第224話 冒険者の在り方
クッデのギルド長からの依頼で、太陽の槍っていう3人組をボコった後。
ちなみに彼らはクッデ出身じゃなくて、田舎町、本人たち曰く、田舎としては大きくて村じゃなくて町だそうだけど、そんな町で同い年として生まれた幼なじみなんだって。
リーダーで喧嘩を売ってきたのはラザンは剣士。ちょっとおどおどした盾役のオッズ。紅一点、弓が得意なラメーヌ。ラメーヌはちょっとだけ火の魔法が使えるけど、ラザンとオッズはからっきしだそう。二人とも4分の1は獣人の血が混ざっているから、らしい。獣人は魔法が使えないっていう常識?があるみたいだからね。
ちなみにオッズはドワーフの血も4分の1ほど混ざってるんだって。
ラメーヌは一応、ほぼ人族。
ほぼって言うのは、その容姿とかから、ちょっとぐらいエルフの血が混ざっているんじゃないかって言われてるんだって。この国って、数百年単位の昔には、本当に仲良くいろんな人種が生活していて、自由に種族を超えた婚姻がなされていたらしい。
まぁ、そんな3人だけど、彼らは町では力自慢で売っていたらしく、成人すると3人揃って冒険者になったんだって。
で、さらなる高みを目指して、強い魔物であふれてるって噂のクッデ村にやってきた。もちろん強さを認めてもらってランクアップするためだって。彼らはCランクになると早々にクッデ村にやってきたんだって。この夏のことらしい。
ちなみにCランクってね、国内の町へ自由に出入りできるレベル。1年でここまで上がるのはすごい、らしい。Fから始まるランクだけど、Fは誰でもなれて、仕事を数回やればEにはなれるんだって。Dでやっと、冒険者って認められる感じ。ここまでが初心者、かな?
本物の冒険者、って言い方も変だけど、一般的に受けた仕事をちゃんと成功できるよ、ってレベルがC以上。ここまで来ると、登録した国の中なら自由に移動できる。つまり、町に入るのにお金がいらないってことだね。ギルドが冒険者として人物の保証をしてる、ってことでもあるんだ。
で、この移動ができるようになって、太陽の槍は、この夏、クッデにきたらしい。
さすがに、他所から来た人はみんなCランク以上。ていうか、Bランクぐらいからが多いかも。少なくともパーティに1人はBランクがいる感じだね。そういう意味では、彼らにはちょっと無謀な場所でもあるんだ。
なんて感じの話を、模擬戦後に、ベテランたちからお説教モードでされていた太陽の槍。
こういうのってみんな優しいなって思います。
だって、他所からやってきた粋がった若者たち。自分の強さに自信満々で、無謀な戦いに出て・・・帰ってこない、なんて、この業界じゃ珍しくもない。
おまえたち、自分が強いって思ってるんだろうけど、全然井の中の蛙だからな、って、叱ってくれる先輩って、きっと、彼らが無駄に命を散らさないようにっていう、親切な人だと思うんだ。
見知った顔がいなくなっちゃうの、たとえ嫌いな人でも、すっごく悲しいもんね。
だから僕も、この手の依頼は受けるようにしているんだ。
まぁ、トラウマになって、冒険者をやめちゃったって人もそれなりの数がいるから、申し訳ないと思うこともあるんだけど、それでやめちゃう人は、依頼を失敗して帰ってこれなくなる類いの人だから、良いことをしたんだよ、って、いろんな人が慰めてくれたもんだ。
今回は、僕も直接いろいろ言われて、ちょっとムカッてしたから、瞬殺しちゃったけどね。
大人げない!っていう感想が、某ベテランさんから言われたけど、あたりまえ。僕、10歳だもん。
どんな感じだったかって?
えっとね、まず、みんな武器を構えるまでは待ってあげたんだよ?
オッズが片手で盾を構えて、あと短い槍?棍棒?そんなのを別の手で構え、一番前へ。
その斜め後ろから、剣を両手で構えるラザン。
さらにその後方2メートルぐらいかな?弓を構えるラメーヌ。
あ、僕はいつもの武器で良いよって言ってあげたの。
そしたら、彼らは、ちょっぴり切れちゃいました。
僕をボコボコにしてやる!って言ってたけどね、ハハハ。
ちなみに僕は訓練場にあった木剣を借りたよ。嘘です。ちょっと見栄を張っちゃった。ちょっと長めのナイフ型木剣です。僕が持ったら普通に木剣・・・これから大きくなるんだから問題なし、だよ?
でね、はじめっていうギルド長の声とともに、ビュンってまずラメーヌが矢を放ったの。
それを合図に、残り二人が突進、って感じかな?
矢で牽制、可能なら怪我をさせつつ、盾で防御か体当たり、その影から、ラザンの剣が襲う、っていうプランニングかな?なんて考える余裕もありました。
僕は、到達した矢をナイフではじき、スライディングして突進する二人の背後へ。
そのまま振り返って立ち上がりラザンの膝裏を一閃。返すナイフでよろけた腹に追撃!
「ウッ。」ていう、ラザンのうめき声を聞きつつ、彼が倒れる前にびっくりして後ろを振り返りつつあるオッズの肘を蹴り上げ、その肩に手をついて逆立ち状態で身体を上空へ。そのまま振りかぶって、オッズの頭を一撃。
二人を無視して、そのままダッシュ。放心中のラメーヌの喉元にナイフを突きつけた。
この間、たぶん30秒ぐらいじゃない?
シーン・・・・って、野次馬たちも黙ったよ。
「そこまで。」
ギルド長の鋭い声が発せられるまで、時間が止まったかと思ったぐらい静かになっちゃった。
で、ギルド長の声に「ウワァーーーッ」「すげえ。」「見えんかった!」
野次馬さんたちが爆発しました。
その中から森の咆哮のみんなが集まってきて・・・
「ダー君は、確か、魔導師じゃなかったかい?」
ハンスさんが、びっくりした感じで言ったのを聞いた皆さん、さらにびっくり顔でこちらを見てるよ。
「どっちかって言ったら、そうだね。でも、剣もちょっとは使えるよ?」
「ちょっとって・・・」
「ハハ。だって、魔法を使ったらやり過ぎになっちゃうし・・・・」
そんな会話を聞いた太陽の槍のみんなは、とってもショックを受けていたみたいだけどね、僕だって、すごい剣士に赤ちゃんの時から鍛えられてるんだよ、ねぇ。
で、そのあと、さっき言ってたみたいに、彼らにちょっとしたアドバイスが諸先輩たちからある中、僕は、前衛2人に「ヒール」です。
ハハハ、これにもびっくりされちゃった。
治癒系を使える人はすっごく少ないんだよねぇ。
でもママに比べたら僕なんて、ひよっこです。
で、現在。
諸先輩からのアドバイスの成果か、僕にプライドを壊されちゃったからか、よくわかんないけど、一緒にお宿に来てくれることになりました。なんか急に態度が変わって、へこへこした感じになっちゃったの、気持ち悪いなぁ、と思いつつ、太陽の槍を連れてお宿へ行きます。あと、心配してくれた森の咆哮の面々も一緒。
結構な時間が経ったけど、どうやらライライさんは帰ってくれてないようです。
部屋へ入ると、ライライさんをガン無視したアーチャが武器や防具をメンテ中。
プンプン顔のライライさんと、そのボディガードかな?何名かが、扉のところでそんなアーチャを睨んでました。うん。扉のところ。開けたまま中に入らず、廊下から睨んでるんだ。
そんなライライさんを見て僕はため息をついたんだけど、そのとき急に地面から浮き上がったんだ。
びっくりしたけど、ラックルボウさんが僕を抱きかかえたみたいだね。
「アーチャさん、邪魔するぜ。」
で、森の咆哮のみんながハンスさんの声の後、ゾロゾロとライライさん一行を押しのけて、中へ入っていく。
「あ、いらっしゃい。」
ニコニコ顔のアーチャがそれを迎え入れて、森の咆哮の後ろには太陽の槍もおっかなびっくり続いたよ。
最後尾にいた森の咆哮のジャヌが、しれっと扉を閉めようとして・・・
「ちょっとなんなのよあんたたち!関係ない者は立ち去りなさい!」
気を取り戻したライライさんが、叫んだんだ。
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