第157話 ギルドで会議
ゴーダンと一緒に冒険者ギルドへ。
さっきの会議にギルド長もいたから、話は早い。
緊急依頼で、すでに僕らが到着した時には、いくつかのパーティやソロ冒険者たちが、憲兵さんのところへと協力に出かけた後で、尚もさらなる希望者が受付に殺到している状態だった。
僕らがやってきたのに気付いた受付嬢の一人が、勝手にギルド長室にいってくれ、って叫んだよ。あらら、注目されちゃった。
僕らの事知らない人に、古参っていうのかな、まぁ、知ってる人がなにやらささやいているようです。
きっと、A級のゴーダンの噂話をしているんだろう、ってことにしておこう・・・
ギルド長室に入ると、商業ギルドのギルド長もいたよ。他にも何人かチラチラいて、あ、憲兵の偉い人とかも・・・
挨拶をしようとしたんだけど、そんなのはいいから早く来いって手招きされちゃった。ま、ゴーダンが、だけどね。
「緊急依頼を受けてもらえる、でいいんだな。」
早口でギルド長はゴーダンに言ったよ。
こうなることが分かった上で、ご領主は先に緊急依頼の手はずを整えていて、領主の館での会議前にギルド長に依頼の件は話していたんだって。
ゴーダンは、ああ、って頷いて、そのままみんなが頭を付き合わせている机の周りへと入って行った。
机の上には、1枚の地図、ああ、これはトレネー領都のだね、が、置いてあった。
どうやら商業ギルドから持ってきたものらしく、いろんな商店の位置が記されている。
それに、なにやら石を置きつつ、みんなは相談してるようです。
どうやら石を置いているところって、両都内のレッデゼッサが持つ施設みたい。
情報を商業ギルドが出して、憲兵さんが把握し、どこに憲兵を何人、冒険者を何人って形で、人の派遣を検討しているみたいです。
僕はちょっぴり離れた所で、その様子を見ていたよ。ここでは単なる見習い冒険者、だからね。
「ダー、ちょっといいか。」
なのに、ギルド長、あ、冒険者ギルドの方ね、から直々のお声掛かりだ。
なんだろなぁ。
「ダンシュタの事件だが、お前さんの魔法で随分楽をしたって聞いたが・・・」
アハハ。なんだよ楽をしたって。
確かに、ホーリーでいろいろやっちゃった感はあるけどね。
でも僕がやったってみんな知らないはず、とはいえ、状況から分かるかぁ。
もうとっくに領都にダンシュタでの事件の情報は入っているよね。
両ギルド長だけじゃなくて、憲兵さんも興味津々で僕を見てるし。
「もし、必要ならその魔法、期待して良いか?」
ギルド長が、そう続けたんだ。
僕は、ゴーダンを見る。
好きにしろ、って目が言ってる。
僕はこの国で生まれて、生まれはダンシュタとはいえ、ここトレネー領都で長く住んだし、仕事もしている。
良い人も悪い人も当然いるけど、大切な人がいっぱいの大事な故郷だ。
そこの危機に僕ができることは、やるに決まってるじゃない。
だから、僕はニカッて笑って、「良いよ。」って言ったんだ。
そうしたら、ここにいる街の偉い人たちが、あからさまにホッとした顔をしたよ。
なんで、そこまでホッとしてるのかな?
僕、いっつも、できる限りのことをしているつもりなんだけど・・・
「あ、でもあの魔法はちょっと特殊なんだ。特定の魔力に反応してしまうんだけど、範囲がコントロールできないよ?」
ちゃんとデメリットも共有しておかないと、ね。
「それは聞いている。魔力が消える、とか、砂になる、とかだろ?そもそもその特殊な魔力ってのを帯びてることが問題だと聞いたぞ。他に被害が出ないなら、むしろどんどん砂にしてくれ。」
ニヤッて悪い笑顔をギルド長がしたよ。
部屋にいるみんなも同じようにニヤッて悪い顔。
わぁ。
悪い大人達だー。
「正直、レッデゼッサ商会には黒い噂が絶えなくてね。もともと我が領でもトップの商会だし、誰もが手を出せなかったんだが、今の状況は我がギルドとしても願ったりってところなんだよ。ただまぁ、あれだけの商会がなくなるといろいろ不足するのも事実だろうねぇ。御曹司、できれば、ナッタジ商会の規模を大きくしてもらえると嬉しいんだが。」
「おいおい商業ギルド長よ。こいつは冒険者としてここに来てるんだ。そんな話は別でやってくれ。」
「いや、ゴーダン。それも重要なことだ。我々としても街の住民にできるだけ影響は与えたくないからな。」
冒険者ギルド長の加勢に、憲兵さんも大きく頷いたよ。
そして、僕をみんな見るけど・・・
「とりあえず両親には言うけど、あまり期待しないでね。僕にはそんな権限ないし。」
「冗談。ダー君が商会の要だ、と、いつも聞いてますよ。」
「へ?」
「坊ちゃんがいるから商会は安泰だ。あれもこれもダー君がつくってものだ。物も仕組みもね、そう君の所の人達は自慢してるからね。」
いやいやいや。そんな自慢しちゃだめだし・・・
それに・・・
「あのね、僕は商会にとっちゃ跡継ぎでも何でも無いんだから。跡継ぎはレーゼ。当然でしょ?」
ちゃんとしたナッタジの子だ。
望まれて産まれた僕らの宝物。
そりゃ僕は記憶持ちで、賢い子に見えたかもしれないけど、どう考えても素の頭の良さはレーゼが上でしょ。なんせ、僕みたいに記憶なんて無いのに、0歳で僕の名前言えるんだよ?ダーチャ、だけど・・・
ここにいる人は、僕の出生の秘密を知っている人々が大半。あとなんだかんだで王子だってのも知ってるか。
だから、微妙な顔をさせちゃった。
なんていうか・・・ごめんなさい。
僕も困った顔をしていたら、ゴーダンがわざとらしく大きなため息をついたよ。
「あー、ガキが遊びたいからって、1歳の弟に仕事を押しつけるか?どっちが継ぐかなんて、成人してからの話だ。二人ともやりたいことをやったらいいだろうが。商会を継ぐ継がないなんてのは、ずっと先の話だ。もっとも、自分がやりたくないからと、弟に押しつけるなんてことするなら、俺が黙っちゃいないがな。あんたらも、こんなガキに商売の話もないだろうが。まずは目先の案件を片付けるのが先だろ?」
ゴーダンの指摘に、口々にそりゃそうだ、とか言いながら、配置の話に戻ったようです。
いざというときには、僕が魔法を使う、そういうこともゴーダンを中心に計画中。
時折、確定したことを憲兵詰め所に伝令に行く人もいたりして、なんだかバタバタ。
って、雰囲気がバタバタしてるな、って思ってたんだけどね、本当に足音がバタバタってしたよ。
派手にノックしつつ、返事もないのに飛び込んできた人物。どうやらギルドのスタッフらしいけど・・・
「ゴーダンさん。ナッタジ商会トレネー支部からの緊急連絡です。ただいま正体不明の敵に襲撃され応戦中とのこと。至急、応援に行ってください!!」
もたらされたのは、まさかのうちが襲われているっていうモールス情報だった。
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