第154話 お手紙の配達
ゴーダンから、リュックはトレネーのおうちに置いてあるって聞いていたから、僕はバックとお手紙を持ってポシェットに潜ったよ。
宙さんにお願いしてリュックから出る。
宙さんにお願いしなくても、出入り口がどこかはなんとなく頭に浮かぶから分かるんだけど、やっぱり宙さんが住む空間だから、挨拶は大事。
最近は、個別のバックをちょいちょいつくるために、ここにも来てるし、お話しもしてるし、たっぷりと魔力も供給してるから、宙さんのご機嫌はとってもいいです。
なんか、僕の移動も快適になってる気がしてるし。
まぁ、これは僕の慣れもあるかもです。
トレネーには、ナッタジ商会の支店があります。
けど、それとは別に冒険者ギルドにほど近い場所に、アジト?って言えばなんだかそれっぽくて格好良いけど、まぁ、昔っから拠点にしているおうちがあります。
支店より便利だし、宵の明星の本部?みたいな感じで、ずっとここにあるんだ。
ちなみにナッタジ商会トレネー支店はちょっぴり郊外にある。
支店を作ったのは、このトレネー領主ワーレン伯爵の要請みたいなもんだったからね。
ひいじいさんの頃からのうちの乳製品のご贔屓様で、トレネーのゴチャゴチャした中心街から少し離れたお金持ちが居を構える郊外に住んでいるから、その近くに支店を作って欲しい、って感じだったみたいです。
ママも、支店を作るときに、自然が豊かなこっちの方が商品イメージに合う、って思ったようで、今では乳製品をわざわざ郊外にまで買いに来る人もいっぱいいるんだ。
ただ、冒険者活動とかは、そっちに住んじゃうとちょっぴり面倒。町の外に行くにも門も遠いし、ってことで、冒険者だけしていた頃からのトレネーの拠点は便利に使ってます。
で、リュックは、その拠点に置いてるってことだから、安心して僕も出ることができる、ってことです。
トレネーの拠点に出ると、こっちにいるはずのヨシュアもゴーダンもお留守でした。二人ともどこかへ行ってるのかな?
まぁ、昼過ぎだしね。
本日は、僕は午前中は養成所へ行ってて、帰ってきてご飯を食べた後、セリオとちょっとだけおしゃべりしての、トレネーです。
まだ夕方には早い時間だから、さて、どうしよう・・・
僕は持ってきたバックとお手紙を見てちょっと悩みます。
陛下からの手紙、早い方がいいんだろうなぁ・・・
ミランダたちもなんか深刻そうな顔していたし。
まずは、これを届けるかな?
僕はそう決めて、「領主に手紙を届けに行きます」っていうメモを残し、いざ出発です。
トレネーの拠点は、冒険者ギルドにほど近い。
ていうことで、そろそろ早めに帰って来る冒険者がチラホラ。
一応、僕の所属はトレネーになっているってこともあって、見たことのある顔が散見されます。
時折、声がかけられたり、手を振られたり、僕に気付く冒険者もそれなりにいて、なんかホームって感じがするよ。
何人かからは模擬戦の申込があったりして、それを聞いている道行く人がビックリしたり顔をしかめたりしているのも、なんとなく懐かしい感じ。
結構長いこと不在にしてたから、新人さんっぽい冒険者は?を頭に浮かべてる人もいる。
ちなみに、僕に出される指命依頼のナンバーワンは、新人さんの鼻っ柱を折る、だったりします。
僕はいまだに見習い冒険者。
正式な冒険者には成人しなきゃなれないんだ。
つまり新人さんってのは15歳以上だよね。
あのね、田舎から出てきて、自分はものすっごく強いって勘違いしちゃってる新人さんがいっぱいいます。
考えてもみて?前世で言えば大体高校生。
アスリートとして、ファイターとして、村じゃ誰もかなわない腕っ節自慢の人が都会に出て、俺ツェーって粋がっちゃってる。
中には、同じ年で先に冒険者を始めている人とか、一見ヒョロッとした人とか、そんな人が自分よりランクが上で、いい依頼をゲットしているのが気に入らない人も。なんであいつがDなのに自分はF?なんてごねる人もいる。
だったら、依頼こなして、実績積んで、さっさとランクを上げれば良いのにねぇ、って僕なんかは思うんだけど、それでもごねちゃう人がいるんだよね。
まぁ、ふつうは強面の先輩冒険者とかが、いろいろと勉強させちゃうんだけどね、僕がいるってわかると、ギルドスタッフが僕に振ったりするんだ。
5歳とか6歳の頃でもこういう依頼いっぱいあったからさ、10歳も下の子供に、自分が強いと思っている人が負けたら、そりゃ凹むよね。
強面の大人にやられるよりも、お利口になるんだって。
まぁ、そのまま冒険者をやめちゃう人もいるみたいだけど、それでやめちゃうような人はどっちにしろ長続きしないから気にしなくて良い、って言われてます。
そうやって、僕に新人時代に負けちゃった人が立派に冒険者やってると、2年もすると立派に先輩冒険者だったりして、新人指導に回ってたり。
そんな人達が模擬戦しようぜって、道中声をかけてくるんだ。
僕を知らない人は目を白黒させちゃってます。
間もなく11歳といっても、見た目はもうちょっと、下に見えちゃうからさ、まぁね、がたいも良くなってきた売り出し中の冒険者たちが模擬戦模擬戦言うのを見たら、何あれ?ってなるのも分からなくはないよね。
僕は、そん新人冒険者たちを面白いなって見ながら、また、冒険者じゃない怪訝な顔をしている一般の人に申し訳なく思いながら、ギルド界隈から離れ、ちょっぴり急ぎ足で、領主の館へと向かったんだ。
ワーレン伯爵。
目つきはよくよく見ると鋭いが、立派で優しげなおじいちゃん。
皇太子の息子となったために、陛下は一応僕の祖父なんだけど、その祖父よりもちょっぴり年上の方です。
でも、年寄り感はゼロだけどね。
頼りがいのある領主って感じ。
僕のひいじいさんのエッセルの善き理解者にして本人曰く親友だそう。ドク曰く、ひいじいさんは親友とまでは思ってなかったとのことだけど。
ちなみに陛下もひいじいさんをそんな風に言ってる。こちらもドク曰く、こっちもそこまで思ってない、らしい。ひいじいさんって・・・
ひいじいさんの関係から、ゴーダンも伯爵とはそれなりに付き合いが長いそう。
一応、貴族で一番最初に僕の後ろ盾っぽい位置に立った人ではある、かな?
宵の明星は、この領でも随一の冒険者パーティで、そういう繋がりとしても、良い関係を繋げている、とは思ってます。
少なくとも、僕の信頼する代表格の貴族様。
今じゃ僕の方が地位が上らしいけど、実質陛下と仲良しだから、まぁ、どっちが上とかはなく、親戚のおじさんな感じかな。
ワーレン伯爵のおうちの人は当然僕が王子になっちゃったことを知っている。
けど、僕が冒険者の恰好をしているときは、うやうやしくしないからありがたいんだ。
てことで、僕が一人で領主の館にやってきたのを見た門番さん。
「ダー君。強いのは分かってるけど、一人でこんな所まで歩いてくるのは感心しないなぁ。早く、入りなさい。」
なぁんて、ちょっぴり小言を加えつつ、門を開けてくれたよ。
どうやら、離れた位置で僕を発見していた人が、中に連絡をしてくれていたよう。
門を入ればすぐに見知った執事さんがお迎えしてくれたんだ。
そのまま執事さんに連れられ、お屋敷へと入る。
応接室へ・・・・と思っていたら、そのまま2階へと連れられちゃった。
コンコン、って執事さんはある部屋をノックする。
ここって、確か執務室とかいっていた伯爵のお仕事部屋だよね?
返答があって、促されるまま部屋へ入る。
その中には、何人かの人が座っていて、どうやら真剣な顔でお話し中でした。
その中には当然伯爵もいたし、あ、ゴーダンもいる。
僕は、伯爵に手招きされて、そちらへ行ったよ。
あらら、ゴーダンと伯爵以外が、慌てて立ちあがったと思ったら、片膝をついて礼をしちゃった。どうやら僕が王子って知ってるらしい?
まぁ、ほとんどの人は顔を知っているし、中でも憲兵のナンバーツーのおじさんは、僕がこういうのが苦手なのを知ってて、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべてるんだもん、からかってるよね?
まぁ、知らない人もいるから、全員が全員からかってるわけでもなく、どうやら真面目に控えてくれたみたいなので、僕は慌てて、楽にしてもらう。
そうして、僕は、ここに来た目的、陛下からのお手紙をワーレン伯爵に渡したんだ。
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