悪いな。俺のボスはこっちのポンコツだからさ。様付けは命令なんだよ。」
「ハハハ。リークってば、ディルを尊敬してるのかしてないのかわかんないよね。」
「一応、王子命令よりもボスの命令を聞くぐらいには、下っ端してるつもりさ。」
ハハハ、なんだそれ。
なんて、話していたら、いつのまにか、みんな起きてきて、朝ご飯の用意をしてるみたい。
さて。
ご飯を食べて出発です。
ここからは、悪い人たちも、僕らも徒歩。
騎士に引っ立てられる形で、よろよろと進む人たち。
昨日までとは違う意味で、ファンタジーかもしれない。
特に商人組はお高そうな生地のキラキラ服を着てるしね。
それが、騎士にどやされながら歩いてる。
それに僕から見えないように離れた場所にいるガーネオ。
チラッと見たら、黙々と足を動かしていた。よろよろと歩いて怒鳴られたりしてるけど、なんていうのかな、覇気みたいなのは一切消えていた。まぁ、僕を見たらどうなるか、だけどね。
あ、一人元気な人がいるよ。ガイガム君です。
僕の悪口言って、何度も騎士に殴られてるのに、なんか元気です。
剣の才能はないけど、不屈、っていうか、殴られ強いっていうか・・・
盾の才能ならあるかもなのにもったいないなぁ、なんて思わずつぶやいたら、アーチャとリークが大笑いしてたよ。
とまぁ、なんていうか、長いような短いようなこの遠征。
無事にクッデ村まで戻ってきたよ。
なぜか、見覚えのある冒険者たちが、村の外までわらわらと迎えに来てくれて、ニコニコ顔で走ってくる。
あ、マーシーさんもただいまです。
あれ?マウナさんも?
森の咆哮
太陽の槍
みんな、みんな、ただいまです。
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