第127話 怪しい商会たち
コンコン・・・
「はい?」
僕の部屋のドアがノックされた。
誰だろう?
今日は朝から大変だった。
商会に行ったら、禁制品がないかって、チェックしてるとこだったり、ああでもないこうでもないって、パーティメンバーのマジックバックの素材とデザインを考えたり、午後からは、ガイガムのおかしな話を聞いたり・・・
で、ミランダが聞いたとおり、冒険者としての依頼が来た。
これは騎士団からの依頼で、宵の明星宛。
実質は、僕が、騎士団指定のお店でウィンドウショッピングをしてね、っていうもの。
僕が行くと、眠っている素材の魔力を目覚めさせられる可能性があって、凶悪な禁制品に宿る魔力とか、下手したら魔物の残存意識が目覚めるから、禁制品の発見に役立つはず、だそうです。
なんか、複雑な依頼・・・いや、内容じゃなくて心境的にね。
この話をチラッと聞いたナザなんて、わざわざ夕食を一緒に食べたい、とか言う名目で、僕を笑いに来るんだもん。魔力が押さえるのが下手なのが役立つなんて、さすがダーだ、だって。グーパンしたけど、無駄に強くなったナザには効きやしない。ちょっぴり複雑です。
ただまぁ、ナザも僕をからかいに来ただけじゃなくて、今、商店とかで密かに囁かれているネタも持ってきたよ。
ナザは、今、ラッセイの見習い冒険者だけど、時間があれば、商店のお手伝いをしてくれてる。力持ちだから、主に配達とかしていて、結構知り合いの商店の従業員さんも多いみたい。
僕は、禁制品と聞いて、素材の魔力がってことだったから、てっきり関係するのは、服飾か武器防具関係だと思っていたんだけどね、意外とその取り扱い業種は多そうなんだって。
うちの商会は、もともとメインで乳製品と器関係を、王都では扱っているんだ。
はじめはひいじいさんたちが集めた素材とか、それをもとに作った前世知識を応用した道具を売るなんて形で始めた商会だけど、店を構えるようになると、庶民の生活を向上できたらな、って思っていろんな家畜を飼うようになったんだって。
で、いろいろ扱ってるなかでも、乳製品が味も質も評判になって、貴族も御用達、っていうより、仲よしの領主とか、王族とかが絶賛したから、ナッタジといえば乳製品、という風潮になったんだ。
ママの代になって、いろんな偉い人から出店をお願いされて、本拠地のダンシュタ以外にトレネーの領都とこの王都に支店を作ったんだけどね、この王都では日持ちのするものを中心に扱ってる。牛乳は無理でもバターやチーズは、冷蔵技術のあるナッタジでは日持ちするものになってるんだ。
当然、こういうのは、レストランにも需要がある。
でね、いくつかのレストランにも卸してて、ナザはこの配達もよく行くんだって。
で、倉庫を管理している従業員さんに聞いた話。
レストラン業界で、特別な客に出す特別な料理、というのが密かに流行ってるという噂があるんだそう。
何、それ?って聞いたら、そういうところのレストランでは、秘密を知った従業員が消されちゃう、なんて物騒な噂が・・・
で、その秘密の食材は実はそんな従業員ではないか、なんていう、ほぼほぼホラーな話になってるそう。
真実は分かんないんだけどね、そういう噂のある店ってのは、たいがい大きなお店で、従業員の入れ替わりも激しいんだそう。
で、共通することとして、何かを聞いた従業員が突如辞めたかなんかで、急に出勤しなくなったってことらしい。
しかも、そういうときに限って、失踪した前後に、怪しい獣のうなり声のような音が倉庫からしたっていうんだ。
ナザはこれが、禁制品の類いの話じゃないか、具体的には、秘密の魔物の肉が提供され、それに携わった人をどこかへ放逐しているのでは?って思ったって言うんだ。
「まぁ、これは単なる俺の勘なんだけどな。」
そう言って、食事を終えたナザは、帰っちゃったんだけど・・・・
で、夜。
部屋で、明日のルートを考えようって、リネイからもらったらしいお店リストを見ていたら、誰かが僕の部屋のノックをしたんだ。
「はい?」
僕は、答えてドアを開けた。
そこにいたのは、セリオだった。
セリオを部屋に招き入れたんだけどね、どうやら、外から帰ったところらしい。
ご飯の時にはいて、一緒にナザの話を聞いてたんだけどな。
ていうか、子供が夜の町に出たら危ないのに!
「ナザが言ってたろ?禁制品の話。で、そういえば近い話を耳にしたな、って思い出したから聞きに行ってたんだ。」
セリオは、僕の2つ上の12歳。あれ13歳にもうなったんだっけ?
どっちにしろ成人前で、リッチアーダ商会の跡継ぎとして勉強している身だ。
一応商業ギルドがやってる塾みたいなのに通ってて、同じく商店会主のご子息たちと仲良くしてるみたいだけど、そのご子息達の間で、1年以上前から、不気味な声がして、従業員がいなくなる、っていう噂はあったんだって。
で、それに関して、僕も南部へ行く前に会った、リコライとリーザに何か知ってることはないか、って聞きに行ってくれたらしい。
でね、やっぱり結構な業種で似たような事件が起こってるらしいって分かったんだって。
それは、服屋とか防具屋だけじゃなく、またレストランだけでもなく、はじめにそういうのが噂になったのは、宝石屋さんじゃないかって。
その宝石屋さんは、魔物から出る魔石をきれいにカットして、宝石として売っていたらしい。
で、その倉庫から獣のうなり声がする、という噂が立って、呪いの宝石だ、なんて、噂が蔓延し、結局つぶれたらしい。その宝石屋の祟りで、噂を流した人達の店に、呪いの獣が現れて従業員を掠うんだ、というのが、今一番流行の噂、だそう。
それと、セリオの話では、最近南部に頻繁に行くようになった商会が中心だ、とのこと。
もともと、南部へは、貴族慣れする修行ってことで、子連れで訪れる商人ってのが、そこそこいるんだって。特に商売が認められて貴族になってる商人なんかは、そういう行商的なことを経験させるそうです。
けど、ここ数年、そういう目的とも思えない商人が増えたそう。
つまりは、素材目的、だね。
南部では、見知らぬ魔物がたくさんいて、しかも強いのが多いから、わざわざ南部まで買い付けに行くのは不思議でもない話。
そういうのもあって、街道はそれなりにきちんとしているし、だからこそ養成校の合同演習なんてのも開催できたんだけどね。
ただ、そうは言ってもルールがあって、一般客相手に扱っていい素材は、許可制になっているんだって。
南部か王都の研究機関でこれで商売してもOKだよってお墨付きをもらって、はじめて流通に乗せられるそうです。
ちなみに個人間、特定人間なら、許容されるらしい。
珍しい素材が欲しかったら、個人ベースで発注や売買が必要。少なくとも、店で並べて売っちゃだめ、なんだって。
「これリスト。けっこうつぶれている店もあって、それは×を書いてる。よかったら参考にして欲しい。」
セリオは、そういうと、商会リストを渡してくれたよ。
わざわざ怪しい店をピックアップしてくれたんだね。
なんか、僕を助ける、なんて、大見得切ってたセリオだけど、地味に嬉しい協力をしてくれるね。
このリスト、そして、リネイのリスト、そして王都の地図。
僕は、これらを見比べてにらめっこした。
さて、どういう順番に回ろうか?
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