第219話 僕のお仕事は・・・?
兄様が来るまでレッデゼッサの身柄を僕らの手元に確保する。
そのために、王子としての地位で僕が交渉の場に立つ。
そのための辞令、任命状。
僕は、とにかく仕事を全うしなきゃだけど、あっちにいる仲間は、アーチャを除いたら、ナッタジ商会の商人たちだけなんだよなぁ。
仮に捕まえたとして、船に拘束?
うちのは商船だけど・・・
「うまく捕まえられたら、トゼに向かえ。博士がセスの協力を取り付けてるはずだ。」
僕の心情を当然分かってる、って感じでゴーダンが言ったよ。
そういや、タールの魔物はもっぱらセスが対応してるもんね。仲間はずれはダメだと思ったんだ。ハハ、今、思い出しただけだけど・・・
ナスカッテ国って、たくさんの人種が集って平等に話し合いで政治を行っている・・・てことになってる。
部族ごと、地域ごとから、自分たちの代表を出して、みんなで話し合うんだ。それが元老院。エルフも人族も獣人族もドワーフも、みんな平等な関係で話し合うんだって。建前ではね。
で、元老院が決めたことに従って、いわゆる官僚だったり軍部だったりが活動するし、その指導は元老院の中で指名された代表の誰かがするんだ。
えっと、前世で言うところの、地域から選ばれた国会議員と、その中から任命される大臣、みたいなものを想像するとちょっと近い。
ただ、いろんな種族がいることから、寿命が違う。てことで、時間感覚が違うんだよね。
一般的に、僕ら人類を1倍とすると、エルフがその10倍、獣人族が半分、ドワーフは5倍、ぐらいの寿命がある、ってされている。
といっても、時間感覚がかなり大雑把なこの世界。どこまで本当かはわかんないけどね。一般的にそう言われているってこと。
で、何が言いたいかっていうと、この国では、元老院っていうのは各種族から代表が選ばれるんだけど、前世の国会議員と違って、任期っていうのがない。まぁ、任期は各部族にお任せ、って感じだね。選び方も含めて、とにかく代表を出すという決まりがあるだけで、代表の選出その他諸々は各部族のお任せ、なんだそうです。
で、一度元老院に選ばれると、なかなか退任しない。したとしても、自分の指名で次の代表を選んだり、ね。
そうなると、皆平等のはずのこの国の人々の中でも、元老院に入る人って、エリート一族、ってなるんだよね。はっきり言って、我が国の貴族と立場的には変わんない。
しかも、同じ人が長いこと同じ仕事をしたりして、まぁその仕事関連の権力が集中しちゃうでしょ。長ければ長いほど権力が強くなる。
そこで寿命問題。
同じ仕事でも寿命が長い人ほど長くできて、ベテランさんになる。ベテランさんが新人さんに仕事を教えたりするから、ここに先輩後輩ができるんだ。
皆平等とは言え、先輩後輩。いっても、上下関係ができちゃう。
て感じで、長寿の種族の方が偉い感じになっちゃった、ってのがこの国の状態だそうです。
その上下関係が貴賤の意識まで長い歴史の中で発達しちゃった、残念な差別がまかり通る国、ってわけ。
ただ、セスは、そういう意味でも特別です。
セスは、樹海との戦いを続けるというだけがアイデンティティーの一族。
そこにエルフも人族も獣人もない。
そもそもナスカッテ国自体が混血がすすんではいるんで、純粋な血を継いでいる方が珍しいんだけどね。都会では逆に血を濃くしよう、なんていう主義の人が出てきたって感じかな。
セスは樹海の魔物と生存圏をかけて戦ってきた人たちの集団なんだけど、だからこそ、武に秀でている。
ナスカッテ国自体も軍隊とか警備の仕事をする人はいる。
けど、練度はセスが断然上。
そういうことでセスに修行に来る留学生も多いんだけどね。
そんな強い集団で、かつ、樹海でみんなの代わりに戦ってもらってるっていう、引け目っていうか、リスペクト?なんかもあるから、ナスカッテ国の中ではちょっと特殊な立ち位置にある一族?なんです。
あ、当然セスからも何人か代表、すなわち元老院に人は出てるよ。
だけど、これもちょっと変わっていて、セスの人にとっては元老院の人よりも長老って呼ばれる人たちの方が、権力が強いです。
セスの方向性を決めるのは長老たち。
元老院に派遣される代表は、その方針を中央に伝えると同時に、国との仲立ちをする役目って感じなんだって。
えっとね。
うちのメンバーのアーチャ。彼はセスの人です。あと、ドクもね。
ちなみにドク本人は「元セスじゃ。」って言い張ってる。
自分は勝手でセスの役目を放棄して、世界に出たからセスを名乗る資格はない、と思ってるようです。まぁ、セスの人たちは、また言ってるよ、って感じで、完全にセスの人、って思ってるみたいだけどね。
それと、僕も名誉セス?
なんか、セスの一員として迎え入れられました。
まぁ、いろいろあって、樹海の問題に手を貸すことになってる、ってことで、一族に受け入れられたんだよね。
てな感じで、うちはセスと深いつながりがあるんだ。
ナスカッテ国で活動するときには、とっても力になってくれる人たちです。
で、どうやら今回もセスにお世話になる、のかな?
どっちにしても、レッデゼッサたちの身柄確保が先だけどね。
こんな感じのお話を軽くしたあとで、兄様が言いました。
「とりあえず、着替えなさい。」
は?
着替えるって、何?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます