第179話 洞窟をアジトにしよう!
その後。
急に大所帯になった洞窟では、放置してあった亀っぽい魔物の甲羅部分とか、体表の皮とか、爪とか・・・まぁ、食べられない部分を、ドクのすすめに従ってカイザーのマジックバックへと入れておいたよ。
カイザーからは、テンションマックスのお手紙がやってきました。
びっくりするくらい硬いから、武器でも防具でもすごいのが作れるだろうって。
何に使うか、ワクワクしているようです。
甲羅はそのまま放置していたから、どけたらものすごく広い空間になっちゃった。
僕はクジ・ナザ・バフマ・バンミといった面々と、ちょっとしたお部屋作りにいそしんだよ。あ、それとディルとリークも居残り組です。
そんなメンツで、どうせなら新たなアジトにしちゃおうって感じ?
ていうか、グレンたちが人間との同居にテンション上がってたので、彼らのスペースも構築しました。
入ってすぐは火を使うからキッチンスペース。
そしてダイニングっていうか、だだっ広い空間に、イスやテーブルを置いておきます。
そして、そのさらに内側がランセルの寝床。
そしてその奥には人間用に、ベッドを人数分。
そのさらに奥はまだ見てないんだけど、細くなっていてどこかに通じているみたい。何日も、それこそランセルが占拠してから数えるとかなりの期間になるけど、何かが襲ってくるってこともなかったから、今は放置状態です。
ドクが来てすぐに、奥側には結界を張ってくれたよ。
何かがやってきた際には、この結界が足止め&お知らせしてくれるんだって。
ベッドはなんだかんだでみんな自分のをマジッグバッグに入れてたから、それぞれが開いてる場所に置いたんだ。
ここにいる間はベッドを出しておいて、引き上げるときにベッドを取り去ると、誰がこの
あ、さすがにディルとリークはベッドを持ってません。マイバッグないからね。
でも、ここに来る前に、マジッグバッグのことはお話ししたんだ。
好きなバッグにマジッグバッグの能力をつけれることをね。
でも、僕が死んだら使えるかわかんない。
ていうか、宙さんの次の主が決まるまで無理だろうな、って思います。
これはあくまで宙さんの力だからね。
僕が死んじゃったら出せないようになりそう。そうならないようにお願いはするけれど・・・
それに、みんなのマジッグバッグの中身を僕は自由にできるからね。
そういう意味ではプライバシーっていうか、僕が悪さをしようとしたら簡単です。
そんなことを話たんだけど、
「私の剣はすでにあなたに捧げました。国でも陛下でも領主でもなく、私はアレクサンダー・ナッタジ・ミ・マジダシオ・タクテリア殿下へと捧げたものです。あなたがいない世に我が身はなく、我が持ち物はあなた様の物。なんの問題もありません。」
なんて、急にディルがかしこまっちゃうから困っちゃう。
たまぁにこんな風になっちゃうんだよね、ディルって。
でもね、外ではそんなこと言っちゃダメだよ。反逆者にされちゃう。
「そんなことないですよ。騎士の剣は心に決めた主に捧げるもの。たとえ主が謀反を起こしたとしても、そのそばに付き従う、それが騎士の道ですからね。ちなみに俺の主はディル様だけど、従士だからね。従士は主の物みたいなもんだ。主の物はそのさらなる主の物でもある。だから俺の忠誠もアレク殿下のもんな。』
にやにやとリークがそう言ったんだ。
はぁ。
僕が欲しいのは配下じゃなくて仲間、友達、家族、なんだけどなぁ。
そう思ってみんなの顔を見ると、なんかニヤニヤしてるんだよね。
で、ナザがやってきて僕の頭をなでながら
「まぁ、気にすんな。あれは自分もダーの仲間で兄弟だって言ってるんだよ。」
なあんて、言う。
ナザのくせに生意気です。
ていうか、また身長差増えた?
タンク目指してるからいいんだけど、大分悔しいな。
ナザってば、僕と1つしか違わないのに、いっぱしの大人なみなんだもん。
まあそんな感じで、ディルたちにもマジッグバッグを作ろうって思ったんだけどね、なんかそこは遠慮されちゃった。
僕らと行動が一緒の時はいいけど、そうじゃなきゃ使えないから、だって。
必要な物は僕のバッグに入れてもらう、なんて言うんだから、よくわかんないや。
それでいいならいいんだけどね。
とりあえず、僕のバッグには複数のベッドがあります。
もともと、1つしかバッグがなくて、いっぱいいろんな物入れてたから、たくさん入ってるんだよねぇ。そもそも全部のバッグの空間はつながってるし。
今は、みんなが自分の好きな家具とか自分のバッグに入れたりしてるみたいで、ベッドを持ってないのは、え?まさかのゴーダン?
1つ足りないと思ったらゴーダンだったよ。
寝袋で十分とか、どうせ思ってるんだろうな。困ったものです。
僕ら居残り組は、そんなこんなで大人組が出かける前に出してもらったベッドとか使いたい家具を並べて拠点っぽく。
あ、お風呂!
ひいじいさんの趣味もあって、各家とか拠点とかにはお風呂があります。
この洞窟。メインはドンって広がってて、多分亀っぽい魔物が自分の生活用に広げたんだろうけど、脇道みたいなのはちょこちょこあるんだよね。
まぁほとんどはひび割れみたいな感じだけど。
この辺りは湿地帯っぽくて、水の匂いもするし、バンミとクジとナザで探検がてらひび割れを調査したら、小さな水たまりはところどころありました。
「崩落したら、やばいぞ。」
「大丈夫だって。そうしたら土魔法で支えりゃいいよ。」
「だから、崩壊の方が早いって。壊した瞬間生き埋めになったらどうするんだよ。」
「だって、そうならないようにナザが守ってくれるでしょ。」
「おう、当たり前だ。」
「だから!絶対に叱られるって言ってるんだよ。勝手に危ないことしたら、こっちまで正座だよ。」
「成功したら叱られないって。ていうか、はじめっから広い水たまりはあった、ってことにすればいいじゃん。」
「ダー、嘘はダメなんだぞ。それにおまえのコントロール、やばいだろうが。」
「うっ・・・それは、ほら、バンミもいるし。」
「はぁー。俺も巻き込むのかよ。ってか、おまえらのガキ時代の様子、なんか分かった気がする。」
「なんでだよ!」
ひび割れを進んだ先で、僕らがわいわいやってる理由。
えっとね。
ひび割れの先は水分が多いところがあって、鍾乳洞みたいになってたんだ。
でも一つ一つは小さい空間で、こうやって僕らがわいわい言ってるのだって縦一列に並んでる感じ。
場所によってはちょっぴり広がってて、うーんとね、シャワールーム1つ分ぐらい?に空間が広がってて、中には水たまりが膝ぐらいまであるところもあるんだ。
で、耳を澄ませば薄い岩場の向こうに空間があるのは間違いなくて、実際、複数のひび割れを調査したけど、どこも似たような感じだったんだよね。
だから僕は考えたんだ。
この薄い壁をどけちゃったらそれなりの空間ができる。
なんだったら2枚ぐらい壁どけちゃってもいいかも。
で、水たまりをプールみたいにしてお風呂にしたらいいんじゃない?天然の洞窟風呂、なんか素敵だと思うんだ。水だけど、魔法で温めれば立派なお風呂!
てな提案をしたんだよ、僕は。
そしたら真面目なクジが、ダメって言う。
ナザは、まぁ、あんまり考えていないし、バンミは一歩引いた感じで見てたんだけど・・・
「なんでだよ!」
僕が口をとがらせたのを見て、バンミは大げさにため息をついたよ。
で、おもむろに僕を小脇に抱えると、
「戻るぞ」
?
なんでそうなる?
って、ちょっと降ろしてよ!
僕が暴れても知らん顔。抱える力がちょっと増して、痛いって!
「あのな。今のはクジが正解だ。おまえの力で壁なんて破壊したらどうなるか。ちなみに、そんな馬鹿に俺は手をかさねえよ。リーダーに案を出してOK出たら手伝ってやる。分かったな?分かったら暴れるな。」
「それってバンミが手伝ったらできるって言ってるようなもんじゃない。だったらやろうよ。みんなお風呂ができたら喜んでくれるって。サプライズだよ!な、ナザも思うだろ。みんな、喜ぶよね?」
「うん。そうだな。」
「だから失敗したら叱られるって。」
「はぁ。なぁ、クジ。こいつら小さい頃からこんなんだったんだろ?大変だなぁ。」
「バンミ、分かってくれるか?ダーは思いついたら突っ走るし、ナザは面白そうなら何でもあり。なんとか止めるけど結局言い出したら無理だから、危険が減るようにって頑張っても、いっつも一緒に叱られるんだよ。いつの間にかまとめて悪ガキ扱いだ。」
「なんでクジが悪ガキ扱いされてるのか気になってたんだ。なんかいろいろよく分かったよ。なんていうか、ご苦労さん。これからは俺が味方だ。」
って、なんで二人で握手とかしてるんだよ!
とかなんとか・・・運ばれているうちに、ダイニングスペースに到着したよ。
外に出ていた大人組が何人か帰ってきてて、抱えられてる僕に不思議そうに目を向ける。
これに対してはクジとバンミが告げ口しちゃうんだもん。結局僕一人がゴーダンに叱られちゃったよ。
でも、お風呂の件はOKもらった。
だったら、そんなにしからなくてもいいじゃん、ねぇ。
先に帰ってきてたのはゴーダンとアンナ、ラッセイで、向こうに残ったのはドクとヨシュア、ミランダだったみたいです。
見張りに代わりにディルとリークが向かったみたい。
僕が叱られている間にドクとヨシュアが帰還。
報告するってことで、やっと僕も解放されたよ。ホッ。
「石の小屋、と言ってたやつの結界じゃが、強力な封印の重ねがけに間違いないようじゃ。侵入してもよかったんじゃが、感知の術も組み込まれていたから、そこは保留にした。」
「ガイガムが人を引き連れて一度石の小屋に向かいました。何かを要求していたようですが、何人かに説得されてすぐに引き返しています。やはりあの集団の主扱いのようですね。困った坊ちゃんといった立ち位置でしょうか。」
「そうじゃのお。あの様子では何かを待っているようじゃったし、おそらくは待ち人が、
「なるほどな。とりあえずはその待ち人をこっちも待つ、ということか。」
「そうなるかのお。」
ドクとヨシュアの報告に、ゴーダンもまだ待つことを決めたみたい。
と、そのとき、ディルを乗せた1匹のランセルがダイニングスペースに飛び込んできたよ。
「レッデゼッサ会頭が現れた。妙なフードをかぶった魔導師らしきやつと一緒だ。」
『フードの人間に瘴気がまとわりついていた。』
僕が黒い魔力を瘴気って呼ぶからランセルたちも覚えてくれてる。
ディルを乗せたランセルが、僕に念話で言ったから、僕はみんなに通訳したよ。
「行くぞ。」
ゴーダンが立ち上がった。
僕たちも、うなずいて立ち上がったんだ。
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