第129話 王都散策(2)

 せっかくの王都なのになぁ、と、僕は、みんなを見上げた。

 みんなのことは大好きなんだけどね、この3人と歩いてても王都感がないんだもん。

 ダンシュタに戻って、3歳からの僕は、なんだかんだで、この3人と一緒に育ったみたいなもんだけど・・・



 たくさんいた元奴隷の子供たちの中でも、この3人は、なんだかんだでずっと僕の側にいてくれて、商会に出しているいろんな品物の試作品作成には多大な協力もしてくれた。

 なぁんて言うと、すっごく格好良いけど、僕が何をやろうとしているかわかんない大人達に、いたずらばっかりしていると思われて、よくいっしょに怒られてくれた仲なんだよね。

 ハハハ、今考えると凄い話かも知れない。

 僕が「実験する」って言うと、絶対ついてきたのが、この3人。

 他にはとにかく注意する子、大人に許可をとるように勧める子、こっそりと逃げちゃう子。ふつうにチクってばっかりの子もいたっけ。


 クジは、僕らみたいな、まぁ、父親が同じ奴隷仲間?の最年長で、とにかく僕らの保護者をやらなきゃ、なんて思ってるって感じの子だった。

 といっても、6歳上なだけだから、僕が戻った3歳の時には、今の僕より下の9歳のはずだったんだけどね。なんか、今の僕より大人だって思えるのは、なんなんだろう・・・


 ニーは、子供たちの中でも1番のしっかり者。世話焼きのお姉さんって感じかな?

 何かしようとすると、注意しつつも協力してくれる、僕だけではなく子供たちみんなの姉御的存在。僕より3つ上だ。

 しっかり者ってだけじゃなく、頭もいいしよく気がつくから、今じゃうちのドクター、モーリス先生の一番弟子。


 ナザは、多分僕と一番近い奴。年も1つしか変わらないのに、すでに身体は大人顔負けで、無茶苦茶理不尽だと思うけどね。

 だってさ、成人してるかしてないか、ぐらいに見られるんだもん。

 僕との身長差にいたっては・・・

 僕が気にしているのを知ってるくせに、すぐに頭の上に肘をおいてからかうんだもん。やになっちゃうよね。


 この3人は、遠出をするときもなんだかんだでついてきたり、地元でだって、いっしょに遊びに行く仲なんだ。

 だから、街ブラのお供っていうか、いっしょに散策するメンバーとしては、一番多いかも。

 特にトレネーの領都だと、ほとんどこの3人の誰かがくっついてる感じかな?


 だからね、違和感はないけど、新鮮味もない。

 それにさ、みんないわゆる成長期ってやつなんだろうけど・・・


 なんで僕以外、こんなにすくすくと育ってるんだよ!!


 体格の良いナザはもちろん、女の子のニーだって、僕よりはるかに背が高い。

 クジにいたっては、成人した今もぐんぐん伸びていて、ひょろ長いけど、もうラッセイよりも背は高い。きっとまだまだ伸びるんだろうな。まだ、この前の誕生日で17歳になったばっかりだしね。


 産まれた時の環境は皆同じ。

 なんだったら、僕がこっそりと前世知識でなんて思われつつもアドバイスしたおかげで、食べ物に関して、ちょっぴり改善してるぐらい。

 しかも、売られた後、ご飯に関しては、ママはお貴族様と変わらない物を食べさせてもらってたから、お乳だって栄養がよかったはずなんだけどなぁ。


 ママも背は低いし、そもそも、赤ちゃんで魔力の道を通しちゃったから成長しづらいのだろう、なんていわれてるんで、仕方ないっちゃ仕方ないんだろうけどね。

 でも、こうやって一緒に歩いていると、なんだか理不尽を感じちゃうよ。



 なんて、ブツブツ言いつつも、バカなお話しをしつつ、のんびりと散策する王都は、やっぱり華やかでいいです。


 石造りの街並みは、よく前世の物語では中世ヨーロッパ風なんて表現されていたけど、そもそもヨーロッパなんてのは、中世からあんまり街並みは変わってない所も多いんだよね。ただ、歩く人たちの服装とかが、そういうのを彷彿とさせるのかな?とは思うけど、むしろここ王都は、いろんな時代のいろんな世代のいろんな身分の、そんなのがごっちゃになった感じで、むしろ現代的かもしれない。

 なんていうか、鎧を着てうろうろする人もいれば、Tシャツチノパン的なのもいるし、どこぞのロックバンド?ってのもいる。

 燕尾服にメイド服、喫茶店の制服みたいなのも多いし、ゴスロリ系から、セーラー服っぽいのとか、お嬢様なワンピース。

 前世の中世ヨーロッパの感じの服っていうよりは、コスプレ会場とか、ビジュアル系のコンサート会場とか、そんな感じかも、って思う。



 そんな町中での服装も、やっぱり身分とか立場で違うから、服装によって大体どんな人かはわかるようになっている。

 あくまで大体だし、僕みたいにその場その場で替えたりするのもいるし、一概には言えないけど、そもそも、お金の要ることだし、買える物が違うから、自然と身分や職業が分かる服装になってるって感じ。


 ちなみに僕は今は、そこそこの商人の子がお供を連れて散策している、の図になってるはず。

 質の良い布をあえてダメージ加工した感じの服、だね。基本的には冒険者の時と変わらないけど、あえて防衛には役立たない、質の良い生地の服、に見える感じ。

 周りの人は、どこぞの冒険者に憧れる坊ちゃんがお忍びのつもりでいるんだろうな、なんて微笑ましく見てくれている・・・と、思う。まぁ、本当はちゃんと防御もできるなかなかの素材で作ってはいるんだけどね。


 ちなみにクジは成人してから、冒険者の時とナッタジの従業員の時とで、まったく違う恰好をしてる。

 でも、基本的にはナッタジのお客様に会ったときに、好感を持ってもらえるように選んでるって言ってた。本当は、僕にじゃなくて、ナザに言ってた、だけどね。

 どこで見られてる分からないから、変なことはできない、なんて言ってるんだって。

 これはもともとヨシュアの教育のたまもの、らしいけどね。

 元奴隷の子たちの服装チェックに、クジはうるさいんだって、いろいろ僕の耳にも入ってます。

 てことで、今日はゆったりとした白いシャツに渋いグリーンのパンツを着てる。

 シャツには、少しだけレースやドレープが入っていて、さわやか、なんだそうです。これ、ニー談ね。


 そのニーは、ベージュのブラウスに、膝丈チェックのプリーツスカートだ。

 ちなみにプリーツスカートは、ちょっぴりリッチなんだ。

 だってさ、布がいっぱいいるし、プリーツを作るのは技術がいる上、作業量も多い。当然お針子さんの値段が上乗せされるから、お金持ちの人用のアイテム扱いされるんだよね。

 ただし、ニーは器用だからね、実はこれお手製なんだって。

 お小遣いを貯めて布を買って、あとは自分で縫ったらしい。

 ちょっぴり怖いのは、

 「人を縫うより簡単だよ。」

 なんて言ってるところかな。

 モーリス先生の指導で、外科的な手術のお手伝いもするんだって。で、モーリス先生以外に、人を切ったり縫ったりできるのは、ニーだけ、なんてご自慢です。

 ただ、この世界、外科手術はモーリス先生以外やってないし、人に聞かれたら、ダメな会話だよね、これ。ハハハ・・・


 なにげにナザも、服装には気をつかってるらしい。

 もともとは、着れれば良いって感じだったんだけど、クジが怖いから、ってはじめは言ってた。

 けど、最近、身体がデカくなって、しかも横もある、っていうか、格闘家みたいなムキムキマンになりつつあるから、男の子からも女の子からも、身体を褒められるようになったみたい。

 てことで、基本的にはシルエットが出つつも、わざとらしくないやつを選ぶのが難しい、だそうです。

 今日は革の短パンに、半袖のシャツ。シャツの生地はどうやら魔物の皮の一種みたいで、伸び縮みがしてフィット感が素晴らしい、なんて言ってるけど、知らんがな、って放置しても、僕は悪くないと思うんだ。


 この中では、僕がなんとなく一番地味な恰好になってる。けど、少々地味な恰好をしたところで、髪が目立っちゃうからなぁ。

 ちなみに、帽子は町中じゃほぼかぶってる人はいないんだ。

 ダンシュタ帽とかみたいに、流行で帽子をかぶる場合はあるけど、基本的には旅人のアイテムな感じかな。

 帽子は髪を隠しちゃうから、その人の能力を隠してますって言ってるみたいなものなので、マナー的にはよくないってのもあるしね。

 ほら、目出し帽で町中ウロウロしたら胡散臭く感じるでしょ?前世の感覚で言えばあれと同じ。街の外だといろんな保護の道具として帽子も使うから、問題ないけど、町中では、違和感が大きいかな?

 あ、そう考えるとヘルメットみたいな感じって言うのが正解かも。

 ヘルメットかぶって買い物来てる人、怖いよね。

 コンビにでも、ヘルメットかぶったまま入らないで、って書いてるのあった気がする・・・

 あ、でも、ダンシュタではダンシュタ帽っていうのあって、未だにそれをかぶってる人は一定数います。風物詩的に、町によっては帽子をかぶってる場所もあるって、一例かな?

 この辺、気候とかのこともあって、地域差はあるんだよね。


 ちなみにダンシュタ帽っていうのは、僕発祥の簡易帽。もともとこの髪を隠すためのアイディアだったんだけど、なぜか流行っちゃったんだよね。

 ちなみにこれ、ほぼほぼナイトキャップな見た目で、僕的にはおじさんがしてるのは、シュールだったりするんだ、ハハハ・・・




 そんなこんなで?王都では、そうそう浮かない4人組が出来上がっている、はずではあるんだ。坊ちゃんとその仲間たち、は、まぁまぁいる、そんなメンツ、だね。

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