第248話 プジョー兄様がやってきた
翌日。
まぁ、気にはなったんだけどね、子供たちの髪の色とか。
濃く色チェンジさせるのって、タブーっぽいし。
みんな僕の真似だって言うし。
しかも、僕の事を探してるだか探っているだかの人がいたから、僕を守るためにみんなあんな風に染めたって言ってるから、危険とかないかな?ってのも気になるし。
ほら、僕の代わりにさらわれちゃったなんてことになったら、目もあてられないよね。
そんなことを、ママたちにも言ってたんだけど、ママが大丈夫だって。ママが言うなら、そっかってなるでしょ?
前に、僕を探しにやってきた、お隣の国の人たちとか、気に入らなかったみたいだしね、町の人たち。ザドヴァからは2回も別口で僕の人相、っていうか髪色を差しつつ、探してたからね。
1度目は、先だって捕縛したガーネオがらみ。ってか、ガーネオから報告受けた師のリヴァルドが、自分の研究にと手配した、結構手荒なもの。
2度目は、リヴァルドの件を、クーデター的に片付けた(、ということになってる)新総統ボード・ザウ・フォン・ザドヴァが、冒険者見習いなら自分の養子にしちゃおうって、探索をかけてたり。
まぁ、新総統さんみたいなのが国内外でいっぱい湧いてきたせいで、後ろ盾として王家が名乗り出て、王子、なんてことになっちゃったんだけど・・・
まぁ、この2件だけじゃなくて、なんだかんだと、僕と接触したいっていう人たちがまず訪れるのがトレネー領都か、ここミモザだったりするわけ。特に外国から入ると、海の玄関口であるミモザはとりあえず聞き込みを始める町、って感じなんだって。
で、僕は王子とかいっても名前だけだし、そこはあんまり知られてないみたい。むしろ外国まで噂が届いているのは、こんな髪の見習い冒険者のガキがいるらしいって感じみたいだから、気軽に手勢にしちゃおうって人が入ってきちゃうんだよね。
ミモザの人たち、「うちの王子に手を出そうとして湧き出るフナムシめ」って、そんな人たちを敵認定した、ってことらしい。ってのは、ここで代官代理をしてくれてるバフマの両親から聞いた話。
「なんてったって、ミモザの者たちは、アレク様を『うちの』王子と親しんで、なんだったら、『うちの子』という意味で使ってるんですのよ。普通の王子様なら不敬ってなりますでしょうが、アレク様はむしろお喜びでしょうと、放置しております。それとも、不敬罪で捕縛いたしますか?」
なんて、バフマママ、冗談でもやめてよね。
なんて、ことを、ママたちと合流した代官屋敷で話していたのは昨夜。
なんか、ミモザ名物になりつつあって、他所から来た旅人なんかも、真似して染めたりしてるようです。まぁ、洗えば簡単に落ちるみたいだしね。タブーなんていいつつ、濃い髪色になった自分、って変身願望を堂々と満足させられるミモザは密かに人気上昇中、だとか。ハハハ・・・。
それはそうとして・・・
今日は、どうやら昼前にプジョー兄様が到着するようです。
ランセルたちが頑張って騎馬になってるようで・・・
アハハハ。
リアル王子様、っていうか、なんだったら次の次の王様確定の人が、馬車も使わず良いのかなぁ。
近衛騎士さんたちも大変だよなぁ、なんて、状況説明を聞いて驚いたよ。
一応、プジョー兄様は、僕が捕縛した犯罪者=レッデゼッサ一味を国外に連れ出すときの責任者ってことになってるんだ。
で、兄様が来るまでは、僕が彼らの身をちゃんと持って帰る用意をするための特使ってのになってるんだよね。
ほら、犯罪者なんてのは前世でも国同士の約束がなけりゃ、外国から連れてこれなかったでしょ?今の世界では、もっと犯罪者に有利。外国がそんなの知らん、なんて言ったら、強引に連れて帰ることは国際問題。ていうか、そもそも勝手に捕縛・連行したら、そっちが犯罪者にされちゃう場合だってあるんだ。
そういう諸々のことって、個別で外交的に話し合って、結論づけるんだって。
そんな話し合いに誰が出席するか、で、いかに相手をおもんばかってるか、ってのも計られる。
僕という第3王子でも本来なら十分。
なのに、わざわざ、将来の王と名高い第1王子がやってくる。
これに意味がある、とのことです。
ちなみに、ずるいことを言えば、犯罪者としてこの国に引き渡して、後はご勝手に、ってこともできるし、他にも、黙って実力行使で連れ帰ったり、そもそも、その場で切り捨て御免、てな具合に処置してしまう方が簡単です。で、普通ならそういうことをする方が多いんだって。
ただ、今回は、事が事だけに、どうしても国として知りたいことが多いのだとか。
僕だって、瘴気の悪用が今後起こった場合の対処とか、そもそもそんな悪用なんてさせたくないし、ね。
国でもいろいろとやらかしているレッデゼッサたちだからこそ、こんな大がかりなことになってるんです。
っていうのは、半分は建前だったのかもしれない・・・
プジョー兄様を、きちんとした格好=現地の代官が王子殿下を迎えるにふさわしい格好、をして、プジョー兄様を迎え入れた僕たち。
あ、普通は先触れとかがあるんだけど、今回はランセルだしね。ちょっと前に『もうすぐ着くぞ~。』というなんとも軽いゴーダンからの遠距離念話がありました。
一応玄関先では、ちゃんとしたご挨拶もしたよ。
なんたって、ここの代官代理であるバフマママも、その補佐のバフマパパも、礼儀には厳しいんだよね。ちゃんとできなかったら、夜通しレッスンになっちゃうよ。
それに、養成所では、儀礼の授業を持っていたのが、目の前のプジョー兄様。
兄様の目は、歓迎を受ける王子様じゃなくて、先生の目になってるよ。
でもまぁ、及第点だったようで、バフマの両親もプジョー兄様も、大満足のご様子でしたとさ。
で・・・・
その日は、町の広場で兄様がやってきたぞのお披露目みたいな式典をしたり・・・
僕も一緒になって、急遽、でもないか、いつのまにか作っていた舞台みたいなところで、なんかしゃべったり。
あは。
割と好評だったよ。
僕の冒険者の格好はみんな見慣れてても、王子様っぽい格好はあんまり見たことないからね。
ていうか、興奮すると気絶、って本当にするんだ・・・
なんていう、ちょっとしたハプニングは続出しちゃったんだけど・・・
僕じゃなく、兄様のせいだ、と、思いたい・・・・
夜は有力者を呼んでの代官屋敷でのパーティー、なんてのをしたり・・・
何か知らないけど、ご近所の貴族さんたちがどこからともなく湧いてきて、社交界なんていう魔窟が顕現したみたい。だけど、その道のプロたる兄様にそのへんは丸投げで、僕はおいしい海の幸を堪能してたんだけどね。
てか、僕が食べる姿を見てキャアキャア言うたくさんの化粧お化けたち。
できればもう少し離れてくれるとうれしいんだけどな。
一応遠巻きにこっそり見てる、てことなんだろうけど、お化粧の匂いとか、こそこそと騒ぐ耳障りな声とか、おいしさ半減です。
それに、近衛役のミランダとラッセイが、顔に出すな、ってちょくちょくお叱りをつぶやくし、ね。
二人も一緒にご飯食べたかったのに、それはダメなんだって。
この点もおいしさ半減だよ。
なんてことが、兄様たちが到着して、たった半日で起こりました。
まぁ、来るのは分かっていたので、準備は万端だったらしいけどね。
にしても、本来は5日程度はかけるスケジュールっぽいよ。
でも、兄様が、陛下からの仕事を優先って言って、最小限且つ強引スケジュールで半日に納めさせたんだそう。
てか、本当の「その心は?」
世界一だろうアレクサンダー号で早く航海したい、だと思うんだ・・・・
そうそう。
あと、プジョー兄様と一緒に、トレネーや王都にいた面々も合流して、護衛も兼ねてやってきたんだ。
そんなみんなが言うには、ランセルでの強行軍、兄様はとってもご満足だったようで・・・
あんな顔して、冒険者への憧れが強そう。まぁ、やんごとなき身ではかなえられぬ夢、って割り切ってはいるようです。ちょっとかわいそうだね。
てな感じで、久々の宵の明星全員集合(アーチャ除く)です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます