第220話 任命式からの、クッデへ
絶賛、お着替え中です。
いやぁ、僕の近衛ってことになってるミランダとラッセイが、ちゃんとした騎士の格好しているのがなんでかなぁ、って不思議ではあったんだけどね。
なんでも、本当は、国王からお仕事を受けるのは、儀式の一種っていうか、任命式?みたいなのを開く必要があるんだって。
でも、僕はそういうの好きじゃないし、今はほら、行ったり来たりで忙しいでしょ?そもそも任命式だって、陛下たち偉い人の時間の調整が必要。
てことで、ここは略式で任命式をする、ってことになったらしい。
ひとえに僕の我が儘=お城で式とか、好きじゃない、ってのを忖度してくれたっぽいです。
ただ、略式とはいえ、そこは生粋の王子プジョー兄様。
最低限の形式は確保したい、みたいで・・・
自分の近衛と僕の近衛、それにゴーダンは一応?貴族。ちなみにギルド長も貴族扱い。
えっと、どこかの貴族になってもいいんだけど、慣例としてギルド長の間はどこの国にも属さないことになってるみたいです。建前上は、ね。一応、各ギルドって独立した組織ってことになってるしね。
ちなみに商業ギルドってちょっと変わっていて、独立しつつ各国のトップとも深い関係。どうしてもお商売には各国の利権だったり、法律だったりが深く関わるから、そうなってるみたいです。
で、大概は、その調整?的なものとして、その国のトップは商業ギルドに加盟して、形式的なトップになるんだって。商業ギルド長っていうのは実質2位の地位で、1位にこの国なら陛下が座するってことみたい。
そういえば、ママがCランク=この国でお店開いて良いよって証をもらったとき、お城で印をもらったっけ?陛下が渡してくれたよね。
どうやら、お城の僕の部屋から、儀式用の一式を持ってきてたみたい。
兄様の指示で、ミランダたちが用意したようです。
儀式の服ってばとっても複雑。
飾り物が多いし、一人じゃ着れないよ。
いつもは、僕専用のメイドさんがお城にはいて、着せてもらったりします。あ、ちょっとしたパーティーなら、リッチアーダのおうちで準備することもあるけどね。
さすがに王子の正装はお城じゃないと難しい。
そんな難しい服も一応は簡易バージョン。といいつつも、一人では無理なレベルを、ミランダたちに手伝ってもらって着用です。
はぁ、これだけで、半時間はかかったね。体感3時間?ま、そんななにはかかってないけどさぁ、気分です、気分。
僕のお着替えが終わったら、ギルドマスターのお部屋で、任命式です。
陛下からの任命状を代理で兄様が受け取ってきたので、これを兄様が受け渡す。内容は兄様の代理でナスカッテ国との話し合いのリーダーになりなさいってこと。
こういうのを小難しい言葉で、兄様が語ります。
代理で渡したのは代理のお仕事、って代理多過ぎ~と、心の中で叫んでたら、後で兄様に叱られちゃった。
どうやら顔に出てたらしいです・・・
簡易の任命式が終わって、元の服に着替え、ちょっとお話しして、はぁ、今日は長い日だったね。
さ、クッデ村へと帰らなくっちゃ、ね。
と、思ったんだよ、ね。
アーチャの鞄から、さぁ戻ろう、そうポシェットに意気揚々と飛び込んで!
『マスター、お待ちを。』
宙さんが、そんな僕を止めたんだ。
いったいどうした?
宙さんの空間は何もない宇宙空間だけってわけじゃないんだ。
なんていうか、宇宙船の中?っぽいのがデフォです。
たぶん、ひいじいさんのロマンでできた部屋。
僕が中に入ると、そんな空間があって、なんていうのかな、操舵室?
高いとこに艦長の席があって、前はでっかいモニターで、モニターには基本宇宙空間が広がっていて・・・
SFアニメのブリッジってやつを想像してくれたらいいです。しかも昭和後半から平成初期ぐらいの。
宙さんは、そんな宇宙船のAIって感じ。
でね、ほとんどこんなことないんだけど、僕が出ようとしたら、眼前のモニターがザザーって古いテレビの砂嵐みたいになったんだ。
ジジ・・・ジジジーーーー
「何これ?」
『外部音声を出力します。』
宙さんが言ったよ。
と、同時に、人が争うような声。ってか、女の人が怒ってる?
「だからアレク様と会わずに帰れません。どこに隠したのです?あなた一人で森に入ったのは確認しているんですからね!」
「あんたに話す義務はない。」
「はぁ?私はこの国でのあの方のお世話をする義務があります。これは国の決定と思ってもらってもいいのよ。ほら。」
「話にならない。あの子はこの国の人間ではない。そもそも他国の王族をどうこうする権利は、元老院の一員ごときにはないだろう?それに、冒険者としても、だ。たとえこの国にいても、冒険者には国の命を受ける義務はない。」
「はぁ?この国にいる以上は、国の方針に従うのが義務でしょう?」
「タクテリアの治世者養成校で学んでこなかったのか?そんな義務はない。」
「キィーッ!とにかく殿下を、アレク様を出しなさい!」
「ことわる。」
あちゃー。
どうやら僕を訪ねてライライさんが来てるみたいだね。
でも、アーチャのあんな無機質な声、初めて聞いたよ。怖っ。
雰囲気的に、長い時間、延々これを繰り返してそう。
出て行きたくないなぁ。
でも、どっちにしても、出てかないと始まらないかも、だね。
とはいえ、アーチャの鞄から出るところは見られるわけにはいかないな。
(グレン、いる?)
僕は、グレンに念話したよ。
(やっと、帰ってきたか。面倒な雌がアーチャに絡んでるぞ。)
(うん、みたいだね。そっちに戻るのに見られたら困るから、アーチャの鞄をどっか人のいないところに持ってってくんない?)
(分かった。どこがいい?森の浅瀬でもいいか?)
(うん。それでいい。お任せで。)
グレンの了承の念話が送られてきたよ。
「キャッ、何?」
すぐに、ライライさんのそんな声が聞こえたから、グレンが行動したんだろうね。
ホテルに潜入して、アーチャに念話でもしてるんだろう。
慌てる様子のライライさん。
そりゃ、ラッセルとしては小さめとはいえ、人よりも遙かにでかいオオカミが突然入ってきたんだもの、パニックにもなるだろうね。彼女、一応、グレンとの面識はあるはずだけど・・・
アーチャの「よろしく。」って小さな声が聞こえて、ライライさんの声はみるみる遠ざかっていく。
どうやら鞄の持ち出しに成功したようです。
と、まもなく。
グレンの合図で僕は飛び出したよ。
はぁ。
やっと、クッデ村に帰ってきたぁ・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます