第193話 水路を行こう
リッテンドを出た後、小屋があったという樹海の浅いところへ。
ちょうど見回りに行くっていう皆さんと行きは同行してもらいました。
うーんとね。
小屋はもう無かったです。
連れて行ってくれた人たちも「この辺りにあったんだよ。」なんて言ってたけど、樹海は魔力が多いためか、木々の成長も異常で、今ではすっかりどこにあったかわからない。当然のことながら証拠っぽいのはないみたいです。
あとは、エアの仲間が、人間が悪さした跡があるって言うので、そこも3カ所ほど回ったよ。
なるほど。
確かに魔法の痕跡がある気がする・・・
あくまで気だけどね。
うち1つは、この前、僕たちが実験に使った場所でした。
あのときは気づかなかったけど、あそこはまだ魔法陣の残骸みたいなのもあったんだ。
大地に描かれたもので、あのときは瘴気に紛れて気づかなかったんだよね。そういうのがあると思って見てなかったってのもあると思うけど。
「人為的なものだってのは、やっぱり間違いないね。」
そうアーチャが言うとおり、魔法陣を使って人為的に黒い魔物を作り出したりしていたようです。
って感じで、ある程度調査して、僕らは船に乗せてもらうために、パッデ村に近い川辺に戻りました。
川を下るのは、上るよりも何倍も速いです。
特に今回は、急いだからね。こんなに速く海に出れるんだって驚いちゃったよ。
小ぶりの船で、足の速さに特化した軽量仕様なんだって。
うちはダンシュタ
ママが引き継ぐ前なんかは、そもそも持っていたた商会用の船は、処分されていたらしいしね。ひいじいさんの頃は、エッセル号以外にもう1隻、荷物運びに特化した大きめの船があったんだって。
まぁ、ひいじさんの愛船エッセル号は別に隠してあったから無事だったのと、うちの技術班の趣味で、今では数隻所持しているんだよねぇ。
ひいじいさんの時に持ってたみたいなでっかいのが1つ。
これは、半分客船にもなっていて、どっちかっていうと前世のフェリーみたいなの。純粋な客船っていうのはこの世界にはないからね。たぶん。
船を持っていない行商さんとか店持ちの人の貿易とか、冒険者や旅人が、特に大陸間移動するには、船が必要。だけど、個人的に持ってない、っていう人のニーズに合わせた感じで作ったんだ。
馬車ごと乗れる定期船みたいなの。
春と秋に往復してるんだ。
足は、めちゃくちゃ遅いけどね。うん。他の人の商船と同じくらいの速度です。
そして、他の外洋用としては、今乗ってるこの船。
ちょっと小型。
単純にフミギュ川を遡れるサイズ。
あまり沈まないように設計してるらしいです。
これはとにかく軽いから速い。
速度自慢の軍艦だって簡単に振り切れちゃうレベル。
もしナスカッテ国にこの川の出入りをとがめられたら、なんて考えて作ったらしいです。なんとも無茶な話だよね。
あとは、もっと小さい船は数隻。
これは主に国内の川で使う用だね。
旧トレシュク領の境界線になっていた川は、渡し船だったり、船での輸送もさかんなので、これ用にいくつかあります。
他には特殊な完全なる趣味船。
小型の潜水艦に、さらに改造したエッセル号。
一人乗り用の水上バイクみたいなのとか、水上バイクに蓋をしたみたいなのとか・・・
ドクとかカイザーが面白がっていろいろ作ってます。
なんかねぇ、いろんな素材を加工して、いろんな乗り物を作るのは面白いらしい。
僕?
僕も嫌いじゃないよ、男の子だからね。
フフフ。
ちなみに僕専用の空飛ぶボードを研究中。
今のところ僕しかできない重力魔法。
結構大きな物も浮かべれるようになったけどね、これに推進力をつけて自由自在にスケボーみたいな感じで空を飛べたらなぁ、って。
漫画とか、あと、ハリウッド映画でもあったから、モーリス先生もノリノリで、4人でわいわいやってます。上下でゆっくりは簡単でも水平移動って、難しいんだよね。
それはいいとして・・・・
僕らは商会のみんなと合流して川を下り、あとは左手に陸地を見つつ、ナスカッテ国の岸沿いに北上です。
ナスカッテ国は、海岸線がフィヨルド状で、切り立った崖がほとんど。
海から船が着けられるようなところを頑張って小さな港にしてるって感じで、だから、この国にはあまり大きな船はなさそうです。今のっているこの商船ぐらいのサイズがメインかな?
そういうこともあって、それと、ナスカッテ国の人たちは、南の大陸のことを未開の地、って認識してるってのもあって、海を渡るための船っていうのはほぼないみたいです。
南には逃げた人たち=臆病者が身を寄せている国があって、こちらからわざわざ足を運ぶことはない、みたいな気持ちの人が多いみたい。
まぁ、外に目を向けろ、なんていう革新派の人もいるにはいるみたいだけどね。
ただし、船が少ないのかって言うとそうでもなくて、国内では陸路より海路が普通。
なんせ陸は危険な魔物が多い上、樹海ほどじゃなくても魔力が多くて、森が深い。だったら海から出入りした方が良い、って感じです。まぁ海にも魔物はいるんだけどね。
町は海沿いに多く作られているし、人や物の移動に船は必須。
そういう意味でも、ナスカッテ国の海岸沿いをうろうろしている船は多いです。
この季節は特に集団でいる船も多いんだそうです。
寒くなるとね、海が豊かになるんだって。
海の魔物だって、冬場は脂がのっておいしいんだそう。
人間も喜んで釣りに出ます。
けど、おいしい魚介が好きなのは海の大物だって同じ。
危ない魔物が、こんなおいしい魚貝を狙って陸地に近いところにまで現れるんだって。
その対策として、船が固まって出港する。魔物だって、船がたくさんだったら危険だ、そのぐらいの知恵は回るだろうしね。
それに出向する船には海での狩りに強い冒険者がいつもより多く雇われている。
どの船にも冒険者が乗っているのはふつうだから、複数の船だと冒険者の数がもれなく増えてさらに安全、てわけ。
そんなこともあり、船は集団になっているのも多く、そうなると、その速度はゆっくりだったりします。たとえ、都市間移動の船だったとしてもね。
せっかく僕らは足の速い船を調達してるのだから、こういう船は避けて通りたいところ。
あんまり近くを通ってトラブルで足止め、は面倒だってことで、ちょっと沖めに距離をとって航行します。
グレンはね、どうやら船の先頭が気に入ったようです。
真っ赤できれいな毛並みをなびかせて、本当に格好いいんだ。
それにね。
グレンの毛はふかふかです。
僕は、船首に立つグレンの背中にぴったりとしがみつき、顔だけを首元からぬっと出して風を浴びます。
本当だったらこんなところに立っていたら寒いだろうけど、グレンに抱きついていれば暖かいよ。
むしろ風を浴びる顔が気持ちいいぐらい。
ちなみにこの船、風でも走るし、モーターを使ったプロペラでも走ります。
どっちも魔力が原動力だけどね。いずれもうち独自の技術だね。
スピードが出るならそれに耐えられる船だってのも重要になります。
特に風なら、いくらでもスピードが出せるからね。
魔法で帆に風をあてて進むんだ。
「巨大ハリケーンが来ても帆も船体もびくともせんわい。」
というカイザーの自信作です。
てことで・・・
本当はね、今は風が反対から吹いてるけど、僕とアーチャで交代に帆に風を送って推力を上げてます。
このお仕事をしているときだけ、グレンの上でお外を見てていいっていう船長の許可が出てるんだ。
てことで、ぐでーん、てしてるみたいだけど、僕は今絶賛お仕事中なのです。
ちなみに、グレンのお仕事は索敵だよ。
目も危険察知能力もグレンには誰もかなわないからね。
まぁ、のんびりと、大急ぎで、クッデ村へと北上しよう。
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