第183話 冒険者から聞いた話
一眠りして、なんだかいい匂いで目が覚めたよ。
いつの間にかみんな戻ってきてた。ミランダたち連行組も含めてね。
ちょうど晩ご飯の時間。
ランセルたちもみんな一緒に・・・って、あれ?グレンは?
んと・・・どうやらグレンってば、何人(何匹?)か引き連れて自分のアジト、っていうか森の精霊様のところへ戻ったらしいです。
昨日、どうやら森探索チームがひどい瘴気だまりを見つけたらしいんだけど、グレンの感覚では、そこで戦闘があってタールの魔物が解体されたんだろう、って感じたんだって。
そんな簡単にあの魔物が解体されるわけないと思ったんだけど、タールの魔物なのにその魔力が著しく減っていたのと、特殊な魔法が使われたんじゃないかって言うんだ。
この辺りはするどい魔力への感知能力を持つ魔物たち独特の嗅覚みたいなもんだから説明は難しいみたいだけど、他のランセルも同意見だったらしい。
弱ったタールの魔物が人間にやられてバラバラにされたんだ、ってね。
なんかこれについては、キラキラの森の妖精たちも同意したようで、グレンに精霊様が話があるって、言われたんだそうです。
精霊様はすぐに来て欲しいようだったけど、でも、グレンってば、目覚めない僕が心配で、側にいてくれたみたい。
僕が目覚めたのを見て、それをバフマに伝えつつ、そのまま仲間を少し引き連れて戻っていった、ってことのようです。
あらら、グレンにもずいぶん心配かけちゃったね。
冒険者を連行していたミランダたちからも、ちょっとした情報が。
袂を分かったとはいえ、人によってはずいぶん長く用心棒的なことをしていたとのことで、連行中に内情をいろいろ聞けたんだって。
ちなみに領都までつれてって、って最果ての村にいたお偉いさんたちにはお願いされたらしいけど、それは断ったって言ってたよ。伝家の宝刀「私はアレク王子の近衛ですから。」で、黙らせたらしい。ハハ・・・
本当はディルとリークにそのお役目が回ってきそうだったんだけど、ジュートローさん、えっと辺境伯の下の息子だね、彼がそのお役目を引き受けてくれたそうです。
ディルとはかなり仲良しで、ちょっと昔話を持ち出したら喜んでその役目を引き受けてくれた・・・・そうです。ハハ。こういうときは詳しい話を聞いちゃダメです。僕の第六感がそう言ってるよ・・・
まぁ、それはいいとして、冒険者の話では、あの魔導師=ガーネオは、レッデゼッサとは北の大陸への道で出会ったらしい。
なんか、ザドヴァのクーデターがあったときに、どさくさに紛れて北の大陸へと逃亡しようとしたようです。
その逃亡に使ったのが、レッデゼッサ所有の船だったみたい。
その船に実は密航したんだって。
でもって、見つかって殺されかけたそうで・・・・
なんかね、密航者は船の外へ放り出してもいいんだそうです。
特に遠方へ行くとなると水も食料も、それに燃料だって大事でしょ?
予定外のお客の面倒まで見ていたら、正規の客や乗組員の命に関わる。だから船長判断で船の外=海へと投げ出すのは常識的な判断の範疇だそうです。
てことで、見つかったガーネオは船から放り出されそうになったんだけどね、ちょうどいい感じ(?)に魔物が襲ってきたそうで、その撃退をして船を救ったんだって。
そこからまずは船の用心棒って感じで乗船を認められた上、帰ったあとで会頭へと紹介されたそうです。何人かの冒険者たちとは、その頃同じレッデゼッサの用心棒として出会ったってことらしい。
でね、その初めて会ったときに、自分を優遇すればすごいことができる、と言って、転移して見せたんだそう。そのときに、すでに瘴気を使って転移してたようです。
それと、北の大陸から持ち込んだ魔物の素材。
それも見せて、こんな素材を作り出せるぞ、なんて言ったようです。
すっごく魔力を帯びた魔物の皮だったらしいから、多分瘴気を帯びてたんだろうね。
これらに喜んだ会頭は、ガーネオのことを用心棒というより、ブレインとして重用するようになった。
トレネーだけじゃなく、王都での存在感もつけようって感じで、会頭は、南部の地で怪しい研究を始めたガーネオと一緒に、なにやら画策しはじめた、冒険者たちの認識はそんな感じみたい。
道中、そんなかんじで、結構ペラペラと話してくれた冒険者だったようだけど、どうやらレッデゼッサに対して相当頭にきてたからみたい。
なんかね、ここのところ王都でもトレネーでも、実際は他の地域でも、一斉に摘発されちゃって、犯罪者っぽく逃げ隠れしなくちゃならなくなっちゃった。冒険者たちの多くは、お金で雇われているだけで、別に犯罪行為はしていないんだって。まぁ、本人たちが言ってるだけだけどね。
ただ、まぁ、襲ってきた魔物やら人から商会の人や荷を守るって契約をしていただけなら、それ自体は普通の冒険者の仕事って言っても問題ないかな?
とはいえ、命令されたからって、まともな人やおうちを襲ったら犯罪だけどね。うん。僕んちの店の襲撃、とかね。
袂を分かった冒険者たちとしては、雇い主が犯罪者として逃亡し、それと一緒に逃げ隠れとか、そんなの契約にない、って怒ってたところに、さらには金払いがグンと悪くなったってことから、もらう物をもらって契約解除だ!となったそうです。
こんなことを話してくれたのは、何でもお話しするから、自分たちを犯罪者にしないでね、ってことみたいだね。
その辺の判断は偉い人にお任せです。
「一番の問題なんだけど・・・」
ミランダが言います。
「彼らは言ってたんですよね。あの気持ち悪いドロドロした魔物は、やつ=ガーネオが、魔力の高い場所を見つけて、どこかから転移させてくるんだ、と。」
沈黙が洞窟内を覆ったよ。
どこかから?
「それって、北の大陸の樹海とか、だよね・・・」
僕の言葉に、みんな苦虫を潰したような顔になったよ。
そりゃそうだ。
転移でそんな距離を渡すなんて、あっていいことじゃない。
あっていいこととじゃないけど、でもあの転移の魔法陣が使われたところを見た僕たちは、その可能性を否定できなかった。
そう。
転移が無理なのは魔力不足から。
ガーネオは魔力を別の何か、たとえばタールの魔物の残滓、からも引き出して利用する方法を編み出した。
ある意味天才だよね、あのガーネオって人は。
タールの魔物の魔力を使えば、この距離だって転移できる、のか?
分からないとはいえ、その可能性はあるよね。
そもそも、北の大陸の樹海が、こっちの大陸の森と繋がったことがあるのは、僕たちがこの目で見たじゃないか。
どうやってか、あっちとこっちが繋がることがあり得るんだってことは、僕が向こうへ行って、こっちで待ってたドクたちと実際に確かめた。
て・・・・
そうだ。
あのとき、僕は向こうへ行って確かめたじゃないか。
だったら今回も・・・
「あのさ、みんな・・・」
僕が口を開きかけたのをゴーダンが手で制したよ。
「皆まで言うな。おまえが行ってみる、とか言うんだろうが?ダメと言ってもおまえのことだ、勝手に行かれちゃかなわんからな。」
?
「樹海に行くのは許可する。ただし、あちらにはアーチャがすでに行ってセスと合流している。行くのはかまわんがアーチャと同行しろ。セスに協力を仰ぐんだ。それができなきゃ許可はできん。」
もちろん!
もちろん、僕はそんな勝手なことをする子じゃないからね?
「それに行くのは明日だ。飯食ったらさっさと風呂入って寝ろ。いいな?」
「うん。・・・って風呂?」
「ふふふ。ダーが作ろうとしていた洞窟風呂ねぇ、ゴーダンが音頭とって作っちまったよ。あんたが寝てる間にね。」
アンナが説明してくれた。
って、お風呂?!
僕はご飯をおなかに詰め込んで、慌てて奥へと走ったんだ。
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