第121話 久しぶりの学校
久しぶりの学校です。
王都に戻って3日目、かな?
ナハトは、ヨートローの領事館に戻ったから、はじめの頃と一緒でバンミとバフマ2人が護衛役。
で、相変わらずの徒歩で行きます。だって、やっぱりその方がはやいんだもの。
治世者養成校の校舎に着くと、丁度姉様がやってきたよ。学校と同じ丘の上に住んでて無茶苦茶近いのに、しっかり馬車で来てました。
フフ。徒歩はこの養成校では僕だけかな?
どうやら、防犯も兼ねてるから、徒歩での登校は非常識、なんだって。
まぁ、要人の子供しかいないのが、治世者養成校だし、仕方ないです。
「アレク、やっと帰ってきたのね!」
姉様が、僕を見つけて駆け寄って・・・は来ないけど、嬉しそうにこっちへやってきたよ。有事じゃないのに走るのはマナー的にNGなんだって。
僕は各地にいる友達と会うときは、大抵はお互いに走り寄るんだ。
で、久しぶりってハグをする。そのときが最高に幸せです。だから、このマナーに関しては、王都でないときは許してもらってる。みんな、友達に走り寄る僕のことをニコニコ見てくれるんだ。王都以外ではね。
特にお勉強としてマナー講座を受けるところでもある治世者養成校で走る、なんてことは絶対ダメって、さすがの僕でも学んでいます。
どうも、身分が上になるほどゆっくり歩かなきゃダメなんだって。
そのくせ、身分の高い人の前を歩くな、とか、ほんとわけ分かんない。
速く歩けば追い抜いちゃうの、当たり前なんだけどなぁ。
マナー講座で学んだ歩き方を言うとね、偉い人は道の真ん中をゆっくりと歩くんだ。で、その視界に入らないように、周りの人は端っこを移動する。ただし追い抜くときは、小さくなって、従者を通して挨拶をしてから通り過ぎる。通り過ぎる人は小さく丁寧に挨拶するけど、偉い人はそれに返事をしちゃダメなんだ。だって、通り過ぎるのは不敬だから、気付いてしまったら、通り過ぎる人を咎めなくちゃなんない。だから気付かないふりをするのがマナーなんです。
僕みたいにチビが相手だと、通り過ぎるのは大変だよ。僕の視界に入らないように通り抜けなきゃなんないんだから。実はそういうのもあって、従者だったり、同級生たちだったりが、僕のことを抱き上げるんじゃないか、って、最近はちょっと疑ってます。
てこともあるのかないのか。
ゆっくりと、でも多分この場でできる最速の歩みで僕に近づいた姉様。
ハグをすると、そのまま、抱き上げちゃったよ。
「帰ってきてたの?いつ?」
「えっと、3日前、かな?」
「なんで連絡来ないのよ~」
「あれ?ゴーダンが報告してるはずだけど?」
「ちっがーう!王宮に報告ないわよね?」
まぁ、帰ったときにゴーダンがギルドに報告に行ったのは間違いない。冒険者として報告しなきゃなんないからね。で、その報告は直ちに依頼者である王に届けられている。だから、そういう意味でも、王宮に報告はあったはず、なんだけど・・・
姉様は聞いていないのかな?
「あのね、私は義理とはいえ、ちゃんとした家族のつもりでいるの。私だけじゃなくて兄様達もお父様、お母様も、よ。大事な弟が、長い間危ないところに行っていたんだもの心配もするし、会いたいって思うわ。なのに一言も連絡ないって、悲しすぎると思わない?」
「あー・・・。」
そう、かもしれない。
兄様とか姉様って言ってるけど、僕の中では、王子っていうお仕事上の家族っていうか、名前だけの感じが拭えてないのかも。
僕にとって、一番の家族はママで最近ではレーゼだ。そしてパパになったヨシュアやゴーダンたちパーティメンバー。特に初めから一緒のみんなは、ママと同じぐらい家族だと思う。
ほぼ家族、近い親戚って思えるのは、ナッタジ商会のみんなだし、それより近いのは奴隷の時から一緒の子供たち。半分血の繋がった、僕の側にいてくれる兄姉たちだ。
リッチアーダ家の人だって、親戚だし、身内だって言える。
でも、王家は・・・
僕にとって、王家っていうのは、感謝はするけど、大切な人達だと思うけど、ギルドマスターだったり、僕を慕ってくれる各地の友人たちと同列の大切な人達、としか思えないのかも。
でも・・・
家族、か。
そうだよね、僕は王太子の息子として、貴族の世界では認識されてるんだ。
それに、本当に王家の人達は僕のことを末の家族、として、大切にしてくれてるのは分かってる。僕とは温度差があるのも、みんなだって気付いてる。けど、それでいいって、みんな許してくれていて、だからこそ、もうひとつの家族だって、ずっと口では言ってるのに。
なのに僕ったら、王都に戻って、ママやレーゼ、リッチアーダのみんなと会えて、嬉しくて、家族のもとに戻ってきたっていう喜びで、姉様に会うまで王家の人達の顔を浮かべもしなかったって、今、気付いたよ。
「もう。アレクってば、私たちのこと忘れてた、なんて言わないでしょうね!」
だからそんなことを言う姉様に、返事が出来なかったんだ。
「え?ひょっとして本当に忘れてたのかしら?姉様、ちょっとショックだわ。」
「えっ、あの、ごめんなさい。その・・・・」
「フフフ。嘘よ。意地悪言ってごめんなさいね。あなたが帰ってきたっていうのは、お父様から聞いて知っていたの。でももしかしたら、もう学校には来ないかもって、当分は会えないかも、って言ってたから、今会えてとっても嬉しいの。フフ。アレクに忘れられていても、私たちはちゃんと覚えているから大丈夫。あなたは大切な家族なんですからね。反抗期のお子様が家族を無視するのは当たり前だって聞いてるし。フフフ。」
反抗期、って・・・・
10歳の僕より14歳の姉様の方が、きっと反抗期に近いと思う・・・
そうは思ったけど、抱かれているから意識せずとも流れてくる姉様の優しい気持ちに、僕は、僕も姉様達のこと大切だよ、って、やっぱり思ってしまいます。
ごめんね、忘れてて。
王家の人達も、ぼくの大切な家族、だよ?
心の中で、反省反省・・・
そんなこんなで、姉様に抱かれたまま、教室へ。
教室では、全然メンバーが替わっていなくて、ちょっと笑っちゃった。
年に4回の入学式と、自由卒業の養成所だから、フルメンバーチェンジしててもおかしくないのに、全然替わってないんだもん。
久しぶりの挨拶と、その後のことを質問攻めになりそうな、なんだか前世での夏休み明けの学校みたいなノリの雰囲気で教室が華やぎます。
と・・・・
ズシンズシンズシン・・・・
「貴様、おめおめと!!!」
カキン、ドッゴン、「グホッ!」
異様な音に振り返る僕の目の前で、バンミが男を押さえつけていて・・・
バフマが僕の前に背を向けて立ち・・・
ワラワラと、みんなの従者も、主を保護し、数名はバンミの元へ。
いったい何事?
床に転がるのは、どこかで見た、無骨なイガイガのついたメイスだ。
ていうことは・・・・
バンミに押さえつけられ床に転がっている男は、僕に対して罵倒し続けているガイガムだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます