第247話 違和感の正体
帰ってきた。
やっぱりミモザを見るとそんな感想が押し寄せます。
住んでいる人にも、いっぱい友達、いるしね。
知り合いがいっぱい。
みんなニコニコ。
お帰り~って、迎えてくれる。
うん。
ダンシュタとともに、ここは僕の故郷なんだって、ストンと胸に落ちてくるよ。
それに・・・
大切な僕の家族が待ってる~~~
よく知る、僕の町だ!
そうよく知る町なんだ。
けど・・・
?
何かな?
なんか・・・
違和感?
ちょっぴり、あたまにハテナが飛んだけど、ま、いっか。多分些細なこと。
僕はちょっぴり浮かんだ違和感を捨て置いて、
「ただいまぁ~~~」
叫びながら、船から飛び降りたんだ。
ママ、レーゼ、ただいま~~~
わわわわわわ・・・・
「お帰り!」
「ダーだ!」
「なぁ、あれってアレクサンダー号ってんだろ。」
「すっげー。」
「かっけー。」
「もう、ダー君困ってるじゃない。」
「そんなこと言いながら、抱きつかなぁい!!」
もう、わちゃわちゃです。
飛び降りた僕に集まってきたのは、子供たち。
まぁ、ちょっぴり成人してる子も混じってるけど、基本、僕の友達っていうか、地元の子たちがわらわらって、集まってきて、身動きがとれないよ。ハハハ、うれしい悲鳴?ってか、ママのとこに行きたいんだけど・・・
ってか、???
やっぱり違和感?
「もう、みんなどきなさぁい!ダー君が困ってるでしょ!ダー君もお母さんたちのところに行きたいんだから、さぁ退いた退いた!」
そんな子供たちの集団を後方からやってきた女の子がみんなを鎮めるのが見えたんだけど・・・
おや?
「おっ、自称姉が来たぞ!」
「おっかねえ、おあねえさまだ。」
「おあづけミンクがやってきたぞ!」
みんなが、その女の子に道をあけるけど・・・ミンク・・・さん?
違和感が・・・って、あ、髪!!!!
ミンクさんは今年成人したはずの、この町でも大きな商人の一人娘。
僕の最初の依頼者だった人。あ、依頼者はそのお父さんだけど、実質の依頼者が彼女で・・・
13歳から領都トレネーにある商業ギルドでお勉強してたって聞いたよ。
成人して、ちゃんと商人のランクももらったんだって。
将来はお父さんの商会を継ぐだろうってもっぱらの噂なんだ。
・・・・・
なんてことはいいんだ。
なんだ?
てことで?
違和感の正体が分かったよ。
ミンクちゃんの髪が変だ。
で、ここにいる子供たちのほとんども、髪が変。
あのね。
この世界は前世と違って、髪の色は色とりどり。
魔力が髪に出る、とされていて、自分の持っている魔力に近い色が出ることが多いんだって。
で、その魔力量は髪の濃さに出る。
魔導師をするような人って、魔力量が多いから、髪の色が濃いし、割と騎士なんかでも、濃い色の人が多いんだ。
魔力量が多くても、それを外に発動させるのが得意かどうかは別で、自分自身に魔力を使う人は、身体能力が高くなるし、外に放出するのが得意な人は魔法が得意になる。この辺は生まれ持っての才能がものを言うみたいだけど、努力で補うことはできる、らしいです。
まぁ、魔導師っていっても魔力があれば身体能力は強化されるから、戦うとそれなりに肉体を使っても強い人も多いし、逆に肉体派だっていっても、魔法だって上手に使う人がいっぱいいる。
で、まぁ遺伝的要素ってのも少なからず魔力うんぬんには含まれるわけで・・・
端的に言って、貴族なんてのは、ご先祖様が魔力が多くて強かったから貴族になったってのも多いだろうし、相対的に魔力が多く、従って髪の色が濃い人も多いんだ。
逆に、平民は薄い色が多くて、僕みたいに前世の記憶をうっすらと持っている人からすれば、パステルでとってもきれいでうらやましかったりするんだけどね・・・
何が言いたいかっていうと、ミモザの友達は基本的に平民で、魔力量だってそんなに多くないことがほとんど。
子供たちに囲まれることは少なくないんだけど、なんていうか、パステルヘアーの綿毛に囲まれる感が、なんとなく癒やされるなぁ、って感じが常だったんだけど、今は、威圧感が半端ないんです。
はじめはアレクサンダー号を見て興奮してるから、圧がすごいのかな?なんて思ったんだけど、違ったよ。
だって、ミンクちゃん、じゃないミンクさんの髪が・・・・まるで僕の髪みたいだったから。
で、びっくりして周りを見ると、多くの子たちが、僕の髪色みたい。
中には、僕を真似たのかな?クリクリヘアーの子も・・・
大中小様々の僕?
男の子もいるし女の子もいる。
いったいどうなってんの?
あのね。
この世界、髪はとっても大切です。
魔力を体現しているとされているから、髪色を変えるのは、嘘つきとか、後ろ暗いことがある、みたいな感じに思われちゃうんだ。
帽子で隠すぐらいなら、おしゃれとか体温調節とか、そんな感じで見られるんだけどね。あとは、そもそもやばい場所に行くときはわざと変えたり隠したりする。お忍びです、って公言しながら歩いてるって感じ?
これは子供だって変わらない。
特に能力を高く見せるために、自分より濃い色にするのはタブー視されがちなんだ。
だから、僕みたいな色にする、ってことは、濃い色にごまかすってことで、とってもいけないこと、のはず・・・
僕は思わず、
「髪・・・」
ってつぶやいてたよ。
「シシシシ・・・」
「びっくりした?」
「今の
口々に言う子供たち。みんないたずら成功、みたいな顔をしてるけど・・・
「ミモザの子供たちは、できるだけこの色にしようって決めたんだよ。驚いた?」
ミンクさんもニコッとわらう。けど・・・
「どういうこと?」
「未だにいるんだよね。」
「このところ多いんだよ。」
「ダー君のこと連れ去ろうっていう悪い人がいっぱい来るの。」
ちょっとお話しを聞くと、「夜空の髪の子供を知らないか?」なんて尋ね回る余所者が、ちょくちょく来るらしい。
絶対僕の事だ、ってみんな思っても、知らない、って答えてくれてはいるんだけど。
昔、僕の手配書みたいなのが回ったときがあって、そのときも子供たちや町の人たちに、「夜空の髪の子供」って話してたのを思い出して、みんなが僕みたいな髪なら、僕を守れるんじゃないか、って誰かが言い出したんだって。
「ダー君は、この町のご領主様なんでしょ?」
「ご領主様を守るのは領民の義務なんだぜ。」
「かあちゃんも、とおちゃんも、ダーを守るのは一番大事なことだって言ってたしよ。」
「そうそう。ダーちゃまがいれば、将来はあんたい?ってのになるんだって。」
「まちのみんなを守ったダー君のいぎょーにむくいるんだぞ、って、近所のおっさんも言ってたぞ。よくわからんけど。イヒヒ、へんくつおやじも、子供がこの髪にすると褒めてくれるんだぜ、ってこと。」
「ま、この髪、強くなった気がして、カッケーから気に入ってんだよな。へへへ。」
「でんとーよりもじつりだって、パパが言ってた。」
「みんなで、ダー君になろう作戦、だよ。エヘッ。」
とは、子供たちの声。
うーむ。
どうやら海辺ってこともあって、ミモザ近海では、濃紺色の液体が簡単にとれるらしい。まぁ、前世でいうところのタコやイカの墨みたいなのを出す魔物もそこそこいるしね。
あとは、浜辺近くに生息するイソギンチャクみたいなネココって言う魔物。
小さいものは小さい魔物を獲物にして、その体内で不要物である魔石を濾過するんだけど、その結果として、小さなネココの中はキラキラな砂粒状の魔石が貯まるんだ。このキラキラな砂粒を、魔物の液で染めた髪に撒くと、僕の髪色っぽくなる、らしいです。
僕の事を探す誰かさんから僕を守るためにみんなで夜空の髪の子供になろうってことらしいし、どうやらノリノリで町を挙げてやってるみたい。
被害がないのか、って聞いても、平気って答えるし、むしろ色を変えて楽しいみたいなんだけど、ね。
うーん。
これって、いいのかなぁ。
みんながみんな同じような髪色って不気味、かも。
いや、前世を考えるとむしろほっとする?
よくわかんないや。
「ダー君ってば、そんな難しい顔しないの。さ、ミミさんたちも来てるし、早く家族のところに行きなさい。」
ミンクさんの声に、まっいっか、と、僕はお礼を言って、家族の元へと走り出したんだ。
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