第205話 クッデ村到着
ちょっぴり遠回りして、魚の獣人さん達の集落で2泊したあと。
ちなみに、1泊目は海でホーリーする前です。
1泊して魔力を回復し、ホーリーで瘴気を浄化。その後、商会の船も陸付けしての宴会で2泊。
僕たちは、また来てね、の大合唱とともに、クッデ村に向けて再出発です。
そうそう。
マウナさん、乗船しちゃってます。
なんかね、マウナさんが潜入していたミゲル商会だけど、レッデゼッサ商会とやっぱり組んでたらしいです。
商会の有力者の秘書ってのもあるし、潜入していろいろ探ってたってこともあって、僕たちが知りたい情報=あの瘴気関連の事件 についても、彼女ってばかなり知っていたんだ。
なんでも、魔力が濃いところに生まれるタール状の魔物について、ミゲル商会は何十年も前から目をつけていたらしい。あえて魔物を黒い水たまりに近づけて放置することで、素材として何倍もの魔力を帯び、強く優秀な素材に変化する、そのことはミゲル商会の秘術として隠され、利用されてきたんだそう。
そのおかげで、ミゲル商会は大商会としてトゼでも名を馳せるようになったんだそうです。
その関連、てことなのかどうか。
ここ数年で、南の大陸の商会とタッグを組み始めたそう。うんレッデゼッサだね。
どうやら、ミゲル商会の秘術以上の秘術を産み出した魔術師、たぶんガーネオだと思うけど、彼の持つ技術とミゲル商会の持つ秘術のコラボで、さらなる技術の発展を企むとともに、南の大陸への進出の足がかりを考えているようだった、そうです。
マウナさんが今回僕らと同行したのはね、もともとマウナさんが乗っていた船は、クッデ村に向かってたから、なんだ。
トゼを出発して、クッデに向かう。
その途中で、産業廃棄物たるタールの魔物の、彼ら曰く残りかすを、海の沖合に廃棄しつつ、目的地に向かっていた、ってことらしい。
レッデゼッサの魔術師がもたらした技術。
それはタール化した魔物の一部と、他の素材や魔物をしばらく一緒に保管することによって、素材や魔物の魔力を高めて、商品価値を高める、っていうもの、らしい。
それまでミゲル商会のやり方は、タールの魔物を生み出すような黒い水状のものが、樹海やら魔物の領域に発生したときに、その場に強化したい物を持って行って放置する、ってものだったらしい。
好きな場所で強化ができるっていう新技術は、ミゲル商会にとって、すごく有意義な物ってとらえられたんだそう。
この国の大商会として有名なミゲル商会が、その発祥地では有名でも国レベルじゃ、大企業とまでは認知されていない、そんな他大陸の商会と手を結ぶだけの価値がある、って思われたんだそうです。
そんなこんなでレッデゼッサとがっつり組んだミゲル商会だけど、今、レッデゼッサの中心メンバーがクッデ村近くで新たな魔物を確保しようとしている、とのことで、その協力のため、幹部であるナグルを中心としたチームでクッデ村へ向かおうとしていた、ってことのようです。
でね。
当然、マウナさんとしては瘴気帯びたものを海に投棄して欲しくはない。
トゼ沖での、船の立ち往生事件であるダットンの襲撃事件。
あれは偶然、だったそうです。
でも、これこそ海を汚すなという神様(といってもこの世界じゃ神様ってのないんだけどね。彼女曰く偉大なる意思、らしい)の意思と思って、思い切って後ろからボスを刺したんだって。これ以上、地上の人間に好き勝手させられるか、って思いが強かったらしい。
ちなみに、彼女を乗せた海獣は、地上でのシューバと同じぐらいメジャーな海での騎乗用の魔物で、彼女の相棒らしいです。
ペカっていうその魔物は、今はこの船と一緒に泳いでます。
魚の獣人さんの集落を出発した後は、天気にも恵まれ、順調な航海です。
今みたいな冬場は、相当寒いけどね。
なんでもひどいときにはクッデ村の辺りまで、海に氷がやってくることもあるらしいです。
クッデ村より北は地上も海も魔物が強力になるって聞いたこともあったけど、航海の敵は魔物だけじゃなくて、自然も、みたいだね。
ちなみにマウナさんたちの集落があるあの辺り、潮のおかげか海が暖かいのもあって、あんまり水温が下がらないらしいです。そういうこともあって、魚の獣人さん達が居を構えたんだろう、って言ってるよ。
クッデ近くの港。
僕らは接岸し、いったん商会の人とはバイバイです。
クッデ村もだけど、その近くにある村々へと、商売に行くんだそう。
クッデ村は北の砦的な役割でもあるんで、冒険者たちがメイン。
開拓も進めようっていう人たちもいるけど、むしろ人の版図を維持するのが中心となっています。
だから生活するって町でもないんだよね。
冒険者相手の商売には、それこそミゲル商会じゃないけど、ちゃんとこの国の商会が入り込んでる。
クッデ村みたいなちゃんと国に認知されている村にはそうやって世紀の商人が入っているんだけどね、実はこの辺り、内緒の集落がそこそこあるんだって。それこそパッデ村みたいな、こっそり作られた集落がね。
うちの商会のお得意さんは、そういった集落なんだって。
獣人さん達が多いそういった場所では、珍しい商品が手に入る、のだそう。
フフフ。
そんなこと言いながら、パッデ村のみんなに頼まれたんだよね?
みんな仲良く一緒に幸せになるために、交流するのも重要なうちの商会の使命だって思ってくれてる人がいっぱいで、会頭の息子としては、とってもうれしいです。
そんなことを言いながら、僕、アーチャ、マウナさん、それにグレンはクッデ村へと向かいます。エアとキラリンも多分近くにいるんじゃないかな?今は近くに感じないけどね。
クッデ村は、辺境の村です。
大きな塀がなくて、柵が2重になっています。
冒険者が多い町。
危険だけど実入りも多いから、そこそこ優秀な冒険者も多い、らしい。
あとは、お金を稼ぎに来る短期滞在の人も多いかな?
遊ぶところもない田舎町。
気の向くままの冒険者達が楽しめるのは強い魔物を相手にできるってことぐらいだから、なかなか居着く人って希少みたいです。
そんなクッデ村にやってきた僕たち。
まずは冒険者ギルドへ向かうよ。
一度来たこともあるしギルマスも替わってないって聞いてるから、僕のこと、覚えてくれてるかな?
カランカラン
ドアを開けると、小気味良いベルが鳴ります。
で、一斉にこっちを見る人たち。
うんうん、分かるよ。
何でこんなガキが?っていう視線にも慣れたものです。
ただ、あれ?っていう表情になった人たちも・・・
「ひょっとしてダー、か?宵の明星の。」
仲間とだべってたらしいおじさんがそう言った。
「黒い魔物のとき以来じゃないか?ずいぶん大きく・・・なってないか。あれから結構立つ割には成長してないな。」
そのおっさん、そんなこと言ったよ。失礼だなぁ。あのときよりはずいぶん成長したよ。・・・て、成長したよね?
「ダー!ほんとだ。ダーだ!」
そのとき、ちょっと若めのお兄さんが僕のところに駆けてきたよ。
あ、ひょっとして
「セグルさん?」
「おお。」
セグルさんは珍しくこの地を本拠地にしている冒険者。確か『森の咆哮』って言ったっけ?以前訪れたときに走り回ってた人だ。
「よく覚えてくれてたね。あのときは本当に助かった。また会えてうれしいよ。」
あの頃は若手、って感じだったけど、すっかり中堅な感じだね。
僕は出された手を握って握手する。
「ちょっと道を空けていただけないかしら。」
僕らが懐かしんで挨拶していたら、セグレさんの後ろから、突然そんな声がしたよ。
え?って思ってそっちを見る。セグレさんも振り返ったよ。
で、セグレさん、慌てて横にずれて頭を下げたけど・・・
「ご機嫌麗しゅう。ここではダー様、と申した方がよろしいのかしら。フフフ。」
そこには優雅にカーテシーをしつつ、僕にいたずらな目を向けるご令嬢、治世者養成校でともに学ぶライライ・パリミウマムの姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます