第169話 レッデゼッサ商会の倉庫にて
ハハハ、さすがはトレネー有数の商家の持ち物です。
僕はダンシュタ近くの森の捨てられた集落から、ゴーダンのマジックバックのある場所へと移動したんだ。
ゴーダンは、トレネーにあるレッデゼッサ商会の巨大倉庫にいたよ。
こんな巨大倉庫をはじめ、店舗だったり鍛冶加工場だったり、いろんな施設をレッデゼッサ商会は持ってるんだって。
王様からのお手紙でGOが出た大捕物。
商会のあちこちから瘴気に汚染された物をこの巨大倉庫に集めるのに結局足かけ3日?
僕が瘴気として黒いって感じるその魔力は、もちろん独特な雰囲気って言うか魔力だからさ、僕以外でもコレって分かるし、探知が得意な人ならある程度離れていても場所が分かるみたいです。
そういう瘴気を頼りに集めに集めたこれらの物たち。
少数だったら、まぁ変な魔力ってだけで済んでいても、これだけ集めるとほぼほぼねっとり、って感じちゃうよ。
魔力が鼻につくってのもあるんだけど、ここにあるのは魔物の素材やら、食用の肉・乳だからね。魔力の感覚だけじゃなくって、実際鼻をつく現実の匂いもかなりキツいよ。
マジックバックから出るなり、ワッてなっちゃって、ゴーダンに笑われながら鼻から口にかけて布を巻いてもらいました。けど、うーん、くっさぁい!!
マジックバックから出た先は広い倉庫だけど、内緒の魔法を使うってことで、ここにいるのはゴーダンとヨシュアだけです。
今までも結界を張ってからホーリーをかけたから、ここでもそれを踏襲ということで、ゴーダンってば当然のように僕から魔力を奪って、この巨大倉庫を結界で包んだよ。って、ちょっと持って行きすぎだってば!!宙さんのとこを通ると、魔力、宙さんにも持ってかれるんだからね、結構減ったんですけど?
ニヤニヤ笑うゴーダンにちょっと文句を言ってから、僕はスーっと息を吸います。って臭いよぉ。集中しづらいんですけど。
「そのぐらいの方がコントロールいいんじゃないか?」
なぁんて、ゴーダンはまだニヤニヤ。
そんな意地悪するから、大好きなアンナと同行できないんだよ、まったく。
ヨシュアがプンプンしている僕の頭を撫でてるけど、子供じゃないんだからね。そういうのはレーゼにとっておいたげて。そういうと、ヨシュアはちょっと困った顔をして、「ダーも私の子ですよ。」なんて言ってくれた。はぁ。僕にとってヨシュアはパパだけどお兄ちゃんみたいなもんだしなぁ。でも大好きだよ。
ヨシュアにちょっぴり癒やされて、僕はあらためて気を引き締めます。
ここはね、領都の僻地ではあるけどちゃんとした塀の中(アハ、前世の感覚だと刑務所みたいだ。けど、塀の中=都市の中=安心な場所、だからね)。
万が一があっちゃいけないから慎重に。
力は込めすぎないように、
ホーリー・・・・
白い光が敷き詰められた瘴気帯びた物へと覆い被さるように、瞬く間に広がります。
と、同時に籠もっていた匂い、魔力的な物も物質的なものも、ふんわりと消えていく。
しばらくの後・・・・
ゆっくりと白い光は霧のように消えていき、残されたのは白っぽくなった武器や防具、その素材。あとは元食べ物、とか?
そして、魔力が消えてしまったこの空間。
清浄だけどなんていうか、清浄すぎて息が詰まる。
ここは倉庫で広いから、多分魔力のない広い密閉空間ってことで、真空と同じように僕らにとってまずいのかもしれない。
考えてみたら室内のしかも密封されたこんな空間でホーリーを使ったのは初めてかもしれないね。
ゴーダンが慌てて結界を崩す。
魔力の少ないヨシュアがだいぶ辛そうです。
慌てて、3人でホーリーの効いていない屋外へ飛び出たよ。
この建物の外に出たのって、僕は初めてだったけど、でっかい倉庫、と思ったその倉庫の建っているここの敷地自体も、ビックリの広さです。
倉庫の前には馬車をいっぱい駐められるようになってるから広い空間があるんだって。それにヨシュアが言うには、絶対見られたら困る物をいっぱい隠してるから、門まで広くとって、関係者以外から隠したんだろうって。
ほんと。
さっきまでいた集落、すっぽり入るぐらいを、ぐるりと塀で囲ってるし、領都の中の別の村みたいだ。実際、小さな森と池だか湖だかみたいなのが間にあるし・・・・
てか、ここ、なんか見覚えあるな、って思ったら、あそこに似てるんだ。
バンミたちと出会ったあそこ。隣国ザドヴァの森の中の研究所。
背の低い建物と森と湖。
なんだかいやなこと、思い出しちゃったよ。ハハハ。
ゴーダンが結界を解くと、残り香っていうのも変だけど、ホーリーの残滓っていうのかな、白い光が一筋、森に向かって進んでいるよ。
?
僕ら3人は顔を見合わせ、その光を追った。
まぁ敷地内にある小さな森だから、その光が進んだ場所にはすぐにたどりついたんだ。
そこには小さな小屋?
ゴーダンが扉を開くと、小屋っていうより、壁で囲って簡単な屋根をつけた土地って感じだった。
中は壺が綺麗に並べられたところと、地面に穴を掘って壺を入れてる途中?みたいところ、土の感じから穴を埋めたところ、って感じの3種のまとまりになっている。
そして、入ってすぐのところには鉈と魔法陣の乗ったテーブル?
鉈みたいなのも、それが乗ってるテーブルもホーリーの影響か白くなってる。
小屋の中、どころかこの付近は全体的に白くなってて、瘴気が満ちてたんだって分かるよ。
魔法陣は・・・無事みたい?
「なんだ、ここは?」
ゴーダンがつぶやく。
入っても良いけど空間の魔力が少ないから気をつけて!
「ダー、こいつを浮かせて持って行けるか?」
ゴーダンがテーブルの上の魔法陣を、ちょっと離れた所から指さしたよ。
前世で言うと、だいたいA3とかB4とかってサイズの紙ぐらいに魔法陣は描かれている。ここからじゃ石なのか金属なのか、それとも何かの魔物素材?そういうのはわかんないけど、重さはどのくらいだろう。
この世界で他に使ってる人を見たことがない、重力操作の魔法でそれを持ち上げて、僕はゴーダンの指示の下、小屋の外に持ち出した。魔法陣が反応したら危ないから、慎重に空気を圧縮して層を作って、その空気を持ち上げる形にしてみたよ。
素材は直接じゃないからわからないけど、持った感じズッシリしてるから、石か金属っぽい。
「結界系、ですかね。」
ヨシュアが魔法陣を見て、そう言った。
僕はあんまり魔法陣分かんないんだよね。
ドクに教えて貰ってるけど、なんていうか、相性が良くないっていうか、ちまちま魔法陣描くより頭でイメージして魔法を発動する方が効率的っていうか、ハハハ、お勉強、得意じゃないようです、僕・・・
「結界系か。とりあえずヨシュア、こいつを写してくれ。終わったらダー、元に戻して良いから。」
どうやら、この敷地内にいるのは僕らだけにしてもらってるらしく、ちょっとぐらい遅くなっても、誰も魔法で処理する時間は分かんないから、ってヨシュアにコピーさせるようです。まぁ、ドクに見せるのが世界一早い、よね。
で、ヨシュアに写させながらも、今朝のグレンの話をゴーダンは僕に尋ねてきたよ。ある程度はマジックバックを通したお手紙で伝えてるけどね。
僕の話を聞いたゴーダン。
この小屋のことを伯爵に報告したあと、グレン達に乗って南部へ向かう、って。
グレン達、今日明日中に着くんじゃないかなぁ、なんて話しつつ、それまでにここの後処理とか引き継ぎとかしなくちゃ、って走って行っちゃった。
残された僕とヨシュアは、魔法陣のコピーを完成させつつ(ってこれはヨシュアがやってるんだけど)、ワーレン伯爵の騎士たちの到着をのんびり待つことにしました。
って、ヨシュア、もうできたの?早っ!
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