第215話 エッセル島で回収作業

 次出るのは、エッセル島だけど、さて誰の鞄を使おうかな?

 ドクにモーリス先生、ニーにカイザーがいるのは分かってる。この3人はマジックバッグを持ってるけど・・・

 でもやっぱりモーリス先生一択だよね。

 だって、ドクの鞄はマジックバッグじゃなくてもマジカルだし、ニーは・・・その・・・女の子だから、出たときに見ちゃいけない物とかないか確認しながら出るのは面倒です。

 その点モーリス先生は整理整頓が得意。変な物はマジックバッグに直接入れてないはず。

 ちなみに、異空間に入れずにそのままバッグにしまうこともできる仕様になっているんだ。でないと、空のバッグじゃ怪しすぎるでしょ?目隠し代わりに最低限の荷物はそのまま入れてます。

 これはママの提案ていうか要望なんだ。レーゼのおむつがヒヤヒヤだったらかわいそうでしょ?異空間から出たときはなんでもかんでも絶対零度になっちゃってるからね。常温保存のためにも必要なんです。



 てなことで、ナハトに別れを告げて、エッセル島へ。

 どうやら実験中のみんなの前に現れたようです。

 ちなみにおうちの中の、まさかの台所。


 「山小屋の方に荷は積んであるぞ。」

 言ったのは、カイザー。

 なんだか難しい顔をしつつ、手元で何かをやっていて、その手元を真剣な目でみんなが見てます。


 「何やってるの?」

 聞いたけど、こっちを向いてくれたのはモーリス先生だけだったよ。


 「いやね、カテーテルができないかと思って・・・」


 詳しく聞いてみると、最初に作ろうと思っていた点滴キットはゲンヘの管を使ってほぼほぼいい感じにできたんだって。

 ちなみにプラスチック製品はないから点滴を入れるのはガラスなんだけど、そのガラスからゲンヘで作った管を通して、管の先に針をつける、ってのはなんとかかんとかできたみたい。

 ゴムっぽいとは言っても硬度とか、あとは伸びたり縮んだりの継続性とか回数とか、まぁ劣化度っていうの、そういう実用性の関連の仕様にけっこう苦労したみたい。

 僕としては、先にタイヤを作りたかったんだけどなぁ・・・

 でもまぁ、ある程度それは目処がついたみたいで何よりです。


 で、なぜか今度はカテーテル?

 カテーテルってなんだっけ?

 血管広げてなんかするやつだよね?

 医療ドラマの知識しか無いけど、そんな感じだったと思う。

 モーリス先生ってそういうのも得意だったのかな?

 聞きたくても、もう実験に夢中で話してくれないや。

 せっかく来たのにほぼほぼ相手してくれなくてつまんない・・・なんて言っちゃダメだよね。ここにはお仕事に来てるんだから。

 すねてないで、ついでにここにも鞄以外の固定の出入り口を作っちゃおうかな。


 ちなみにこのエッセル島にはメインのおうちがあって、ひいじいさんが作った物なんだけど、ほぼほぼダンシュタのおうちと瓜二つです。

 なんでかは、いろいろあるみたいだけど、ひいじいさんがこういういたずらが好きだった、とか。ドクやカイザー、ゴーダンにアンナといった、ひいじいさんと一緒に冒険者やってた人たちの共通意見です。

 でも実際、ダンシュタのおうちを知っている人をここに匿ったことがあって、まさかのミモザ沖に自分がいるとは知らないまま過ごしてもらった、なんてこともあったらしいです。

 ちなみにこの島は、自分たちの秘密基地的なもので、部外者は立ち入り禁止。

 それでも匿わなきゃならないときは、ダンシュタのおうちだって誤解させる、なんて使い方をしたこともあったんだって。カイザーから聞きました。



 てことで、このおうちにも僕の部屋があるからね。

 その部屋に出入り口を作っちゃおう。

 宙さんお願い、って、なぜデスクの引き出しに出入り口を作っちゃうのかな?ま、いいけど・・・・



 なんか、みんな忙しそうにしているので、カイザーに言われた山小屋に向かいます。て、山じゃないけどね。実際は森の中。なぜかカイザーはそこを山小屋って呼ぶから、みんなそう呼んでます。

 そこにカイザーが主に使う鍛冶場があるんだ。発注してた武器や防具はそこに置いてある、ってことなんだろうね。


 てことで、僕は一人、家を出て、鍛冶場に向かいます。


 あーあ、また伸び放題だ。


 山小屋まで、ちょこちょこ道を確保するために草刈り?木狩り?なんかをするんだけどね。

 ウィンドカッターでできるだけ低い位置をなぎ払う。

 そうすると切り株がいい感じにステップになるんだ。


 もちろんカイザーが使うし、森の奥へ行くこともあるから、こんな風に道を作るんだけど、ここの島、どうやらいい感じに魔力に満ちているんだよね。瘴気とかじゃ無い感じの多めの魔力を帯びている。

 そのためか、木にしても鉱物にしてもなかなかに他所ではとれない良質な物が手に入ります。カイザーが鍛冶場を作る大きな要因でもあるんだけどね。

 ただそのためか、植物の発育が異常に早い。

 こうしてウィンドカッターで道を作ってるのに1旬もすれば、大地からは草が、切り株からは新しい枝や芽が芽吹いてきて、すぐに森の中に姿を消しちゃうんだ。

 おかげで、ここに来れば風魔法の腕が磨かれるよ、ハハハ・・・


 僕は、新しい切り株を作りながら、森の奥へと向かいます。


 鍛冶場の火は落としていないみたいだね。


 小屋に入ると、あら?ベーメさんとソワレさん?

 あ、ちなみにこの二人はザドヴァから最初にやってきた職人さんの中の2人。

 ドワーフのベーメさんと数少ない人族のソワレさんです。

 二人とも、というよりも職人さん達はみんな、カイザーに心酔してるんだよね。

 ほとんど神様扱い。

 どうやらカイザーって伝説の凄腕鍛冶師らしい・・・・

 どうしてもカイザーの側で修行がしたくって、ていう人がいっぱいいるから自分が見繕った、なんて話をしてたけど、まさかこの島に連れてくるぐらい信頼したお弟子さんになってたのかって、ちょっとびっくりです。

 でもまあ、カイザーが連れてきた以上、心配はいらないね。

 とはいえ、マジックバッグ使うのどうしよう。

 ここに人がいるとは思ってなかったから聞いてなかったよ。


 「あ、坊ちゃん。商品用のは奥の倉庫に固めてるぞ。」

 「坊ちゃん特製の鞄については了承してますんで、堂々と持ってってください。」

 「それとそのまま、倉庫から行ってもらっても大丈夫だからな。」

 「今更坊ちゃんのすごい魔法について口外もしないし驚きませんから。」


 あらら。

 気にしてることを先回りされちゃった。

 全部分かってる、ってことでいいんだよね。


 何かトンテンカンテン二人で作っているのを横目に僕はお礼を言いつつ、倉庫部分へと向かいます。


 ほんとに山積みだなぁ。

 そんなことを思いながらポシェットへ。

 そして僕自身もポシェットへと潜ります。


 て、せっかくここまで来て放置って、なんか寂しくない?はぁ・・・

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る