第177話 洞窟アジトでの出来事
洞窟をアジトにして4日。
なぁんにも起こってません。
ていうのは、ちょっぴり嘘です。
えっとね、初日、小屋に6人の人が転移してきたのを発見した僕ら3人。
ちなみにグレンやディルたちも含めて、小屋を見つけた後は、他の人(ランセル含む)は認識阻害の結界のお外で待機&索敵してもらってたんだけどね、あの日はあのままグレンたちランセルに見張りをお願いしました。
ちなみに、結界の中と外だけど、グレンと僕はどうやら情報を共有できるみたいで、グレンが外の情報を僕が中の情報をお互いやりとりしていた、ってことに、あとで気がついたんだ。
これに気づいたのって偶然で、グレンたちの足ではすぐそこの洞窟に戻るのにグレンに乗せてもらってるときに、そういやなんで僕らの会話に普通にグレンが入ってきたんだろう?って突然疑問に思って首をかしげたら、それに気づいたグレンがあきれたように教えてくれたんだ。
で、よくよく考えたら、自然に僕、結界の外の様子が分かってた、ってことに気づいたっていう嘘のようなお話です。
うん。全然違和感なかったです。
あの日は、グレンたちは洞窟でお留守番してたランセルたちも含めて小屋の見張りに行ってくれたんだ。
てことで僕らはまずはお昼ご飯。
コンロとかは先に出しておいたし、ママ特性のシチューをお鍋ごと出して、火にかけるだけだよ。冷凍になってるから、ちょっぴりズルして、電子レンジの応用です。
これはモーリス先生と開発したなんちゃって電子レンジ魔法です。
さすがにバリバリ理系の先生、電子レンジの仕組み、知ってました。
「と言っても、理屈だけだけど」、なんて言ってたけどね。
なんかね、電子レンジって言うだけあって、電子で調理するんだって。
どうするかって言うと、なんか電子を放出してそれを食材にぶつけてブルブル震わせ発熱するようだ、だそうです。
あくまでようだ、なんだよね。
でね、どうやって電子を出すんだ、とかそんなことはさすがに門外漢。
ただ、電子っていうのは分子の中でも外側をぐるぐるまわってるやつだ、っていうのぐらいは僕だって知ってたようです。
うん。
何を知ってて何を知らないか、自分でもよく分かってないのが、僕の残念なところ、だよね。先生に言われて、初めて分子構造、なんてものが頭に浮かんできました。
要は中性子と陽子の核の周りを電子がぶんぶん回っていて、その陽子と電子の個数が基本的には同じ。そしてその数によってなんの分子かって決まる。
水平リーベ僕の船・・・・なんていう呪文のような言葉と一緒に、思い出したよ。
ただ電子を飛ばすことはできない、と、笑い飛ばしてたんだけどね、そのとき、ふと魔力で代用できるんじゃ?って思いついたんだ。
モーリス先生もそれは面白いって言ってドクも巻き込んで考え始めたんだけどね、ドクに分子とかそれ以下の物質や波っていう概念を伝えきれませんでした。
重力に次ぐ第2弾、だね。
魔法はイメージだから、頭で無理矢理理解しても、心底当たり前だと思わなければいろいろ難しいようです。
で、多少は苦労したけど、モーリス先生のイラストでの説明と、要は水を揺らすと思うんだ、って言葉で、イメージして、温め機能だけとはいえ、ほぼレンチン魔術、完成したんだよね。
てことで、鍋の中身をレンチンしてある程度解凍してから、シチューに戻します。
先にある程度溶かしておいた方が組織が壊れずおいしいんだよね。
ちなみに、残念ながらモーリス先生にはこのレンチン魔法(?)、使えませんでした。理屈もイメージも湧くんだけど、魔力量とか属性的にも無理、らしいです。
レンチンの属性?
なんか水を揺するイメージしたからか、水魔法になっちゃった。
温めるのに水とはこれいかに、って、こういうところが魔法の理屈大好きっ子な魔導師様たちに不評な点です。
なんかね、冷やすならともかく温めるってことに水魔法の使い手は適性がないみたい。そういや、水をお湯にしたり氷にしたりを水魔法だけで行っている僕に切れたお姉さんがいたような・・・ハハハ。
てことで、このレンチン魔法は今のところ僕オンリーの魔法です。
あの日やったことは、もう1つ。
こっちへ向かっているバフマのバッグに、ランセルたちからもらった洞窟の元住人=亀っぽいやつのお肉を送りました。
なんかね、この辺りの魔物って魔素っていうのかな、魔力をいっぱい帯びているんだよね。こういうのをレストランとかお肉屋さんで売って問題になってるってところから、南部からの魔物の輸入(って言わないのかな?同じ国だし。)が禁制品扱いになってるんだけどね。
ただ、自分で狩ったり採ったりしたものを自分で食べるのは問題ないんだよね。自己責任ていうの?それに正規ルートでの販売は問題ないよ。冒険者ギルドとか商業ギルドに売るなら問題ないです。そういうところは一般の販売ルートで大丈夫なように処理してくれるからね。
後は個対個の取引でも、特に指定された物でなければOKです。
武具・防具のために、とか、研究のために、とか自分で食べるために、とかで、珍しい魔物を確保するのは全く問題ないんだ。まぁ、輸送中のトラブルがないようにするっていうような義務はあるけどね。
まぁ、魔力をたくさん帯びた素材っていうのは、特別な力があるし、何にせよ食べれるならおいしいんだよね。
ただ、アルコールと同じで人それぞれ許容量が違う。
食べてるときはおいしいって思っても、いざ体に吸収っていう段になるとトラブルになるんだよね。
症状はアルコール中毒に似ている。
気分が悪くなったり、場合によっては死に至るところも。
基本的に本人の魔力量によってその耐性は異なるから、魔導師系の人の方が耐性は高いし、一般人に比べたくさんの魔力を浴びる冒険者なんかは耐性が高いんだよね。
あと、食べてれば多少耐性がつくかな?
どっちにしろ、魔力が帯びている魔物の肉はおいしいし、この亀もどきは相当おいしいらしいです(ランセルたち談)。
しっかしどれだけ大きかったかわかんないけど、ずいぶん日にちがたっているのにまだそこそこお肉が残ってるね。
僕とゴーダンならまず間違いなく大丈夫。
ヨシュアとリークはきついかなどうかなぁっていうレベル。ディルはアウトだろう、というのがみんなの見立てです。
たくさんあるしおいしいものはシェアしたいよね、てことで、いったんもらったお肉を、さっきも言ったみたいにバフマに丸投げすることにしたよ。
バフマはスーパー執事になるってずっと言ってるんだけどね、どうやらスーパー執事なら高濃度の魔力を持つ魔物の肉を安全安心なおいしいお肉にできて当然、なんだそうです。うーん、なんか違う気がする。
でも、どうやら冒険者としての僕にも執事としてついて行くなら必須だろうと思って、アルコールを飛ばすごとく魔力を飛ばす技を身につけてくれているみたい。
で、道中の休憩時間にでも魔力を抜く下ごしらえをしてもらおう、っていう算段です。中に入れたら急速冷凍されるし、いつでもいいよ、って言ったんだけど、なんと次の日の朝にはバッグに投入されてたよ。
てなことで2日目には下ごしらえしたお肉をバーベキュー。
戻ってきたお肉の半分はママにプレゼント。
その2日目にはママとバフマから、お料理になったのがやってきました。
いやはやバッグ、便利すぎるよね。
てなことをやってたけど、何も食べてばかりじゃないよ。
ランセルに任せる、って言っても、人間組だってちゃんと働きます。
って、なぜか、ゴーダンとディル、ヨシュアとリークが組んで交互に見張りへ行ってます。
僕は?
ブー、お留守番ってなんだよ!!
でも、グレンと一緒なら遊びに、じゃなくて、現地調査に行ってもいいよ、って許可もらったんで、グレンの背に乗って現地調査という名の食材集め、です。
珍しい魔物とか、植物とか。
グレンは物知りで、食べられるものを教えてくれます。
なんかね、この辺りの魔物って原色っぽくてきれいだったり面白いのが多くて楽しい。
空飛ぶ魚とか空飛ぶマリモ。うん、何言ってるか僕もわかんない。
なんか湿地帯には飛ぶ生き物も多いそうです。
面白いね。
ちなみにマリモっぽいのは本当に藻みたいで、切ると真っ二つになるけど、それぞれがまた丸く固まって小さいマリモになりました。食べるのは無理みたいだけど、水を帯びていて絞ると青臭いけど飲める水が出るんだって。ランセルたちはガムみたいにカミカミしてました。
てなことをしながら過ごしたんだげどね、見張り班曰く、かなりの数の人が転移でやってきたみたい。あんまり大きくない小屋にあれだけ入ってたらきゅうきゅうだね、なんて言ってます。なんかね同じような荷車で1日に1台か2台やってきたみたい。荷車は同じように石の小屋の近くに放置してて、その数6台。
南部のギルド所属を中心に冒険者が多いみたいで、ディルとリークが顔だけは知ってる、って人が何人かいたようです。ヨシュアがレッデゼッサの調査の時に見た顔も何人かいたみたい。
何が驚いたって、昨日の夕方なんだけど、現れた人の中に僕も知っている人がいたらしいんだ。
ガイガム・レッデゼッサ。レッデゼッサ商会の御曹司にして冒険者養成学校の生徒。けど、彼って騎士団に捕まってなかったっけ?まさかの脱獄?
それにマッケンガー先生も同乗してたって。更迭、されてたよね?
てぐらいには事件はあったんだけどね。
まぁ、本日洞窟生活4日目です。
僕にとっては、やっとのやっと、大ニュース。
王都班、到着しました!!
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